天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

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ミネルヴァの梟、探る

第18話

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「これが今回の報告書になります」

 パソコンで打った文章を室長のパソコンに転送し、あーやはいつも通りの淡々とした声で言った。

 まぁいつも通りと言っても、まだ出会って二時間ほどしか経ってないが。

「状況不明により、女子バスケットボール部の処分を保留。うん、分かったよ。これを学校側に提出しておこう」

 内容を確認した室長は何も質問をすることなく、報告書を承諾する。それにあーやが怪訝な顔をするのも仕方が無いことだろう。

 なにせこの報告書は「調べたけど何も分かりませんでしたごめんなさい」と、力不足を明らかに露呈させているに他ならないのだ。

「部員の方々には、今日は帰宅してもらい、後日正式な連絡があると伝えてあります」

「それで大丈夫だよ。ご苦労様」

 にこやかな笑顔で苦労を労う室長だが、その笑みが黒いと思えてしまうのは錯覚なのか。

「これでおしまいで良いのか? そろそろ帰らないと飯の準備に間に合わないんだが」

 時刻は六時を過ぎた辺りだ。朱乃の言葉に従う訳ではないが、俺以外に料理を作らせるわけには行かないし、先ほどからあーやの突き刺さるようなプレッシャーでものすごく居心地が悪い。それにほかにも急がないといけない用事もある。

「初日お疲れ様、また明日も頼むよ」

 さっさとクビにしてくれて良いんだぞ? と内心思いながら軽く手を上げて応え、俺は分室の部屋を後にした。
  †
「それでは私も失礼します」

 流斗が部屋を出て行ってきっちり一分が経過した時、絢音が口を開いた。いつも通り、抑揚を抑えた鋭い声音だ。

「がっかりしたかな?」

 椅子から立ち上がり、帰ろうとしたところで影宮が声をかける。

「何の話でしょうか?」

「何の話も何も、君から見た結崎君だよ。あまり歓迎できないんじゃないかな?」

 影宮の言葉に絢音は何も言わなかった。特に反論する理由もないからだ。

 絢音は予定通り、流斗が分室の一員として相応しいかを観察していた。そしてその結果、特出したものがない無い平凡な能力であると判断した。

 部室を探っていた時には淡い期待を寄せていたが、その後絢音に状況を確認したことや、一方的に絢音の意見に反論し、自分の意見を述べなかったことに対する評価は低い。

 反論するだけなら誰でもできる。だが今この分室で欲しいのは、鋭い視点と斬新な発想で事態を変える事が出来る人材なのだ。

 絢音は流斗に期待していた。いや「流斗に」というのは御幣だ。絢音が期待していたのは、流斗に流れる血筋だった。あの人の息子という存在に、期待せざるを得なかったのだ。

 自分が勝手に期待したのは分かっている。だが絢音にはそれが我慢ならなかった。

「……部長は何故彼の肩を持つのですか?」

 絢音の知る限り、影宮は希望的観測を行わない現実主義者だ。

 温厚そうに見えて実は冷徹であり、価値がないと判断すれば簡単に切り捨ててしまう無情さを持っている。

 しかし先ほどの受け答えといい、その態度はまるで未知数であるはずの琉斗の肩を持っているように感じてならない。

「ミネルヴァの梟は夜に飛ぶ」

「それは……ヘーゲルの法哲学ですか?」

「そう。知恵の鳥である梟は、その日が始まったばかりの朝は行動しない。その日のことが全て終わった夜、ようやく重い腰をあげて真実を明らかにする。もし、君がまだ彼に何かを期待する余地があるのならば、女子バスケットボール部の部室に行ってみると良い。『良いもの』が見れるはずだ」

 絢音には影宮の言葉が理解できなかった。言いたい事、部室に何があるのか想像は出来る。だが今回の件は既に学校側に保留と提出しており、今更流斗がこの件にどう関わっていようが、絢音の中の評価は変わらない。


 だが絢音の中には、まだ流斗に期待している思いが無いわけではなかった。
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