34 / 115
ミネルヴァの梟、遊ぶ
第34話
しおりを挟む
周防との勝負の後、早めに帰宅していいと言われた俺は、遅れて帰ってきた志保を連れて、近所のスーパーへと買い物に行った。「なんでも作ってやる」という発言が、「なんでも好きなものを買ってやる」に歪曲されており、リクエストであるロールキャベツのキャベツを選別している間に、志保はお菓子や飲み物を選びに意気揚々と旅立ってしまった。
むむ、流石俺一押しのスーパー「サンヤ」だ。キャベツも良いものを揃えている。これは目利きの腕が試される場面だ。
「何を先ほどから唸っているのですか?」
「あん? っと、あーやか」
決勝戦に上がった二つの猛者を見比べていると、いつの間にか隣にあーやが立っていた。
「そっちも買い物か?」
「そうですが、何故先ほどから十分弱もキャベツコーナーを陣取っているのですか?」
「今ちょうど十八個の中からの勝者を決める、決勝戦を行うところだ。うし、こいつだな。あ、もしキャベツ買うならこっちにしろ。二位だが、他よりは格段に良質だ」
「はぁありがとうございます。結崎君は料理が出来るのですか?」
「出来なさそうに見えるか?」
「失礼ですが、食べられれば何でも良い、というタイプだと思っていました」
「まぁ食べる側なら確かにそのスタンスだが、作るとなると変わってくるな」
料理は良い訓練になる。食材や調理器具一つにしても、良いものを選ぶ際にはそのための目と知識が必要であり、味付けや盛り付けなどに関しても、最初に思い描いたビジョンをいかに早く正確にこなせるかどうかには、状況に見合った計画性と妥当性が求められる。
その過程が、現場の下見と獲物の視察、所要時間に侵入逃走経路の確認、そして実行とリンクしている。中でも食材の選びには細心の注意を払い、見る目を日々鍛えることにしている。
出された料理がどれだけまずかろうが、何も文句は無い。喰えるだけ幸せであることを俺は知っている。だが作ると言う作業に関しては、俺なりに拘る部分がある。
「なるほど、あなたは私の予想をことごとく上回るのですね。先ほどの周防君との勝負においても、私が早とちりしたばかりに」
「別にあれは悪い訳じゃないだろ。マッキングを見抜けただけでも、すげえと思うぞ」
問題なのは指摘の仕方と、状況の読みどころである。あーやは発想は良いのだが、どうにも詰めが甘い印象がある。
「いえ、これから私も結崎君と協力していくわけであり、そこで私が足を引っ張る訳には行きません。気を引き締めなければ」
何故そこまで思いつめるのか。だがこの二日間で俺があーやよりも高い水準で思考を行い、結果を残しているのは客観的な事実である。とはいえ、元々俺とあーやでは潜ってきた修羅場の数と質が圧倒的に違い、差がつくのは当然なのだ。
だがそれを知らないあーやはバカ正直な性格で、自分が劣っていると感じてしまったのだろう。まったく難儀な性格をしている。
「別に足を引っ張ったわけじゃないだろう。それに、俺もまだ学校に入って日が浅い。ただでさえややこしい学校だし、知らないことが多い。その意味で俺はあんたの足を引っ張ることが多々あるだろう。あんたがもし俺に負い目を感じているならば、それでチャラだ。俺とあんたがまったく同じ仕事をする必要は無い。この場合、お互いがお互いを補っていった方が、効率的だと俺は思うがな。協力ってそういうもんだろ?」
強固な金庫を破る爆薬も、警備の無線のジャミングも、流石に俺個人では用意できなかったので、専門の部署に委託したこともある。何か物事を行う時は、ギブアンドテイクが基本。なんでも一人でこなそうとするのは、一流を装った二流のやることだ。一流は余計な労力をかけず、力の入れ所を見誤らない。
「お互いが足りない部分を補っていく。どうやら、私は視野が狭かったようですね」
「反省ができたんだから上出来だろ」
より大きく人を成長させるのは成功ではなく失敗だ。成功はその場で人を満足させるが、失敗はそこから何がいけなかったのかという反省と、今度は別の方法を試そうという試行錯誤を行うことで、新たな発見をもたらす。失敗にめげないことが成長の条件だが、あーやはその点に関しては問題ないだろう。
『半人前の時に多くの失敗を経験しろ。その経験が一人前になった時に必ず生きる』
とは親父からの教えである。
むむ、流石俺一押しのスーパー「サンヤ」だ。キャベツも良いものを揃えている。これは目利きの腕が試される場面だ。
「何を先ほどから唸っているのですか?」
「あん? っと、あーやか」
決勝戦に上がった二つの猛者を見比べていると、いつの間にか隣にあーやが立っていた。
「そっちも買い物か?」
「そうですが、何故先ほどから十分弱もキャベツコーナーを陣取っているのですか?」
「今ちょうど十八個の中からの勝者を決める、決勝戦を行うところだ。うし、こいつだな。あ、もしキャベツ買うならこっちにしろ。二位だが、他よりは格段に良質だ」
「はぁありがとうございます。結崎君は料理が出来るのですか?」
「出来なさそうに見えるか?」
「失礼ですが、食べられれば何でも良い、というタイプだと思っていました」
「まぁ食べる側なら確かにそのスタンスだが、作るとなると変わってくるな」
料理は良い訓練になる。食材や調理器具一つにしても、良いものを選ぶ際にはそのための目と知識が必要であり、味付けや盛り付けなどに関しても、最初に思い描いたビジョンをいかに早く正確にこなせるかどうかには、状況に見合った計画性と妥当性が求められる。
その過程が、現場の下見と獲物の視察、所要時間に侵入逃走経路の確認、そして実行とリンクしている。中でも食材の選びには細心の注意を払い、見る目を日々鍛えることにしている。
出された料理がどれだけまずかろうが、何も文句は無い。喰えるだけ幸せであることを俺は知っている。だが作ると言う作業に関しては、俺なりに拘る部分がある。
「なるほど、あなたは私の予想をことごとく上回るのですね。先ほどの周防君との勝負においても、私が早とちりしたばかりに」
「別にあれは悪い訳じゃないだろ。マッキングを見抜けただけでも、すげえと思うぞ」
問題なのは指摘の仕方と、状況の読みどころである。あーやは発想は良いのだが、どうにも詰めが甘い印象がある。
「いえ、これから私も結崎君と協力していくわけであり、そこで私が足を引っ張る訳には行きません。気を引き締めなければ」
何故そこまで思いつめるのか。だがこの二日間で俺があーやよりも高い水準で思考を行い、結果を残しているのは客観的な事実である。とはいえ、元々俺とあーやでは潜ってきた修羅場の数と質が圧倒的に違い、差がつくのは当然なのだ。
だがそれを知らないあーやはバカ正直な性格で、自分が劣っていると感じてしまったのだろう。まったく難儀な性格をしている。
「別に足を引っ張ったわけじゃないだろう。それに、俺もまだ学校に入って日が浅い。ただでさえややこしい学校だし、知らないことが多い。その意味で俺はあんたの足を引っ張ることが多々あるだろう。あんたがもし俺に負い目を感じているならば、それでチャラだ。俺とあんたがまったく同じ仕事をする必要は無い。この場合、お互いがお互いを補っていった方が、効率的だと俺は思うがな。協力ってそういうもんだろ?」
強固な金庫を破る爆薬も、警備の無線のジャミングも、流石に俺個人では用意できなかったので、専門の部署に委託したこともある。何か物事を行う時は、ギブアンドテイクが基本。なんでも一人でこなそうとするのは、一流を装った二流のやることだ。一流は余計な労力をかけず、力の入れ所を見誤らない。
「お互いが足りない部分を補っていく。どうやら、私は視野が狭かったようですね」
「反省ができたんだから上出来だろ」
より大きく人を成長させるのは成功ではなく失敗だ。成功はその場で人を満足させるが、失敗はそこから何がいけなかったのかという反省と、今度は別の方法を試そうという試行錯誤を行うことで、新たな発見をもたらす。失敗にめげないことが成長の条件だが、あーやはその点に関しては問題ないだろう。
『半人前の時に多くの失敗を経験しろ。その経験が一人前になった時に必ず生きる』
とは親父からの教えである。
0
あなたにおすすめの小説
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる