天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

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ミネルヴァの梟、遊ぶ

第34話

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 周防との勝負の後、早めに帰宅していいと言われた俺は、遅れて帰ってきた志保を連れて、近所のスーパーへと買い物に行った。「なんでも作ってやる」という発言が、「なんでも好きなものを買ってやる」に歪曲されており、リクエストであるロールキャベツのキャベツを選別している間に、志保はお菓子や飲み物を選びに意気揚々と旅立ってしまった。

 むむ、流石俺一押しのスーパー「サンヤ」だ。キャベツも良いものを揃えている。これは目利きの腕が試される場面だ。

「何を先ほどから唸っているのですか?」

「あん? っと、あーやか」

 決勝戦に上がった二つの猛者を見比べていると、いつの間にか隣にあーやが立っていた。

「そっちも買い物か?」

「そうですが、何故先ほどから十分弱もキャベツコーナーを陣取っているのですか?」

「今ちょうど十八個の中からの勝者を決める、決勝戦を行うところだ。うし、こいつだな。あ、もしキャベツ買うならこっちにしろ。二位だが、他よりは格段に良質だ」

「はぁありがとうございます。結崎君は料理が出来るのですか?」

「出来なさそうに見えるか?」

「失礼ですが、食べられれば何でも良い、というタイプだと思っていました」

「まぁ食べる側なら確かにそのスタンスだが、作るとなると変わってくるな」

 料理は良い訓練になる。食材や調理器具一つにしても、良いものを選ぶ際にはそのための目と知識が必要であり、味付けや盛り付けなどに関しても、最初に思い描いたビジョンをいかに早く正確にこなせるかどうかには、状況に見合った計画性と妥当性が求められる。

 その過程が、現場の下見と獲物の視察、所要時間に侵入逃走経路の確認、そして実行とリンクしている。中でも食材の選びには細心の注意を払い、見る目を日々鍛えることにしている。

 出された料理がどれだけまずかろうが、何も文句は無い。喰えるだけ幸せであることを俺は知っている。だが作ると言う作業に関しては、俺なりに拘る部分がある。

「なるほど、あなたは私の予想をことごとく上回るのですね。先ほどの周防君との勝負においても、私が早とちりしたばかりに」

「別にあれは悪い訳じゃないだろ。マッキングを見抜けただけでも、すげえと思うぞ」

 問題なのは指摘の仕方と、状況の読みどころである。あーやは発想は良いのだが、どうにも詰めが甘い印象がある。

「いえ、これから私も結崎君と協力していくわけであり、そこで私が足を引っ張る訳には行きません。気を引き締めなければ」

 何故そこまで思いつめるのか。だがこの二日間で俺があーやよりも高い水準で思考を行い、結果を残しているのは客観的な事実である。とはいえ、元々俺とあーやでは潜ってきた修羅場の数と質が圧倒的に違い、差がつくのは当然なのだ。

 だがそれを知らないあーやはバカ正直な性格で、自分が劣っていると感じてしまったのだろう。まったく難儀な性格をしている。

「別に足を引っ張ったわけじゃないだろう。それに、俺もまだ学校に入って日が浅い。ただでさえややこしい学校だし、知らないことが多い。その意味で俺はあんたの足を引っ張ることが多々あるだろう。あんたがもし俺に負い目を感じているならば、それでチャラだ。俺とあんたがまったく同じ仕事をする必要は無い。この場合、お互いがお互いを補っていった方が、効率的だと俺は思うがな。協力ってそういうもんだろ?」

 強固な金庫を破る爆薬も、警備の無線のジャミングも、流石に俺個人では用意できなかったので、専門の部署に委託したこともある。何か物事を行う時は、ギブアンドテイクが基本。なんでも一人でこなそうとするのは、一流を装った二流のやることだ。一流は余計な労力をかけず、力の入れ所を見誤らない。

「お互いが足りない部分を補っていく。どうやら、私は視野が狭かったようですね」

「反省ができたんだから上出来だろ」

 より大きく人を成長させるのは成功ではなく失敗だ。成功はその場で人を満足させるが、失敗はそこから何がいけなかったのかという反省と、今度は別の方法を試そうという試行錯誤を行うことで、新たな発見をもたらす。失敗にめげないことが成長の条件だが、あーやはその点に関しては問題ないだろう。

『半人前の時に多くの失敗を経験しろ。その経験が一人前になった時に必ず生きる』

とは親父からの教えである。
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