天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

文字の大きさ
36 / 115
ミネルヴァの梟、助ける

第36話

しおりを挟む
 人間とは不自由の中に自由を求める生き物だ。

 例えばいつも忙しそうにしている人間が、急に数日間の休暇を貰ったとする。するとその休日でその人間が行う事――胸を晴れる趣味が無い限り――は大方が何をして過ごせばいいか決められず、寝て過ごすことになるだろう。

 それが身体の休息になっているのだから、休日の過ごし方という意味では正解であるかもしれない。だが、そのように過ごした日の夜に「あ、俺今日何もしてねえや」と後悔した経験が誰にでもあるはずだ。

 自由という解放を望みながらも、いざ解放されたとなると路頭に迷う。いつもと違う、何か有益な休日を過ごそうと意気込むが、空回りに終わる事が多いのが現状だ。

 だがそれでも再び仕事という荒波に飲まれた途端、人間は直ぐに自由を求めることになる。寝ているだけの日でもいいから、と忙しい日々から解放されることを願う。

 忙しい時、手が届かないからこそ、自由という単語は甘い蜜の誘惑を持っているのだ。

「……つまり何が言いたいんですか?」

「俺に休みをくれ。プリーズギブミー休み」

 素直に答えを述べると、問い手であるあーやは呆れたようにため息をついた。

「休みなら十五分前に取ったはずですが?」

「それは休憩であって、俺が欲しいのは休息日」

 先週起こったバスケ部の一件から早一週間。そこから強制的に分室の一員に任命された俺は、文字通り馬車馬の如く業務をこなす日々を送っていた。

 蛍光灯が切れたと言われれば新品を持って行き、エアコンの調子が悪いと言われれば解体して汚れを除去し、部活間で起きた揉め事の仲裁と、その時に壊れた洗濯機の処理。果ては人数がいないからと、週末の子供ボランティアにも借り出される始末(意味不明)。

「あえて言おう、何だこの雑用は。パシリかって話だ」

「とか言いながら、蛍光灯の設置と業者に任せれば良いはずのエアコンのメンテナンスを、自らが進んで行ったのはあなたですよ?」

「壊れた機械って……無性に解体したくなるよな」

「君は子供ですか」

「ちゃんと知識はあるんだからいいだろ」

 清掃員と言うのはどこにでも入り込むことができるため、その技術は会得している。大概の機器なら扱ったこともあるし、知識もある。というか正直蛍光灯が切れたのならこっちじゃなくて職員室に行けばいいし、エアコンに関しても同様じゃないのか。余計な手間を取らせやがって。

 仲裁の件も、第一野球部と第二野球部のグラウンドをめぐる小競り合いで、何でそれをランドリールームでやったのかというはな……いや、そもそも第一と第二ってなんだよ。野球部なら野球部で統一すりゃいいじゃねえか。何で分けたし。

 無駄に人数がいるから、無駄に問題ごとが多く発生する。それを数少ない分室が迅速に処理してんだ。そりゃ忙しい訳だよ。

「休日が無い代わりに、いつも君は五時半に帰宅しているでしょう? 私たちはその後も残って業務を行っています。これでおあいこです」

 こう会話している間でも、俺とあーやは学生から出た依頼の書類整理をしている。

「確かにそうだ。俺が作らないとあの家の夕飯が地球外物質になっちまう。志保も料理くらい出来てくれよ」

 先週の一件から、とうとう志保に俺がいない時に勝手に家事をしないという誓約書を書かせた。善意からの行動だと分かっているが、出来ないのに勝手にやられては無駄に手間がかかる。

「志保さんは料理をしないのですか?」

「実はあいつは錬金術師でな。普通の材料からありえない味の料理を生み出せんだよ」

『美味しい材料使ってりゃ、美味しくねえ訳がねえ』とは親父の言葉だか、あんたの娘がそれを軽々と覆してきたんですがコノヤロウ。

「神北先生は?」

「あれが料理できると思うか?」

「君が出来るのですから。志織さんとは別々に生活しているのでしたか?」

「職場にも近い寮の方が何かと便利なんだと。まぁたまには顔出してくるけどな」

 その度に俺の私生活を逐一聞いてくるため、本気で面倒なんだが。

「仕方ありません。半年前のグラウクス逮捕の立役者であり、今が一番多忙なはずです。父も志織さんは女性初の警視総監になるかもしれないと言っていました」

 あれが警視総監になったら、きっと俺の胃に穴が開くだろう。

 グラウクス逮捕。半年前に世間を賑わせた出来事だ。オリュンポスの幹部であり、世界中の大富豪、美術館から恐れられてきたグラウクスを、日本の警察が見事に逮捕した。

 当然の如く、その立役者である警官と逮捕されたグラウクスが実の親子だったなんて話は、あることない事を無責任に書き出す週刊誌でさえ、書かれる事は無かった。

「やっぱりあんな風になりたいのか?」

「はい。志織さんと並ぶとまでは言いませんが、グラウクスなどの犯罪を決して許さず、その抑制に少しでも力になりたいと思っています」

「……そうか、頑張ってくれ」

 なんと声をかけて良いのか、一瞬分からなかった。

 今まで潜入先でグラウクスを散々貶す輩には会ってきた。その時はそのグラウクスは目の前にいるぞ、と内心ほくそ笑んでいたが、今の俺は笑えていないだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...