天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

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ミネルヴァの梟、堕ちる

第65話

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《新学年になり、三ヶ月が発とうとしています。三年生の中は受験に向けて準備をし、二年生は部活動の中心になり、一年生はようやくこの学園に馴染んできたことでしょう》

 マイクを通した生徒会長の声が、五千を越える人数を収容した大講堂に響き渡る。大講堂は学年ごとに、一階席・二階席・三階席と分かれており、各学年千五百を越す人数が壇上の生徒会長に視線を向けている。

《――であり、今度とも我が校の生徒には誇りを持って生活してもらいたいと思います》

 一礼し、生徒会長が壇上を下りて行った。

《続きまして、学芸特殊分室室長、影宮識也》

 アナウンスと共に、壇上の袖から室長が姿を現す。五千人、それもこれから敵になるかもしれない軍勢の前でも、一切動じる素振りはない。聴衆も分かっているのか、室長の一挙一動を固唾を呑んで見つめている。マイクの前で一礼し、室長が第一声を告げる。

その時。

《結崎流斗の噂は本当ですか?》

 静まり返った大講堂に一つの声が響き渡った。周防成美がいつの間にかに壇上に立ち、ご丁寧にマイクを持って室長と顔を見合わせていた。

《結崎流斗に関して学園中で広まっている噂を、影宮室長は把握していますか?》

 まるで学園を代表して聞いている、そんな風に捉えられる堂々とした聞き方に、誰も口を挟むことが出来なかった。

《そのことは、私の耳にも入っています。あれは所詮噂です。何の信憑性も無い》

 あまりに突然のことにも慌てず、室長は冷静に対処した。ここで無理矢理あしらうことが、あとで自分の首を絞めてしまうことに繋がるのを良く分かっている。

《それは本人がそう言ったのですか? それとも室長がそう信じているだけですか?》

《彼もそう言いましたし、私も彼を信じています》

《では、今この場でその彼に語ってはいただけ無いでしょうか? 広まっている噂は事実無根であると》

《これ以上は個人の尊厳に繋がります。了承でき――》

《皆さんも、そうは思いませんか!?》

 室長の言葉を遮り、成美さんは聴衆へと呼びかけた。やはり、この五千人を味方につけるつもりのようだ。生徒の中でざわざわと、騒ぎが始まる。始めは隣同士での会話、それが数人の集団によるものへと、次第に規模を膨らませていく。

 人間の知的好奇心。

 それは個人では小さなものかもしれないが、集団になれば恐ろしい狂気へと変貌する。

「結崎を出せ!」

 そして始まりを告げる第一声が、とうとう投じられた。


「本当なら結崎を出せるだろ!」
「あいつの口から聞かせろよ!」
「影宮に話させないで本人が言えよ!」
「さっさと出て来いよ結崎!」
「怖気づいたか!?」


 五千人という仲間意識が自由にさせるのか、まるで匿名掲示板のように好き勝手な言葉が飛び交う。暴動、その言葉がしっくり来る。

《皆さん落ち着いてください!》

「影宮! お前じゃなくて結崎を出せよ!」

 冷静を促す室長の言葉も、膨れ上がった群衆の訴えの前には届くことはなかった。
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