天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

文字の大きさ
70 / 115
ミネルヴァの梟、堕ちる

第70話

しおりを挟む
「憎きギルドと思って話したくない? そんな事言っても、私は元々こっち側なんだよ」

「そうとは知らずに付き合っていた自分が、滑稽に思えただけです」

「酷い言い草だね。私としては、まだ君塚さんを友達だと思っているんだけどさ」

「この期に及んで何を――」

「そういうところが潔癖すぎるんだよ、君塚さんは。世の中、身が真っ白な人間なんてそうそういない。もっと言えば、基から黒に染まっている人間だってたくさんいる。その印象だけで区別し、付き合い方をコロコロ変えるなんて私には無理だね。疲れるよ」

 柔軟性が足りない。それはここ最近にも指摘されたことがあった。

「人類みな善、理想ではあるけどそんな簡単じゃない。他人なんて、それこそ親であっても、今まで何をしてきて腹の底では何を考えているかなんて分からないでしょ?」

 父親と志織。どちらも尊敬する人物でありながら、グラウクスである流斗を学校に野放しにした事実は、絢音の中での評価に小さくない揺らぎが生じている。何か意図があってのことなのか。もしそうだとしても、今の絢音にはそれが何か掴みきれていない。

「それが自分の思ったとおりの人じゃなかったーって言って、すぐ嫌いになるのは大人気ないと思わない?」

「それでは、彼を含めた全てを許容すればよかったということですか?」

 成美が言いたいのは、自分はギルドの人間ではあるが、かつて親しくしていた友人、周防成美でもある。そして絢音が分室の一員でなくなった今、たとえギルドの人間だとしても、そこには目を瞑って仲良くしよう、ということだ。

 言いたい事は分からなくもない。当然生きていれば正しいことばかりではないし、政治家や警察、教師までもが犯罪に手を染めていることもありえる世の中だ。そればかりか、正義感が強すぎる事は返って反感を買うことすらもある。

 だがその全てを認めることも、できるはずが無い。

「あぁいや……そうだね。許せないものは存在するよ。でも今の君塚さんは周り全てを敵と思っていて、見ているこっちも息が詰まっちゃう。要は許容の範囲、世間話くらいはもっと気楽にしようってことだよ」

 確かに今の絢音は息が詰まりそうな重圧に襲われている。自分が無意識に作っている警戒、それが自分を追い詰めているのは理解している。

「では、あなたがギルドを抜けるというなら考えておきます」

 だからと言って、鵜呑みにするほど納得した訳ではない。

「それは絶対に無理。私がギルドを、遼一様を裏切るなんて絶対にありえない」

「なら、そういうことです」

 その言葉だけで十分だった。

 それから成美は一言も会話をしようとしなかった。ギルドを、遼一を話題に出されそれこそ冗談の許容を超えたのか、二人は無言のままで武道館にたどり着いた。

 通常の学校が保有する体育館と同等の広さを持つ武道館では、部員が二百名を越す柔道部員が稽古に励んでいる。悪評で名高いが、団体と個人で既にインターハイを決めている強豪だけに、その雰囲気は真剣そのものだった。

 目当ての人物は直ぐに見つかった。柔道部部長、インターハイ個人三連覇がかかっている超人、檜山主将は胴着姿で正面奥に仁王立ちしていた。身長は百七十前半と平均的だが、厚い一枚の壁を思わせる巌のような体格は、五十メートルほどの距離があっても一際その存在感を際立たせていた。

 二人が制服姿だったためか、檜山も直ぐに気付き近づいてきた。

「待っていたぞ周防妹。それと……君塚か」

 話し合いには成美だけだと思っていたのか、檜山は少し驚いた顔をした。

「お久しぶりです檜山部長」

「何の用だ、という前置きはわざとらしいか。お前はもう分室の人間じゃなくなったんだからな」

「そちらは……随分と御活躍されているそうで何よりです」

「いやいや、お前ほどじゃないさ」

 インターハイ出場とかけた皮肉を、巧みに皮肉で返された。

 絢音が分室を抜けた事は、早い段階で一般生徒の間に広まった。時期的にも流斗の噂と重なっているため、「仲たがいをした絢音が腹いせに噂を流した」と推測する者も多い。そこから派生して、「君塚絢音はギルドに加入した」という噂も出回っているほどだ。

「ちょうど休憩を挟もうと思ったところだ。場所は奥の倉庫に移そう」

 そこで檜山はあからさまに口の端を吊り上げ、

「あまり人に聞かせるような話題でもないからな」

 面白そうに笑みを零した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...