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ミネルヴァの梟、飛ぶ
第84話
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「成美さんから作戦の準備が整った事を知らされた日の夜、俺はあいつに会いに行った」
「会いにって、相手は日本の重や……そうだったね。君という人間を忘れていたよ」
「これでもグラウクスと呼ばれていた人間だし、元同僚だからな」
日本の大臣の居場所、ということでそれなりにガードは固かったが、守る事を目的とした銀行の金庫や無駄に金を持っている大富豪の家よりは、何倍も忍び込みやすかった。
「奴の執務室に潜入し、これから行われることを黙認するのを条件に、ある情報を渡した」
「ある情報?」
「オリュンポスって組織は歴史が古く、創設の経緯も馬鹿みたいに複雑だ。だから組織はその創設秘話を十三分割し、それぞれの部署の長と門外顧問であるグラウクスに残した。その中で俺の知っている秘密をあいつに教え……てやろうとしたんだが」
「したんだが?」
「あいつはそれを拒否しやがった。流石に気づいたんだろう。わざわざ十三に分割された秘密を、一つ余分に知ってしまう危険性をな」
創設秘話は組織のパワーバランスを保っている側面がある。つまり俺からグラウクスの分を聞いてしまえば、それだけで均衡が崩れてしまうのだ。
全ての創設秘話を集めれば、完全に世界の頂点に立つ事が出来る。そう言われている反面、全てを揃えるのはパンドラの箱を開くものだ、という話もある。何が出てくるか分からない。だからこそ、触らないに越したことはない。
「じゃあ君はどうやってあれを納得させたんだ? 彼に慈悲なんて言葉は――」
「室長、ここでさっき作った貸しを清算させてもらうぜ」
ソファーから腰を上げ、去り際に室長の肩を叩いた。
「あのおっさんと、今度一緒に晩飯を行ってくれ」
「! あぁもう……そういうことか」
すべてに合点がいったのか、室長は頭を抱えてうな垂れた。
俺の条件を呑まなかった真一は、逆に俺に条件を突きつけてきた。
『識也と、話す場を設けてくれ』
なんでも奴は支倉遼一ではなく、影宮識也に後を継がせたいらしい。そこで色々とアプローチをしているのだが、室長はその全てを拒否されているのだとか。ギルドは確かに奴の一部だ。しかし自分の後継者と天秤にかければ、後者に傾く事は容易に想像できる。
犠牲になったのは俺ではなく、室長だったという訳だ。
実を言うと、室長にどうやってこの条件を呑ませるか、それが今回の計画で一番悩ましかったところでもある。
「分かった、呑むよ。貸しを作ったのは僕だ。何より、僕が行かないと周防兄妹やその他もろもろが面倒になるんなら、喜んで人柱になろう」
諦めがついたのか、やっとのことで勢いをつけ、室長は立ち上がった。別に後を継げと言っているわけではない。会合の席で奴に説得されてしまうか、それとも拒否する事が出来るか。それは室長の度量次第なのだ。
さて、これで話は終わり。地獄に戻ろうじゃないか。
「我ら! 栄凌学園探偵部!」
事務室――地獄――への扉を開けた瞬間、やけにリズム感溢れる言葉が聞こえてきた。
「今宵も再び分室へと参上!」
「さぁ始めようではないか、我らの宴を!」
色々突っ込みどころがあったが、まだ宵の時間ではない事は確かだ。
見ると数人の男子生徒が入り口に集まり、その対応にあーやが追われている。
「会いにって、相手は日本の重や……そうだったね。君という人間を忘れていたよ」
「これでもグラウクスと呼ばれていた人間だし、元同僚だからな」
日本の大臣の居場所、ということでそれなりにガードは固かったが、守る事を目的とした銀行の金庫や無駄に金を持っている大富豪の家よりは、何倍も忍び込みやすかった。
「奴の執務室に潜入し、これから行われることを黙認するのを条件に、ある情報を渡した」
「ある情報?」
「オリュンポスって組織は歴史が古く、創設の経緯も馬鹿みたいに複雑だ。だから組織はその創設秘話を十三分割し、それぞれの部署の長と門外顧問であるグラウクスに残した。その中で俺の知っている秘密をあいつに教え……てやろうとしたんだが」
「したんだが?」
「あいつはそれを拒否しやがった。流石に気づいたんだろう。わざわざ十三に分割された秘密を、一つ余分に知ってしまう危険性をな」
創設秘話は組織のパワーバランスを保っている側面がある。つまり俺からグラウクスの分を聞いてしまえば、それだけで均衡が崩れてしまうのだ。
全ての創設秘話を集めれば、完全に世界の頂点に立つ事が出来る。そう言われている反面、全てを揃えるのはパンドラの箱を開くものだ、という話もある。何が出てくるか分からない。だからこそ、触らないに越したことはない。
「じゃあ君はどうやってあれを納得させたんだ? 彼に慈悲なんて言葉は――」
「室長、ここでさっき作った貸しを清算させてもらうぜ」
ソファーから腰を上げ、去り際に室長の肩を叩いた。
「あのおっさんと、今度一緒に晩飯を行ってくれ」
「! あぁもう……そういうことか」
すべてに合点がいったのか、室長は頭を抱えてうな垂れた。
俺の条件を呑まなかった真一は、逆に俺に条件を突きつけてきた。
『識也と、話す場を設けてくれ』
なんでも奴は支倉遼一ではなく、影宮識也に後を継がせたいらしい。そこで色々とアプローチをしているのだが、室長はその全てを拒否されているのだとか。ギルドは確かに奴の一部だ。しかし自分の後継者と天秤にかければ、後者に傾く事は容易に想像できる。
犠牲になったのは俺ではなく、室長だったという訳だ。
実を言うと、室長にどうやってこの条件を呑ませるか、それが今回の計画で一番悩ましかったところでもある。
「分かった、呑むよ。貸しを作ったのは僕だ。何より、僕が行かないと周防兄妹やその他もろもろが面倒になるんなら、喜んで人柱になろう」
諦めがついたのか、やっとのことで勢いをつけ、室長は立ち上がった。別に後を継げと言っているわけではない。会合の席で奴に説得されてしまうか、それとも拒否する事が出来るか。それは室長の度量次第なのだ。
さて、これで話は終わり。地獄に戻ろうじゃないか。
「我ら! 栄凌学園探偵部!」
事務室――地獄――への扉を開けた瞬間、やけにリズム感溢れる言葉が聞こえてきた。
「今宵も再び分室へと参上!」
「さぁ始めようではないか、我らの宴を!」
色々突っ込みどころがあったが、まだ宵の時間ではない事は確かだ。
見ると数人の男子生徒が入り口に集まり、その対応にあーやが追われている。
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