天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

文字の大きさ
112 / 115
アルテミスの弾丸

第11話

しおりを挟む
 
我が栄凌高校は全校生徒五千人を超える超マンモス校である。日本全国から集まった学生を、金に物をいわせた最新鋭の設備がお出迎えしている訳だ。そんなわけで栄凌学園はその敷地だけでもはや一つの町として機能が充実している。寮区画には購買部と言う名の巨大ショッピングモールがあり、校内を出ないでも一日中遊べる施設が整っている。

 当然それらを全て説明するには時間があまりにも足りず、そもそも俺すら全てを把握している訳では無い。よって今日のところは校舎の案内と校内地図を使った簡易的な説明だけを行い、他の施設については明日行うことで決着した。

「あれ、結崎君?」

 分室を出たところ、丁度見知った顔と遭遇した。

「あぁ周防妹か」

「間違ってはいないけど、一応私先輩なんだからね!」

 遭遇した小柄な女子生徒、周防成美は不機嫌そうに頬を膨らませた。周防雅紀の双子の妹である。新聞部に所属し、情報通である点から分室と深い関わりを持っている。

 そして先日のギルド崩壊の立役者でもある。

「これからどこかに行く感じ? それと後ろの外人さんは?」

「九月からの留学生らしい。今からその案内だ」

「あぁ聞いたよ聞いた。なんでもロシアから来たらしいよね。確かにうちってロシアの人受け入れてなかったから、それでロシア語が堪能な結崎君にお鉢が回ってきたのか」

「能力が高いのも考え物だな」

「それを自分で言っちゃうのが結崎君らしいというか何と言うのか。あ、ごめんなさい。私、周防成美って言います」

 成美さんは慌ててルナに対して手を差し伸べた。するとルナは先ほどまでのハイテンションが嘘のように、握り返して挨拶せずただジッと成美さんの顔を見つめていた。

「あれ、私なんか間違った?」

 いや、こいつはそうじゃない。

「周防……成美……」

 うわ言のように名前を復唱したルナは、しかし突然成美さんの手を握り返すどころか、そのまま手を引っ張ってハグをし始めた。

「私はルナ・アルティミーザです! 成美! とても小柄で可愛いです! 妹にしたいくらいです! 私を姉と呼んでください!」

「え!? あ、ちょ、ちょっと待ってどういうこと!?」

 成美さんは突然眼を輝かせたルナに面を食らってしまう。そりゃ突然姉妹宣言されればそうなるのも当然である。

「どうやらこいつは頭のネジが何本かぶっ飛んでるらしい」

「そうなの!?」

「いや、今そう思っただけだ」

 観光に来た外人特有の異様に高いテンションと言えばいいのか、それにしてもこのウキウキ具合は少々頭を疑いたくなってしまう。

「おいそろそろやめてやれ、あんたは初対面で妹を絞め殺す気か?」

 一四〇と少ししかない成美さんに対して、ルナは一七〇近い体格である。それはもはやハグと言うより覆いかぶさっているという表現がしっくり来る。

「おおごめんなさい、私としたことが。小柄な日本人はとてもキュートで皆可愛いですね」

 成美さんを解放したルナは生気が潤ったように満足気な表情を見せた。

「人が気にしているところを好かれるのは何か複雑な気分だよ」

「小柄なのも考え物だな」

 双子の兄の雅紀が一八〇センチ近い身長なのに比べれば、確かにコンプレックスを抱いてしまうのも無理は無いかもしれない。

「成美は流斗の仲間ですか?」

「まぁ敵では無いな」

「おお! じゃあ私の仲間です!」

 何だその理論は。

「なんだろう、この不思議オーラ全開の雰囲気。突込みが全然追いつかないよ」

 ハイテンションで言えば成美さんもそこそこ高い物を持っているが、成美さんがツッコミに偏っているのに対してルナはボケ方向に全部振りしている。相性がいいのかと思いきや、意外にも矛盾のような関係になってしまうのかもしれない。

「分室に何か用だったのか?」

「いや、やっぱりまた今度にするよ。ちょっと今日は疲れたかな」

「成美、また今度ね!」

 完全に生気を吸われたように肩を落としながら去っていく成美さんを、ルナは満面の笑みで手を振って見送った。



 順調に校舎内の案内が終了し、俺たちはショッピングモールの外れにあるカフェテリアで一息ついていた。夏休みの夕方ということもあり、カフェテリアを利用する生徒はまばらだった。

 俺たちは店内ではなくテラスの方に回り、端の席に腰掛けた。

「この学校は本当に大きいね。まるで一つの街みたいだ」

「俺も始めはそう思ったよ。なんでこんな馬鹿でかいように作ったんだってな」

「生徒たちも皆優しくていい人ばかりだ。やっぱり日本っていい国だね。平和の象徴だよ」

 第二次大戦以降、日本はあらゆる軍事行動を自粛してきた。日本国憲法第九条、戦争の永久放棄は日本が誇る平和への意思に他ならない。


「****************」


 ルナの話す言語が変わる。日本語でも、そしてロシア語でもない。

 こちらを試すようなそんな回りくどい愚痴に、俺は肩を竦めながら答える。

「なら腹いせに、学園の人間を皆殺しにでもすればいいだろ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...