11 / 15
第一部二章「愛に囚われる」
1話
しおりを挟む
緊張したように利江は小さく息を吐いた。ゲートを見つめ左手を包むように握りしめる。
「……おい、行くぞ」
肩に乗っているプロトに急かされ頷いた。歩を進めると次第に明るくなり、目の前に広がるのはフィールドと観客たち。予選とは言え人が多く利江は体が強張るのを感じた。思わず周りを見渡してしまう。
彼女が立ち位置に立ったのを見て、向かい側に立っている少年は睨みつけるように利江を見た。大会となっただけでここまで迫力が違うのかと驚いていると、プロトが彼女の肩から飛び降りフィールドへ進む。少年の男性型パルドールも同じようにフィールド上に入った。
奥の方から駆けてきた審判の女性が慌ててフィールド脇に立ち、話し始めた。全員の視線が女性に集まる。
「えー……それでは、これより第1回戦を始めます!」
とにかく出来ることをやるだけだと覚悟を決め、利江は前に向き直った。張り詰めた空気は初めてバトルした時のそれに近いものがある。深呼吸をし目を瞑った彼女が再び目を開くと、そこに戸惑いの色はなかった。
その視線に射抜かれた少年は少し怖気るように小さく後退りをする。カウントが始まり、開始を知らせる電子音が鳴り響いた。
男性型パルドールが一瞬出遅れる。その隙を逃さず、間合いを詰めたプロトが回し蹴りを繰り出した。蹴りを躱した時にはプロトが出現させたダガーを振り下ろす。
一気に減った男性型パルドールの体力ゲージに、観客たちがざわめき始めた。
出現させた太刀を男性型パルドールは大きく振り回す。プロトは軽くそれを避けながら間合いを取った。
少年の攻撃は焦りからか単調なものだった。比較的早い大地の攻撃に慣れていた利江は迷うことなく指示を出す。
振り下ろされた太刀を躱したプロトが間合いを詰めた。ダガーが男性型パルドールの脇を貫く。
彼の体力ゲージが0になった。終了の電子音が鳴り響き、それと同時に降り注ぐ歓声。
「……勝者、浅井利江!」
夢中になっていた利江は名前を呼ばれて、はっとする。ふと見上げたモニターには呆然とする彼女の姿と『YOU WINNER』の文字があった。
「勝った……の?」
全身の力が抜けたように脱力し、利江はその場に座り込んだ。フィールドから戻ってきたプロトは彼女を見て呆れたように言う。
「勝者、って言ってただろ。何、呆けた顔してんだよ。へっぽこオーナー」
勝った、という実感がようやく湧いてきた。初めての公式試合で勝利。その事実が利江にとってはたまらなく嬉しい事だった。彼女は思わず溢れそうになる涙をこらえる。
「行くぞ、次の試合が始まる」
プロトが利江の肩に飛び乗ると急かすように言った。彼女は軽く目頭を拭うと立ちあがり、次の会場へと歩を進める。
「……おい、行くぞ」
肩に乗っているプロトに急かされ頷いた。歩を進めると次第に明るくなり、目の前に広がるのはフィールドと観客たち。予選とは言え人が多く利江は体が強張るのを感じた。思わず周りを見渡してしまう。
彼女が立ち位置に立ったのを見て、向かい側に立っている少年は睨みつけるように利江を見た。大会となっただけでここまで迫力が違うのかと驚いていると、プロトが彼女の肩から飛び降りフィールドへ進む。少年の男性型パルドールも同じようにフィールド上に入った。
奥の方から駆けてきた審判の女性が慌ててフィールド脇に立ち、話し始めた。全員の視線が女性に集まる。
「えー……それでは、これより第1回戦を始めます!」
とにかく出来ることをやるだけだと覚悟を決め、利江は前に向き直った。張り詰めた空気は初めてバトルした時のそれに近いものがある。深呼吸をし目を瞑った彼女が再び目を開くと、そこに戸惑いの色はなかった。
その視線に射抜かれた少年は少し怖気るように小さく後退りをする。カウントが始まり、開始を知らせる電子音が鳴り響いた。
男性型パルドールが一瞬出遅れる。その隙を逃さず、間合いを詰めたプロトが回し蹴りを繰り出した。蹴りを躱した時にはプロトが出現させたダガーを振り下ろす。
一気に減った男性型パルドールの体力ゲージに、観客たちがざわめき始めた。
出現させた太刀を男性型パルドールは大きく振り回す。プロトは軽くそれを避けながら間合いを取った。
少年の攻撃は焦りからか単調なものだった。比較的早い大地の攻撃に慣れていた利江は迷うことなく指示を出す。
振り下ろされた太刀を躱したプロトが間合いを詰めた。ダガーが男性型パルドールの脇を貫く。
彼の体力ゲージが0になった。終了の電子音が鳴り響き、それと同時に降り注ぐ歓声。
「……勝者、浅井利江!」
夢中になっていた利江は名前を呼ばれて、はっとする。ふと見上げたモニターには呆然とする彼女の姿と『YOU WINNER』の文字があった。
「勝った……の?」
全身の力が抜けたように脱力し、利江はその場に座り込んだ。フィールドから戻ってきたプロトは彼女を見て呆れたように言う。
「勝者、って言ってただろ。何、呆けた顔してんだよ。へっぽこオーナー」
勝った、という実感がようやく湧いてきた。初めての公式試合で勝利。その事実が利江にとってはたまらなく嬉しい事だった。彼女は思わず溢れそうになる涙をこらえる。
「行くぞ、次の試合が始まる」
プロトが利江の肩に飛び乗ると急かすように言った。彼女は軽く目頭を拭うと立ちあがり、次の会場へと歩を進める。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる