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出会った。
しおりを挟む安全に渡るには数ヶ月以上を要するような広大な森の中。
そんな長い旅をするには不相応なほど軽装備な、フードをかぶった小柄な女が歩いていた。
身につけている衣服の質も高く、歩く様子に気品があるそんな彼女は、気性の荒い魔物や動物、盗賊の格好の餌食であった。
「――へへっ、嬢ちゃんこんな森の中で一人は物騒じゃねぇか…」
「大した武器も持ってないんじゃ危ねーから俺たちが守ってやんよ」
「…なに、礼なんて少し俺たちのの相手してくれるだけでいい」
「大人しくしとけば天国見せてやるぞ?」
「…久しぶりの上玉だなァ」
さっそく盗賊が5匹ほど釣れている。
「ん?この森じゃ激レア君の盗賊じゃん、…見るの1年ぶりかなぁ」
しかしその女に怖がる様子は見えない。
いっそ喜んでさえいるようにも見えるが、そんなはずはないと盗賊たちは自己完結する。
「なんだ女ァ~、強がりか?けなげで可愛いじゃねぇか~」
そんなことを言いながらもやはり恐怖に震える顔が見たいのか、盗賊はとがった舌で錆びた片手剣を舐め獰猛さを見せつける。
バキッ…バキバキッ…
だがその反応を拝む前に、盗賊たちの背後から聞こえる木が粉砕されるような音に遮られた。
「え、」
「は?」
「あ、おい…後ろ…」
そして振り返った彼らの視界に映ったのは、巨大な戦鎚を背負った三メートルほどの巨身の男。
「、え!?」
「うわっ、!?」
「巨人種!?」
「なんだよコイツ!?」
「デッカ!?」
「おお~!?巨人族見るのは5年ぶり?やっぱでかいな~」
盗賊たちは一瞬この巨人が女の連れかと考えるが、目を丸くして驚いている女を見て違うのかと考える。
例に漏れず、フードの女に怖がる様子はない。
そして場は巨人も含め沈黙に満ち、それぞれの呼吸音だけが響く。
この沈黙を誰が破るのかという緊張感が盗賊たちの中で広がる中、巨人の牙がびっしりと並んだ口がゆっくっりと開くのに気づいた一人の盗賊が、はたしてどんな第一声が発されるのかと体を固めた。
「――…え、あれ?…もしかして橘?」
そして来た巨人の第一声は思いの外軽く、理解の及ばないものであった。
それはフードの女に向けて放たれたものらしく、盗賊と同様に女も一瞬ポカンと口を開けて動きが止まった。
「…え、っと、君みたいな知り合いいたっけ…?…私のことを橘って呼ぶってことは日本の…知り合い、かな?」
「そうそう!俺だよわからない?」
「うーん、…ヒントプリーズ」
「名前にスと、ギと、オと、カがつきます」
「ん、おお!杉岡じゃんっ、ヨッス~!!」
「ピンポーン、ちな開発部で同僚だった杉岡友樹だぜ、他の杉岡って名前の知り合いがいるかもだから念の為言っとくぞぃ」
「おぅ、わかってるわかってる~、かつてのマブダチ君の杉岡だろ!マジおひさだな~」
「おう久しぶりだなー、テンション上がるわー」
「それな~、てかお前めっちゃデカくなっててウケんだけど、どしたん」
「あ、これな…なんか転生したっぽくて?気づいたら巨人になってたんだよ、まじ焦ったわ」
「わ、あたしも最初そんな感じだったわ、ビビるよな」
「橘はその感じだと人間なんか?」
「んや、私は…フフッ、見て驚くなよ…?」
そう言って橘がフードをはずし、ふるふると頭をふって綺麗な金髪と長い耳を自慢気に見せる。
「なんと私は、飢えた男たちの夢の詰まった…エルフさんなのだ」
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