4 / 7
好みは人それぞれ。
しおりを挟む「まって、乳児期で10歳ってことはさ、今お前何歳なんだ…?」
「え、それ聞いちゃう?」
「俺と橘の仲じゃん」
聞きたい聞きたいとせがまれては正直に答えねばなるまい。
橘だって大人だ。大人を超えてさえいる。女子の年齢を聞くなんて!などと野暮なことは言わない。
「…じゅ、17歳だよぅ☆」
沈黙が落ちる。
「……」
「………、……ねぇ、何か言って」
乳児期にもう10年を費やしていると話したばかりなのに、目の前の十分に成熟した大人にしか見えないエルフが17歳とは。これはいかに。
「本当のところはおいくつであらせられるのですか、お婆さん」
「お婆さん!!!はじめて言われた!!悲し!!!」
だが否定はできない。
「んもう、察しがついてんなら聞くなよな。…でもそう言うお主は何歳なのさ」
とりあえず話をそらす。
「俺?俺は今年で287歳。巨人族もまあ長寿種だからな」
「ほえー、普通におじいさんだった」
「同族の中では若者の部類だろ。エルフなら特にじゃねーの」
「まあそうなんだけど」
そうなんだけど、ただやり返したかった。効果はなかったが。
「…で、何歳なん」
話を逸らすのはさすがに無理だったっぽい。
「あはは、エットネ、…1000とちょっとに17を足した感じ…カナ?」
ちょっと、の部分にどれくらいの年数を含めるかはその人次第だが、橘の場合はけして少なくはないのだろう。
「1000!?桁が想像を超えてたな…でもいくらエルフでもそんなに生きれんの?」
「あー、私はハイエルフだからな。寿命とかはとくにない」
「スゲー!!伝説のヤツじゃんか」
「ふははは、崇め奉り給へ」
橘は褒められれば大いに調子に乗るタイプだ。しかし同僚だった頃、共に仕事をやっていても調子に乗っている時でさえ大きなやらかしを一度もしていなかったのは、友人として誇らしい面もあれど、やはり少々憎たらしかった。
「…でもまあそこまで行くと逆に婆さん感はないな…ベクトルが違う」
「見た目も若いままだしなー」
エルフの反則すぎる顔面偏差値を持っているからこそ、年をとってヨボヨボにはなりたくない。
橘は自分の顔面に誇りを持っているし、ケアも欠かさないのだ。
しかしあれ、と疑問に思う。
(…そいえば私、杉岡にこの美しい顔面のこと褒められてないぞ?)
杉岡が287年生きてきてもなお(前世を合わせると300年以上か…)、魔法使いさんになれてしまう”ど”のつくアレをこじらせていて、女性を褒めるという行為にシャイボーイになっていたのだとしても、私の美貌に一切触れてこないなど…ありえるのだろうか。いや、ありえない。
(転生して性転換しちまったとか…?や、ないか)
隣を歩いている巨人の惜しげなくさらされている肉体美をチラと覗き見て、ずぐにその思考は捨てる。
(大変グッドな漢っπだ…)
ならば、あれか。逆にあまりにも様々な経験を積みすぎて美人に食指が動かなくなったのか。…ありえる。
…ありえる!!
橘は心配げな表情は出さないように意識しながらさり気なく杉岡にたずねてみる。あくまでも普段どおりに。
「…あのさー杉岡、私の顔どう思う?」
口説いてるみたいだとか、そんなこと気にしてる余裕はない。
「あ?そうそうはじめて見た時思ったんだけど…めっちゃ美人、さすがエルフ!」
杉岡は親指をグっと立てて普通に返してくれた。
「だよね」
よかった。脳みそまで巨人族製鋼鉄筋肉に侵食されて美的感覚が消滅したわけではなさそうだ。
「でもさ」
…でもさ?
「俺の好みとは違うから安心しろ」
…俺の好みとは違うから安心しろ?
…、………?
…うーん、…なるほどな?シンプルだ。
理解はできないけど、この美貌が好みじゃないとはお前何様か!と思うけど、正気を疑うけど、それを本人に言うかねと殴りたい衝動に駆られるけど。非常にシンプルだった。それは仕方がない。
この男は100%善意で、橘を安心させるためにこのセリフを吐いたのだ。
「…あーね」
そいえばコイツ前世で貧乳ケモミミロリータのフィギュアばっかりデスクの上に並べてたな、と思い出した。
だいぶ釈然としなかったけど、隣でのんきに口笛を吹いている巨人を見て、どうでもよくなった。
~~~~~~~~~~~~~
橘が千年以上生きてるエルフってことですが、はっきり杉岡のこととか覚えてるのも、性格がそんなに変わらずに長い時間生きて気が狂ってないのも、エルフ製の脳みそに変わってるからです。
杉岡の記憶力に関しては気合い的なやつだと思います。はい。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる