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第六話

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 あれから何時間たっただろうか。
 目を覚ました私は椅子に縛り付けられ、薄暗い石造りの部屋で拷問を受けていた。
 確かここは家の地下室。もう何年も使われていないはずだ。
 代わる代わる人が現れ、顔を殴り腹を殴り、皮膚を切り裂き爪を剥がす。
 相手側にまともに話を聞く気がないのは随分始めの段階でわかっていた。彼らはなんとしてでも自白を取りたいだけだ。

「いい加減に白状してくれねえかな。あんたが犯人だってのはもう分かりきってるんだ。証拠も証人も揃ってるんだよ。」
「何度も言いますが私は犯人ではありません。」

 意識が飛ぶ寸前まで殴られる。分かりきっていたことだ。もう痛みも大して感じない。

「チッ…もう時間がきちまったじゃねえか。仕方がねえ、運び出すぞ。」

 男はため息をつくと拘束を解き始めた。さらに複数人が部屋に入り私を縄で縛りなおした。

「やっと信じてもらえましたね。これで解放ですか。」
「まだそんな軽口を叩ける元気があったか。」

 また殴られる。いや、これは私にも非があったかもしれない。

「まあそんなことを言ってられるのもこれで最後だ。これからお前は貴族サマの前で裁かれることになるんだからな。」
「貴族様?まさか…」
「ああ、上は楽しいパーティーの真っ最中。その最後にお嬢様の輝かしい功績を大発表、って寸法だそうだ。」

 絶句する。汗が滝のように流れる。貴族というものを理解していたが故に、何も言葉を発することができない。

「やっと表情が歪んだな、もう逃げられねえぞ。最初から逃げる場所なんてないがな。」
「ま、待て!」
「待たない。貴族の前で弁明なんて意味がないことくらいわかってるから焦ってるんだろう?」

 抵抗することもできずパーティー会場まで連れ出された。
 するとすぐさま、会場からメアリーお嬢様が出てくる。

「…まだ口を割っていないのですか、強情ですね。お姉様も悲しみますよ。」
「お嬢様!これは何かの間違いです!もう一度改めて調査を!」

 当然口を塞がれ、殴られる。
 それでも抵抗するしかない。

「まあいいわ。どうせもう少しであなたは自分から白状することになるんだから。」

 全く発言が理解できない。私は犯人ではないのだから。
 その自信は、どこから湧いてくるんだ。

「さあ、楽しいパーティーもいよいよ終盤。犯罪者と若き勇者の登場でフィナーレね。」
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