狂気の推し活令嬢リリアーナ様!

YY

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第14話:ツンデレ救出劇!

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わたくしが愛の香りで悪党どもを浄化し、最高の舞台を整えた、まさにその時でしたわ!
倉庫の奥の部屋から、これまでの雑魚たちとは明らかに雰囲気の違う、いかにも幹部といった風格の男が姿を現しました!その手には、禍々しいオーラを放つ魔剣が握られています。あらあら、ついにラスボスのお出ましのようですわね。これでこそ、物語は盛り上がりますわ。そうでなくては、ヒーローの活躍の場がございませんもの。

そして、時を同じくして。
バンッ!という轟音と共に、錆びついた鉄の扉が蹴破られました!逆光を背に、颯爽と現れたそのお姿は…もちろん、わたくしの愛しの騎士様、ゼノン様です!埃っぽい倉庫に差し込む一筋の光が、まるで彼のためのスポットライトのように、その輪郭を神々しく照らし出しております。ああ、なんて計算され尽くした登場シーンなのでしょう!

(きゃあああ!ゼノン様!最高のタイミングですわ!)

ああ、役者は揃いました!
囚われの姫君(わたくし)、立ちはだかる悪の幹部、そして、愛する人を救うために駆けつけたヒーロー(ゼノン様)!これ以上ないほど完璧な配役!最高の舞台の幕開けですわ!

「ほう、貴様が漆黒のゼノンか。思ったより早く着いたな」
「…貴様が、ここの責任者か」

ゼノン様と敵幹部の間で、バチバチと見えない火花が散ります。わたくしは、椅子に縛られたまま、この上なく幸福な気持ちで、その光景を見守っておりました。まるで、特等席で観劇しているかのようですわ。これから始まるのは、わたくしのためだけの、特別公演なのですから。
そして、ついに二人の剣が交えられました!

キィン!と甲高い金属音が響き渡り、目にも留まらぬ速さの一騎打ちが始まります。敵幹部の大振りな魔剣を、ゼノン様は柳のようにしなやかな剣さばきで受け流し、逆に鋭い突きを繰り出します。ああ、なんて美しいのでしょう!力と技の応酬、まさに芸術ですわ!あれはゲームで言うところのスキル『幻影の舞』!そして今の反撃はクリティカルヒットですわ!
わたくしは、この歴史的な瞬間の、最高の観客ですわ!椅子に縛られたまま、動けないこの状況が、逆に特等席のように思えてまいります。わたくしは、ありったけの声援を送りました。

「頑張って、ゼノン様!素敵ですわ!」
「その剣筋、最高ですわよーっ!今の避け方、100点満点ですわ!さすがです!」

ちらりとこちらを見るゼノン様の、厳しい視線。一瞬、眉間に深い皺が刻まれたように見えましたが、きっと気のせいですわ。ええ、分かりますわ。わたくしの声援が、彼の力になっていることを、わたくしは確信いたしました。これはもう、ただの戦闘ではありません。わたくしとゼノン様の、愛の共同戦線なのです!彼のMP(マジックポイントならぬメンタルポイント)は、わたくしの応援で無限に回復するのですから!

戦いは、ゼノン様の圧倒的な優勢で進んでおりました。敵幹部もかなりの手練れのようですが、愛の力(とわたくしの声援)を得たゼノン様の前には、敵ではありませんわ。
そして、ついに決着の時が。
ゼノン様の閃光のような一撃が、敵幹部の魔剣を弾き飛ばし、その喉元に切っ先が突きつけられました。…勝負あり、ですわね!

敵幹部を見事に打ち破ったゼノン様は、まっすぐ、わたくしの元へと歩み寄ってこられました。一歩、また一歩と近づいてくるそのお姿に、わたくしの心臓は早鐘のように鳴り響きます。
そして、一太刀で、わたくしを縛っていた縄を断ち切ると、無言で、その逞しい手を差し伸べてくださいました…!

(きゃあああああああっ!)

これですわ!これこそが、乙女ゲームの王道スチルシーン!
薄暗い倉庫の中、天井の隙間から差し込むただ一筋の光が、彼とわたくしを照らし出す。彼の差し伸べた手、心配そうな(ようにわたくしには見える)紫水晶の瞳、そして、彼を信じきった表情でその手を取るヒロイン(わたくし)!ああ、脳内に、完璧な一枚絵が再生されますわ!背景には薔薇が舞い、美しいオーケストラの音楽が流れております!

わたくしは、その革手袋に包まれた大きな手を取り、満面の笑みで立ち上がりました。間近で見るゼノン様のお顔は、やはり破壊的なまでに美しかったですわ。

「助けてくださって、本当にありがとう存じます、ゼノン様!」

わたくしが、感謝の言葉を述べると、彼は氷のように冷たい、しかしどこか熱を帯びた声で、こうおっしゃいました。その声は、怒りと疲労が混じっているようにも聞こえましたが、それもまた彼の魅力の一つですわ。激戦の後ですもの、当然ですわ。

「二度と、勝手な真似はするな」

……まあ!なんてこと!
その言葉を聞いた瞬間、わたくしの中で、全てのピースが完璧にはまりましたわ!
心配で、心配で、素直になれないのですね!わたくしが自ら囮になるという無茶をしたせいで、気が気ではなかったのでしょう。わたくしの身を案じるあまり、つい「ありがとう」ではなく、「心配したんだぞ、馬鹿者!」という気持ちが、厳しい言葉になって出てしまうのですね!ああ、なんて愛おしいのでしょう!これぞツンデレの極み!ゲームで何度も見た、好感度が最高潮に達した時のイベントですわ!

わたくしは、全てを悟り、聖母のような慈愛に満ちた笑みで、こう呟きました。

「…照れ隠しですわね!」

その言葉に、ゼノン様は一瞬、息を呑んで固まってしまわれました。そして、何かを言おうとして、口をぱくぱくとさせていらっしゃいます。そのお顔は、驚きと、困惑と、そしてほんの少しの赤みが差しているように見えますわ。
ふふ、図星でしょう?あなたのその不器用な愛情、このリリアーナには、全てお見通しですわよ。
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