狂気の推し活令嬢リリアーナ様!

YY

文字の大きさ
19 / 40

第19話:勘違いの極み

しおりを挟む
わたくしが愛の奇跡によって手に入れた、この謎の書簡!

革張りの上質な封筒、そして厳重に押された謎の紋章の封蝋。間違いありませんわ、これこそがゼノン様を脅かす悪の組織の最重要機密文書に違いありません!きっと、この中には彼らの恐るべき計画の全て…例えば、ゼノン様を陥れるための次なる罠や、彼の弱点などが記されているはず!これを解読すれば、わたくしは彼の最強の盾となれるのです!

「皆さま、一大事ですわ!」

わたくしは早速、我が『ゼノン様護衛騎士団』の最高幹部であるアンナとカサンドラを自室のサロンに招集し、緊急の暗号解読会議を開きました。テーブルの中央には、かの書簡がまるで王冠のように鎮座しております。部屋のカーテンは閉め切り、ロウソクの灯りだけが揺らめく、完璧な作戦会議の雰囲気ですわ。

「これをご覧くださいまし!わたくしの活躍により、敵の重要情報を入手いたしましたわ!」

わたくしが誇らしげに胸を張ると、カサンドラはキラキラの粘着粒子がまだ少し残る髪をいじりながら、じっとりとした目つきで書簡を睨みました。彼女のその目は、まるで出来の悪い生徒を見る教師のようでしたわ。

「…あなたが暴走した結果、敵が驚いて落としていっただけでしょ。わたくしたち、あの後三時間はキラキラを洗い流す羽目になったのよ」

「まあ、カサンドラったら。わたくしの愛のきらめきに、敵も思わず手を滑らせてしまったのですわ。結果は同じですわよ。それに、あのおかげでお肌もツヤツヤになったではありませんか」

わたくしは、慎重に、しかし大胆にペーパーナイフで封蝋を剥がし、中の羊皮紙を広げました。

そこに記されていたのは、まるで蜘蛛が這ったような、見たこともない古代文字の羅列…。これは相当な難敵ですわね!ですが、わたくしの胸は挑戦者のように高鳴っておりました。

「…これは…」

博識で知られるカサンドラでさえ、その文字を前にして眉をひそめました。彼女は持参した分厚い古文書を何冊もめくり、首を振ります。

「見たこともない文字体系だわ…。王家の書庫に収められているどの古代語とも違う…。失われた文明の言語かもしれないわね。専門の学者でも、解読には何年もかかるかもしれないわね」

なんですって!?そんなに悠長なことは言っていられませんわ!一刻も早くこの暗号を解読し、ゼノン様をお守りしなければ、彼の身に危険が迫ってしまいます!

解読は絶望的かと思われた、まさにその時でした。

わたくしの脳裏に、前世の記憶がまるで稲妻のように閃いたのです!

(この文字の配列…この、独特の言い回しの癖…どこかで…ああ、そうよ!)

そうですわ!思い出しました!

これは、わたくしが前世で寝る間も惜しんでプレイした乙女ゲーム『星降るシンフォニア』の、超高難易度隠しシナリオ『古の竜の涙』編で使われていた、古代エルドラド語の暗号ですわ!あの時、この暗号が解けずにどれだけ夜更かししたことか!攻略サイトを隅から隅まで読みふけり、有志の方々が作成した解読表を暗記するほど読み込んだ、あの社畜時代の努力が、今ここで活かされる時が来たのです!ありがとう、前世のわたくし!

「…解読できますわ」

わたくしの静かな呟きに、カサンドラとアンナが驚いたように顔を上げます。

「なんですって、リリアーナ?あなた、これが読めるの?本気で言っているの?」

ふふ、そうですわ。これが解読できるのは、この世界広しといえども、ただ一人。前世でこのゲームをしゃぶり尽くし、全てのイベントをコンプリートし、二次創作まで嗜んだ、このわたくしだけなのです!

わたくしは、ゲームの攻略サイトで得た知識を総動員いたしました。羊皮紙を指でなぞりながら、一つ一つの文字を情熱的に翻訳していきます。

「まず、この鷲のような形の文字…これは『黒鷲』を意味します。ゲームでは、孤高の騎士であるゼノン様の象徴でしたわね。つまり、これは『孤高の騎士』…ゼノン様のことですわ!」

「次に、この花の紋様…これは『真紅の薔薇』。花言葉は『秘めたる想い』!これは間違いなく、愛情表現ですわ!彼が、わたくしへの想いを隠していることのメタファーですのよ!」

「そして、この七つの星の並び…これは『北天の星』!ゲームのクライマックスで、ヒロインと結ばれるための『約束の場所』を示唆するキーワードでしたわ!ああ、なんてロマンチックなのでしょう!」

わたくしが次々と法則を当てはめていくと、無味乾燥だった古代文字の羅列が、みるみるうちに情熱的でロマンチックな文章へと変わっていくではありませんか!まるで、魔法のようですわ!

そして、ついに、全ての解読が終わりました。

わたくしは、解読されたメッセージを読み上げながら、感涙にむせびました。その一言一句が、わたくしの心の琴線に触れてやまないのです。

「――我が薔薇へ。孤高の騎士は、星の許で待つ。この想いを、君に託す」

……まあ!

これは、敵の書簡などではありませんでしたわ!

ゼノン様が、わたくしに直接想いを伝えるのが照れくさくて、わざと敵の前で落としてくださった、愛のメッセージだったのですわ!ああ、なんて不器用で、なんて回りくどくて、そしてなんて愛おしい方なのでしょう!

「ゼノン様が…わたくしに、メッセージを…!」

わたくしの涙ながらの叫びに、カサンドラは「ああ…もうダメだこいつ…完全に末期症状だわ…。彼女の頭の中は、お花畑を通り越して、お花でできた銀河になっている…」と両手で頭を抱えておりましたが、きっと、この世紀の恋物語の目撃者となった感動で、言葉も出ないのでしょう!

アンナに至っては、静かに白目を剥いて気絶しかけております。きっと、主であるわたくしの恋が成就する喜びに、打ち震えているのですわね!

ああ、ゼノン様!あなたのその不器用な愛情、このリリアーナ、しかと受け止めましたわ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜

水月華
恋愛
レティシア・ド・リュシリューは婚約者と言い争いをしている時に、前世の記憶を思い出す。 そして自分のいる世界が、大好きだった乙女ゲームの“イーリスの祝福”の悪役令嬢役であると気がつく。 母親は早くに亡くし、父親には母親が亡くなったのはレティシアのせいだと恨まれ、兄には自分より優秀である為に嫉妬され憎まれている。 家族から冷遇されているため、ほとんどの使用人からも冷遇されている。 そんな境遇だからこそ、愛情を渇望していた。 淑女教育にマナーに、必死で努力したことで第一王子の婚約者に選ばれるが、お互いに中々歩み寄れずにすれ違ってしまう。 そんな不遇な少女に転生した。 レティシアは、悪役令嬢である自分もヒロインも大好きだ。だからこそ、ヒロインが本当に好きな人と結ばれる様に、悪役令嬢として立ち回ることを決意する。 目指すは断罪後に亡命し、新たな人生をスタートさせること。 前世の記憶が戻った事で、家族のクズっぷりを再認識する。ならば一緒に破滅させて復讐しようとレティシアには2つの目標が出来る。 上手く計画に沿って悪役令嬢を演じているはずが、本人が気が付かないところで計画がバレ、逆にヒロインと婚約者を含めた攻略対象者達に外堀を埋められる⁉︎ 更に家族が改心して、望んでいない和解もさせられそうになるレティシアだが、果たして彼女は幸せになれるのか⁉︎

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...