狂気の推し活令嬢リリアーナ様!

YY

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第37話:誤解がさらに拡大

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王都での、あの血で血を洗う大立ち回りの後。街中の噂は、まるで熱病のようにますます過熱しておりましたわ!最初は、「謎の令嬢が、奇策を用いて騎士団の窮地を救った」という、まあ、大筋では事実に基づいたものでした。ですが、その噂は一日も経たぬうちに、現場にいた(と自称する)目撃者を名乗る人々の興奮した証言(という名の妄想)と、暇を持て余した貴族たちの豊かな想像力という翼を得て、とんでもない方向へと羽ばたいていったのです!わたくしが朝、目を覚ます頃には、もう尾ひれどころか竜の翼が生えておりましたわ。噂というものは、生き物ですのね。まるで、伝言ゲームのように、語り継がれるたびに豪華絢爛になっていくのですから。

「お聞きになって?あの謎の令嬢は、どうやらリリアーナ様だったらしいですわ!」
「まあ!では、あの方がゼノン様を命がけでお守りになったという…!なんでも、暗殺者の刃がゼノン様に迫った瞬間、一筋の光のようにその前に立ちはだかったとか!」
「わたくしが聞いた話では、リリアーナ様が『彼に指一本触れさせませんわ!』と戦場に響き渡る声で叫ぶと、そのお体から後光のような金色のオーラが放たれ、その聖なる光に触れた悪党どもは武器を捨ててひれ伏し、浄化されたそうですわよ!まるで聖女の降臨ですわ!」

そうですわ!いつの間にか、わたくしの英雄的行為は、完全にゼノン様と結びつけられ、わたくし個人として特定されておりましたの!ええ、ええ、構いませんわ!むしろ、大歓迎です!わたくしの名は、ゼノン様と共にあるべきなのですから!「リリアーナ」と「ゼノン」、なんと美しい響きの組み合わせなのでしょう!まるで、伝説の恋人たちの名前のようですわ。後世の歴史書には、きっと二人の名前が並んで記されることでしょう。

そして、噂はさらにロマンチックな、吟遊詩人が好んで歌い上げそうな方向へと、美しく進化を遂げていったのです!王都中のサロンでは、ご令嬢方がうっとりとした表情で、最新のゴシップという名の真実を交換しておりました。もはや、お茶会の議題はわたくしたちのことで持ちきりでしたの。

「命がけで互いを守り合う二人…これこそが、真実の愛ですわ!わたくし、感動で涙が止まりません!」
「身分違いの障害を乗り越えようとする、公爵令嬢と平民出身の騎士の、禁じられた恋…!ああ、なんて劇的なのでしょう!まるで物語のようだわ!」
「聞きましたこと?先日、公爵様が王宮に参内し、国王陛下に二人の婚約の許可を、涙ながらに求めたそうですわよ!『娘の純粋な想いを、どうかお認めください』と!あの二人、ついに婚約なさるそうですわよ!」

まあ!なんて気が早くて、なんて素敵なんでしょう!わたくしとゼノン様の婚約の噂が、王都のサロンの話題を独占しておりました!まだご本人からのお言葉はいただいておりませんのに、もう周囲がわたくしたちの輝かしい未来を祝福してくださっているのですわ!これぞ、世論の力ですわね!民衆の声は神の声、と言いますもの!わたくしたちの愛は、もはや神に認められたと言っても過言ではありませんわ!

ついに、その熱狂的な噂はわたくしの敬愛するお父様の耳にも入りました。その日の午後、わたくしは父の執務室へと呼び出されました。一体どのようなお話かしら、と少しばかり緊張しておりましたが、重厚な扉を開けた瞬間、その心配は杞憂に終わりました。お父様は、山のような国家機密の書類を脇に押しやり、それはもう満面の笑みで、わたくしの顔を見るなり、重厚な椅子から立ち上がって大絶賛してくださったのです!その喜びようは、まるで長年の懸案だった隣国との和平条約が締結されたかのようでしたわ。

「リリアーナ、よくやった!父さんは嬉しいぞ!あの、鉄壁と名高い堅物騎士を、お前はそこまで惚れさせたか!王太子殿下との一件以来、お前の将来を案じて夜も眠れなかったが、まさか、あの『漆黒の騎士』を落としてくるとはな!父さんの目に狂いはなかった!お前は、わが公爵家の誇りだ!」

ええ、ええ、お父様!わたくしの愛の力の前には、鉄壁など紙同然ですわ!彼の心は、もうわたくしのものですもの!

そして、お父様はわたくしの両肩をがっしりと掴み、まるで国の未来を左右する重大な決断を下すかのように、力強く宣言なさいました。その瞳は、父親としての愛情と、公爵としての策略の色で爛々と輝いておりました。

「よし、噂で終わらせるなど、もったいない!本当に婚約させてやるぞ!あのゼノンという男、平民出身ながらその実力と人望は本物。彼をお前の伴侶とすることは、我が公爵家にとっても、ひいては王国にとっても大きな利益となる!王家に働きかけて、このわしが、必ずやお前たちの仲を実現させてみせよう!反対する者あらば、このわしが全力で叩き潰してくれる!」

お父様、大好きですわ!わたくしの恋路を、まさかここまで、国を動かすレベルで応援してくださるなんて!なんて頼もしいお父様なのでしょう!これぞ、最強の支援者(スポンサー)ですわ!

ゼノン様ったら、まだ照れて、わたくしに愛の告白もしてくださらないというのに、もう外堀は完全に埋まりましたわね!あとは、彼が観念してわたくしの手を取り、ひざまずいて「リリアーナ、私の妻になってくれ」と愛を誓うだけ!その時のために、最高のドレスを用意しておかなくては!『ゼノン様白書』のウエディングプランのページを、今夜見直さなくてはなりませんわ!

このまま既成事実を作って、ゴールインまで一直線ですわ!

オーッホッホッホッホ!

わたくしの高らかな笑い声が、公爵家の屋敷中に、そして王都の空にまで響き渡ったことでしょう!
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