ポンコツ女神が受注した『プロジェクト:魔王討伐』は炎上確定!? プロジェクトマネージャーの俺がデスマーチ現場を立て直して絶対FIREしてやる

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第3章:偽りの繁栄と経済戦争

第73話:残された48時間

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一行が村の中心にあるはずの広場へとたどり着いた時。彼らはそこで初めて、動いている人影を発見した。それは、古びた井戸の縁に力なく腰掛けた、一人の老人だった。

その姿はあまりにも異様だった。彼はただそこに座っているだけ。だが、その身体はまるで、長い年月をかけて風化してしまった石像のように、生命の輝きを一切失っていた。皮膚は乾いた土のようにひび割れ、その痩せこけた手足は枯れ木の枝のように細い。そして、その瞳。シーナが宿場町で見たあの避難民たちと同じ、光を失い、何も映すことのない、うつろな瞳だった。

「…すみません」

ケンジが代表して、その老人へと声をかけた。彼の声に、老人はまるで錆びついた機械のようにぎこちなく、ゆっくりと顔を上げた。そのうつろな瞳が一行の姿を捉える。だが、そこに驚きもなければ、警戒の色も浮かばない。まるで、目の前にいるのが人間なのか、あるいはただの石ころなのかさえも判別できていないかのようだった。

「我々は、王都から来た冒険者です。この村で、一体何が起きているのか、教えてはいただけませんか?」

ケンジのその丁寧な問いかけに、老人はただ虚空を見つめたまま、その乾ききった唇をわずかに動かした。そして、そこから漏れ出してきたのは、まるで砂が擦れ合うかのような、ひどくかすれた声だった。

「…もう、すぐだ…」

そのあまりにも唐突な言葉。ケンジは、その意味を問い返そうとした。だが、老人はそれを待たずに続けた。

「…もう、すぐ、みんな…動けなくなる…」

その絶望的なまでの諦念に満ちた呟き。それはもはや予言などではなかった。ただ、そこに住む者だけが理解できる、抗いようのない未来の事実を語っているだけだった。

その言葉を聞いた瞬間、それまで虚ろな人形のように立ち尽くしていたシーナの身体がびくりと震えた。彼女の光を失っていたはずの瞳に、初めて激しい感情の光が宿る。それは、恐怖だった。そして、その恐怖を振り払うかのような、必死の想いだった。

「…診療所は…!」

シーナの唇から、か細い声が漏れる。

「エミリーばあさんの、診療所は、どうなったんだ!?」

彼女は老人の痩せこけた肩を掴み、激しく揺さぶった。だが、老人は何の反応も示さない。シーナは、その返事を待たずに弾かれたように駆け出していた。村の外れにある、一軒の小さな建物へと。彼女が自らのすべてを賭して支援してきた、故郷の最後の砦。エミリーばあさんの診療所へと。

仲間たちも慌ててその後を追う。たどり着いた診療所。その姿は、シーナの最後の希望を打ち砕くには十分すぎるほど、悲惨なものだった。

建物の壁は所々崩れ落ち、かつては色とりどりの薬草が植えられていたはずの庭はすべて枯れ果てている。そして、その扉は、まるで何年も開けられたことがないかのように、固く閉ざされていた。

「ばあさんッ! エミリーばあさん! あたしだよ、シーナだ! 開けてくれッ!」

シーナは扉を叩き、叫んだ。その声は、もはや懇願ではなかった。絶望に抗う、魂からの悲鳴だった。だが、その悲鳴に応える声はない。人の気配がほとんどしなかった。ただ、扉の向こう側から、あの村中に響いていたものと同じ、ひどく苦しそうな、そして弱々しい咳の音だけが、一つ聞こえてきただけだった。

シーナは、その場で崩れ落ちるように扉にその身をもたせかけた。彼女の心は完全に折れていた。自分がしてきたことはすべて無駄だったのだ。故郷はもう、救いようのない死の淵に立たされている。そのあまりにも残酷な現実を、彼女は認めざるを得なかった。絶望が深すぎると、人は涙さえ流せないのだと、この時初めて身をもって知った。

シーナのか細い肩が絶望に震えている。診療所の固く閉ざされた扉。それは、彼女の最後の希望が完全に断ち切られたことを象徴していた。ルリエルが、ゴードンが、ガイが、ただなすすべもなく、その悲痛な光景を見つめている。

その、誰もが思考を停止させていた瞬間、ケンジが動いた。

彼は静かに一歩前に出る。そして、そのすべての意識をこの死にゆく村そのものへと集中させた。

「皆さん、少し下がっていてください」

そのあまりにも冷静な声に、仲間たちがハッと我に返る。

「これより、この村全体を僕のスキルでスキャンします」

ケンジはそう言うと、静かに目を閉じた。彼のプロジェクトマネージャーとしての本能が叫んでいた。感情に流されるな。ただ事実を観測しろ。この絶望的なプロジェクトを成功させるための、すべての情報を今この手で掴み取るのだ、と。

(―――スキル起動、【プロジェクト管理 -絶対遵守-】、広域スキャンモード!)

ケンジの身体から目には見えない、しかし圧倒的なプレッシャーが放たれる。彼の意識は、その肉体を離れ、まるで一羽の鳥のように空高く舞い上がっていく。そして、彼の視界にミレット村のそのすべての情報が再構築されていく。

それは、もはや彼がこれまで見てきた戦術盤などという生易しいものではなかった。彼の目の前に広がったのは、この村の生命活動そのものをリアルタイムで可視化した、巨大な生命維持モニター。

一つ一つの家が、青白いポリゴンのオブジェクトへと変換される。そして、その家々の中に、無数の光の人影が浮かび上がった。村人たちだった。

だが、その光はあまりにも弱々しく、そして不吉な色をしていた。ケンジやその仲間たちの生命力が力強い緑色の光を放っているのに対して、村人たちのそれはすべて、例外なく危険水域を示す真っ赤な光で明滅していたのだ。

ケンジは、その一人一人のステータスを確認していく。

【村民A|HP: 15/100|STATUS: 衰弱(重篤)】
【村民B|HP: 12/100|STATUS: 衰弱(重篤)】
【村民C|HP: 9/100|STATUS: 衰弱(危険)】

そして、彼の視界にそのあまりにも残酷な現実が表示される。彼らのHPを示すその赤いゲージが静止してはいないのだ。

まるで砂時計の砂がこぼれ落ちていくかのように。あるいは、穴の空いた器から水が漏れ出していくかのように。その数値が刻一刻と、しかし確実に、減少していく様が、彼の目にははっきりと見えていた。15が14に。12が11に。9が8に。

この村は、ただ病に苦しんでいるのではない。この村は、今この瞬間も、その存在そのものがリアルタイムで世界から削り取られ、消え去ろうとしているのだ。

ケンジは、そのあまりにも恐ろしい光景に息をのんだ。彼の視線がシーナが崩れ落ちていた診療所へと向けられる。そこには、十数人のひときわ弱々しい赤い光と、そしてその光たちを必死に守るかのように寄り添う、一つのわずかに明るいオレンジ色の光があった。

【エミリー|HP: 35/100|STATUS: 衰弱(中)、疲弊(極限)】

(…この人が、シーナさんの…)

彼女もまた、アノマリーに蝕まれながら、その残り少ない生命力を分け与えるかのように、患者たちを看病しているのだ。そのあまりにも気高い、しかしあまりにも無力な献身。

ケンジのスキルが非情な未来予測を弾き出す。

【予測:村全体の生命活動の完全停止まで、残り―――47時間58分12秒】

二日。残された時間はわずか二日。

事態は、彼らの想定を遥かに、遥かに超えて深刻だった。ケンジのスキルが解除される。彼の意識が再び現実の肉体へと戻ってきた。

「ケンジさん!?」
「ボス、大丈夫か!?」

仲間たちが、彼のそのあまりの豹変ぶりに駆け寄ってくる。ケンジの顔は血の気を失い、真っ白だった。その額からは玉のような汗が流れ落ち、その瞳はこれまでに見たこともないほど深い絶望と、そして恐怖に見開かれていた。彼はただ震える唇で一言だけ呟くことしかできなかった。

「…時間、が…、ない…」

そのか細い一言。だが、その言葉に込められたあまりにも重い絶望の意味を、仲間たちはまだ知る由もなかった。
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