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面倒臭がりは態度だけ(愚者の逆位置)
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怠い……それが彼の口癖だ。何かをしてもしていなくても、開口一番怠いという。いつどんな時でも、彼は揺るがない。
「怠い……」
「ねえ、私の顔見てそれ言うのいつもやめてって言ってるじゃん……挨拶した後に行ってよ……」
「怠い……」
「はぁ……」
彼の名は『愚者』の逆位置、正位置の愚者さんとは相対する存在である。主な意味は『停滞・後悔・足踏み状態』などで、彼の性格も相俟ってかなりの怠け者に見える。
何時もの事なのだが、なんとなく様子を見に行ったら、案の定私の顔を見たとたんに怠いと言われた。初見の時はなんて失礼な!とも思ったが、彼らのことを分かっていくうちに慣れてしまった。
ただ、慣れたとはいえ流石に毎回になると困惑する。来ないほうがいいのではないだろうかとか、余計なことばかり考えては心配になったりするからだ。それを知らないであろう彼は、相変わらずの無表情のままで珍しく言葉をつづけた。
「なぁ……」
「何?」
「なんで俺にかかわんだ……?」
「え?」
「ただの興味本位ってんなら、もう飽きてる頃だろ……? なのに飽きもせず毎回来るだろ、お前。怠くないのか?」
突然の質問に、私は驚いた。彼が質問してきたということもそうだが、理由を聞かれると思っていなかったからだ。
言われて改めて考えてみたが、理由という理由はない。ただどうしているかを知りたいからというのと、もっと仲良くなっていろんな話をしたいと思っているから……くらいだろうか。
そういうと、彼は突然立ち上がり私に迫ってきた。
「そんな理由だけで毎回毎回俺のところに足を運んでいるのか誰かに頼まれたわけでもないのに自主的にやっているのかいったい何の意味があるのか俺には理解できないのだが」
「ちょちょちょっ……と落ち着いて! 何を話しているのか全然わかんないし!」
急にまくし立ててくる彼を落ち着かせ、もう一度ゆっくりと話を聞いた。彼にとって私のこの行動は不可解の何物でもないらしく、無意味な行為だと思っているとのこと。大体の人は、彼のこの態度に腹を立て、金輪際かかわってこないのだが、私だけ毎回来るので理解不能なのだという。そうは言われても、関わりたいと思うから来てるのであって、深い理由や意図もない。そう伝えたのだが、全然納得していない様子だ。
それにしてもと、思う。普段基本無口な彼が、ここまでまくし立ててくるのかと驚いた。てっきりすぐに会話終了になると思っていたからだ。
「逆愚者さんって、結構真面目なんだね」
「あ?」
「最初は怠け者だな~って思ってたけど、頭でいろいろ考えてはいるけどそれを形にできないだけなんじゃない?」
彼は頭ではいろんなことを考えているが、それを表に出す事がなかなかできないだけなのかもしれない。それは私とよく似ているし、表に出すのが怖いと思っているからなのだろう。
「なんか、今回の件で益々親近感がわいた! しつこいくらいに構いに来るから、覚悟してなさい!」
「はぁ~……怠い……」
「ふふ、知ってる! 私も怠くなってきたからここにいるね!」
返事こそはなかったが、嫌がるそぶりは全くなかった。その様子に安堵しつつ、特に何かをするでもなく、二人で黙って過ごすのだった。
「怠い……」
「ねえ、私の顔見てそれ言うのいつもやめてって言ってるじゃん……挨拶した後に行ってよ……」
「怠い……」
「はぁ……」
彼の名は『愚者』の逆位置、正位置の愚者さんとは相対する存在である。主な意味は『停滞・後悔・足踏み状態』などで、彼の性格も相俟ってかなりの怠け者に見える。
何時もの事なのだが、なんとなく様子を見に行ったら、案の定私の顔を見たとたんに怠いと言われた。初見の時はなんて失礼な!とも思ったが、彼らのことを分かっていくうちに慣れてしまった。
ただ、慣れたとはいえ流石に毎回になると困惑する。来ないほうがいいのではないだろうかとか、余計なことばかり考えては心配になったりするからだ。それを知らないであろう彼は、相変わらずの無表情のままで珍しく言葉をつづけた。
「なぁ……」
「何?」
「なんで俺にかかわんだ……?」
「え?」
「ただの興味本位ってんなら、もう飽きてる頃だろ……? なのに飽きもせず毎回来るだろ、お前。怠くないのか?」
突然の質問に、私は驚いた。彼が質問してきたということもそうだが、理由を聞かれると思っていなかったからだ。
言われて改めて考えてみたが、理由という理由はない。ただどうしているかを知りたいからというのと、もっと仲良くなっていろんな話をしたいと思っているから……くらいだろうか。
そういうと、彼は突然立ち上がり私に迫ってきた。
「そんな理由だけで毎回毎回俺のところに足を運んでいるのか誰かに頼まれたわけでもないのに自主的にやっているのかいったい何の意味があるのか俺には理解できないのだが」
「ちょちょちょっ……と落ち着いて! 何を話しているのか全然わかんないし!」
急にまくし立ててくる彼を落ち着かせ、もう一度ゆっくりと話を聞いた。彼にとって私のこの行動は不可解の何物でもないらしく、無意味な行為だと思っているとのこと。大体の人は、彼のこの態度に腹を立て、金輪際かかわってこないのだが、私だけ毎回来るので理解不能なのだという。そうは言われても、関わりたいと思うから来てるのであって、深い理由や意図もない。そう伝えたのだが、全然納得していない様子だ。
それにしてもと、思う。普段基本無口な彼が、ここまでまくし立ててくるのかと驚いた。てっきりすぐに会話終了になると思っていたからだ。
「逆愚者さんって、結構真面目なんだね」
「あ?」
「最初は怠け者だな~って思ってたけど、頭でいろいろ考えてはいるけどそれを形にできないだけなんじゃない?」
彼は頭ではいろんなことを考えているが、それを表に出す事がなかなかできないだけなのかもしれない。それは私とよく似ているし、表に出すのが怖いと思っているからなのだろう。
「なんか、今回の件で益々親近感がわいた! しつこいくらいに構いに来るから、覚悟してなさい!」
「はぁ~……怠い……」
「ふふ、知ってる! 私も怠くなってきたからここにいるね!」
返事こそはなかったが、嫌がるそぶりは全くなかった。その様子に安堵しつつ、特に何かをするでもなく、二人で黙って過ごすのだった。
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