魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第一章 エリミア辺境王国編

33.巻き込まれても進むために

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青白い闇のなか。一人窓辺に青黒い影絵のような輪郭が浮かぶ。

「ちゃんと遣る…役目は果たすよ…逃がしたくない…」

寂しげに一人消え残る。
その声は内なるものと語り、風のように儚い音を奏でていた。


フレイリアルは朝から悩んでいた。

『ヤッパリ魔石を探しに行くならヴェステ…あぁ、でもニュールはヴェステを通る国には行きたくないって…』

昨日、選任の儀が終了後、友好使節としての留学者選考について説明を受けた。
まずは希望者を募り、希望が無ければ下の順位から強制的に送致されると…。

「希望者は明日の夕時までに申し出お願い致します」

説明時、留学希望を申し出そうな物は皆無だった。

勿論、フレイ達も守護魔石を自身の分と合わせ二個所有出来たし、攻撃も防御もしっかり行っていたので拒否出来る立場を得ている…はずである。
だがフレイは、これが ”天空の天輝石” の手掛かりを手に入れるために外へ飛び出す絶好の機会で有ることに直ぐ気付いた。
継承権を持つフレイリアルは、そのままだと国外に出ることはできない。
一定条件を満たさない限り継承権は放棄も出来ない…が今回留学出来ればその条件に該当する。
説明時、その事に思い至り直ぐに申し出に行こうとした…が踏み留まった。

『私だけが行くんじゃない…ニュールも一緒に行くんだから…』

たった1日共に過ごしただけのフレイリアルの守護者になることを受け入れ、共に進んでくれると言うニュール。

『ニュールの意見を聞かず、勝手には決める事は出来ない!』

少しだけ周りを気遣えるようになったと思う。

1日だけど1日で済まないような密度の濃い時間を過ごし、フレイはニュールに色々な事情が有ることは分かった。その事情はフレイでさえかなり大変そうだと察する事も出来た。

「ヴェステ以外だ。あと、ヴェステを経由する国も勘弁してくれ…」

まだ何も伝えて無いのに、いきなり横に居るニュールが前を向いたままフレイに告げてきた。
フレイは目をぱちくりさせ、鳥が驚かされた時のような顔をしている。

「なんで…?」

驚きで、それだけしか言えないフレイにニュールは答えた。

「お前の目的は、大賢者様のために必要な天輝石を探すことだろ」

「うん!」

ニュールは同じようにフレイの事を考えてくれたのだ。

分かりやすいフレイリアルの表情や動きは、全ての気持ちを物語っていたので察するのは誰でも出来たと思う。
また昨日のように一人突っ走って周りを巻き込むのかと思ったら、1日経っただけなのに少し落ち着いて考えられるようになっていた。

『子供の成長は速いものだな…』

その短期間での成長は、非常に感慨深かった。
だが、ニュールは気付いた。

『オレ、こいつと一昨日会ったばかりだし、ましてや親じゃない!そもそもオレ結婚してないし、妙齢のお嬢さんとは出会いさえ無い!!』

少し気が抜けてる状況なのか疲れが出ているのか誤作動を起こしているように思考が暴走していた。
ニュールが妙な考えに苛まれている中、フレイも小さく悪巧む。

「うん! どうせなら、天輝石だけじゃなくて地輝石も探して、この世にある魔輝石全部探しに行くって最高かも!!」

「調子に乗るな!」

頭の中で考えていたつもりだったが浅はかにも全部口に出していた。
それを聞いたニュールは、拳骨と共にその意見を却下した。

『仮にも王族に拳固を食らわすニュールってどうなの?!』

ガツンと入ったその鉄拳はあまりにもジワジワした痛みを引き起こしたので、プンスカと頬を膨らませてみた。
だが、些末なことは一瞬で消えるぐらいの希望が目の前に提示された。
天輝石を探しに行ける可能性と言う希望は、フレイを最高にワクワクさせるのだった。



「貴女は、貴女の居ない世界を夢想した事がありますか…?」

フレイが母親から掛けられた、覚えている最後の言葉。全く真意の分からない言葉だった。

選任の儀の翌日昼過ぎ、フレイは久々に第六王女フレイリアル・レクス・リトスになっていた。
フレイはニュールと話し合って希望する行き先を決めたが、正式に申し入れる前の事前許可を得るため、王への謁見を申し込んだのだ。
面倒くさいが順番を間違えると全てを潰されてしまうかもしれないので、フレイにしてはかなり慎重だった。

謁見の間で跪き頭垂れ、王と王妃の入室を待つ。暫くすると、並び揃い腕を組みゆるりと御二人が入室された。
久方ぶりに対面した王は、以前同様に気だるげで全てを捨ててしまっている様子であった。
王妃も相変わらず何を考えているかわからなかった。

『何も変わっていない…』

フレイは無感情になっていく自分を感じた。


最後にフレイリアルが直接会ったのは3年前。


それまでは曲がりなりにも親子であり、毎年の誕生日に食事を共にする機会ぐらいはあった。
ただ当たり障りの無い笑顔でお互いに対応し、王と王妃が異端の色合い持つ王女を見捨ててないと言う事を世間に流布するためだけの催しだった。
そして、3年前に最後に掛けられた言葉があの真意の分からない言葉だった。

『確か、賢者の塔や大賢者についての話で、リーシェに対して言われた事に反論したら出てきた言葉だった気がする…』

フレイはそんなことを考えながら、正式な対面を行っていた。

『さあっ、集中しないとっ! コレを完遂しないと脱出出来ないんだから』

フレイリアルは気合いを入れ直した。

「この度は陛下より拝謁のお許しを頂き、私ども恐悦至極にございます」

とりあえず合ってるかは今ひとつ分からないけど、咬まずに言えてホッとした。
今回の用件はニュールの紹介と使節としてサルトゥスに赴きたいと伝える事。

「この者が、選任の儀にて正式に任命していただいた守護者ニュールになります。私に連れ立ちお目汚しすることもあると思いますがご容赦ください」

息つく間もなくフレイは述べきった。

「…守護者が決定して何よりじゃ」

フレイの言葉に答える王は、多少は本当の気持ちが入ってるかのように何度か頷いた。

横に控える王妃は、顔を伏せフレイリアルの背後に控えるニュールを見定めるように視線鋭く射ぬく。

「この度私はサルトゥスへの使節として赴くことを希望し、申し出たいと思います。不調法者ですが申し出る事へのお許しを頂きに参りました」

サルトゥスを希望したのはニュールに不都合がなく、フレイにも興味のある地だったからだ。
王と王妃はフレイにとって両親…とはなっているが、会ったことがあるのは指折り数える程度。フレイには特別な会話もせずいきなり本題へ突入するしか手立てが無かった。

ニュールがフレイの斜め後ろで跪ずく体勢は崩さず、頭に疑問符を浮かべ待ったをかけるような視線を密かに送ってくる。

『…でも話すこと無いもん…』

少しだけ振り返り不満げな視線をニュールに返していると、今まで黙っていた王妃が口を開く。

「サルトゥスですか? …貴女の守護者はヴェステにご縁のある方のようですが、そちらの方がよろしいのでは無くて?」

フレイの色が混ざる瞳を持つ王妃は鮮やかに微笑みながら、一点集中で嫌なところを突いてきた。

「…私は、私の持つ色の起源を知りたいのです…」

フレイの言葉は、王妃が語るための口と怪しく浮かべる笑みを無に帰した。
それに気付いた王が話を受け取り返事を返す。

「今回、国内での諸事情があったため、使節として赴く国々に連絡を取り確認を行った。少し猶予や条件を変える国もあった。だが、戦い残りし継承権持つお前が留学として長期間国を離れ赴くことは許されぬ。しかし、使節として短期で赴くことは構わぬだろう」

フレイは、この機会に継承権など棄ててしまいたかったのだが話はそう都合良くは進まなかった。

「ヴェステだけは、もう受け入れ準備が出来ているとの事で留学すること前提で来て欲しいそうなのですよ…」

王妃が謎の笑みを浮かべ微笑む。

『引き時だ…』

ニュールはこの一連のやり取りを見て思った。
フレイも斜め後ろに控えるニュールへ視線を送った時、同じ思いを抱いたようで余計なことは述べず円滑にその場を辞す方向へ進んだ。
王が最後にニュールへ声をかける。

「頼んだぞ」

そこには親の思いがあった様にも…見えた。



大賢者様に対面したときもそうだったが、ニュールはこういう対応は苦手だった。

「お前の相手をするのは構わんが、尊き方々のお相手は御免被りたいぞ…」

「本当だね、激しく同意しちゃうよ…」

「いやいやっ、お前が引いてどうするんだよ!」

「いいじゃん、ニュールみたいに年食ってる方が重みがあって対等に話せるよ!」

謁見が終わり、済んだ事はドウデモ良いとスッキリした顔で微笑むフレイ。

『オレは26歳! 、47歳に見えても26歳! お前より経験値は高いが、まだまだペーペーな小僧なんだよ! 権謀術数うごめく魑魅魍魎の住み着く老獪な世界は苦手なんだよ!』

心の中で大声で叫び反論するが、何だか納得いかないニュールであった。



次は大賢者様への報告に行かなければならなかった。
22層・青の間へ、大賢者様から御招待という名の呼び出しがあった。

「えっ、オレも行くのか?」

「うん。ニュールも一緒にってリーシェから伝達が有ったんだって。管理者の人が言ってたよ」

「尊き御方の相手は遠慮したいって言ったぞ…」

「リーシェだから良いじゃん!」

「…」

この気の重さは理解してもらえないようだ。

『まるで噂に聞く、嫁さんもらいに相手の家に挨拶に行くやつ…みたいだ。…ってオレ結婚予定無いのに…このガキじゃ程遠いし、まだあのガキの方が…』

ニュールはまたいつもの年齢・嫁なしネタに自ら落ちに行ったが、更にその先のオソロシイ罠…に嵌まり掛けている自分に驚いた。

「オレは普通。お姉ちゃんの方が好き。オレは普通。御子様は御子様…」

呪文のように唱えるのが、暫く自身の流行になりそうなニュールだった。
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