魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第五章 ヴェステ王国編

11.潜り動く

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転移した先の転移陣…ヴェステの賢者の塔は砂の中だった。
陣のある階層は完全に砂の中に埋もれていた。

転移した瞬間、ニュールが防御結界築き空間を維持し、近くにいた魔物を強制支配してその目を使い地上に終点作り再度転移して大砂原へ表出する。
ニュールが砂しかない足下を蹴りながら言う。

「ここの上物は相当昔に崩れちまったんだな」

ミーティが塔自体の状況も心配する。

「これじゃあ、その下も入れないんじゃない?」

「それはまだ分からない。探索魔力は外からだと弾かれちまうから中に入らせて探る…」

そう言った瞬間、足下2メル程横の砂が4分の1メル程沈み小柄な大岩蛇グロッタウが現れた。小さいとは言え魔物蛇、一瞬でミーティは警戒し飛び退く。
だが、ニュールと、横に絡みつくモーイは意に介さず立っていた。その小柄な魔物蛇はニュールの前に行き緩くとぐろを巻き動きを止める。
暫しその体制をとった後、鎌首もたげると硝子目玉を煌めかせ再び砂に戻っていった。

「1つ時くらいはかかるだろう。丁度良いからピオの指導でも受けておけ」

「はい?」

その言葉で前に出てきた隠者Ⅸ…ピオが、ミーティの首根っこを捕まえ50メル程引きずって行く。

「さぁ、お勉強の時間です…我が君のご指示に従い貴方を鍛えて差し上げます」

そこから鬼畜で魔物の如き教官による、血反吐はき死線さ迷う訓練が始まった。

「時間が限られているようですから少し激しく鍛えさせていただきますね」

そして早速ミーティの腹に一撃打ち込む。

「まずは貴方の素敵な筋肉がズタボロになるくらい、魔力体術で攻撃させて頂きます。あっ、実践的な方が良いと思いますので、ナイフぐらいは使います。ですから先程の様に防御結界は忘れないで下さいね…一瞬で死んじゃいますよ」

残忍な愉悦含む笑み浮かべ、訓練内容を告げる。それからひたすら打ち込み用の砂袋の様に打ち込まれた。

「ほぉ面白い、確かに強気の発言するだけあって前回手合わせした時と反応速度が違いますねぇ…謎です」

前回の手合わせと比較して感想述べ、浮かび上がる謎に興味を示す。

「容赦無く殺しに来るから必死なんだよ!」

「おやっ、まだまだ十分に容赦しているんですがね…此の優しさに気付いて貰えないとは寂しいです」

そう言いつつ情け容赦無いように思える攻撃を操りだす。
ミーティはギリギリで首に当たるナイフを交わし、防御結界築き足に魔力纏い飛び退く。回避は出来ていると思うけど全く手が出せない。

『確かに手加減なしならとっくに殺られてる…かな』

悔しい思いを胸に抱きつつもミーティは死力を尽くすべく立ち上がる。
…だが他にも何だか悔しいモノが目に入る。

訓練を受け始めてから四半時程になるのだが、その間ずっと…イチャツイテいる。

視界にモーイとニュールが入るたび、モーイがニュールに全身で絡み付いている。そして、ニュールの全身を撫でさすりつつ、頬を上気させ蕩ける様な表情で唇に吸い付き口内絡めとっている。
その姿を目にした者の方が罪悪感覚えるような妖艶さで口付け続ける。そんなモーイの色っぽい表情に当てられてドキドキと熱くなるミーティ。

王宮に行く途中でも度々その状態だったのでニュールに尋ねた。

「モーイは、ほぼ人形なんだろ? ニュールの意思で動くんだったら…それ遣らせてんのか?」

「普段の行動は管理してない、これが生き残る本能か思考の残滓か何なのかは解らん」

そう言っている間にも、ニュールが制止しない限り人形のモーイは纏い付き唇を貪る。
ニュールは全く表情を変えず、まるで助けが遅れてしまった事への罪滅ぼしでも有るかの様にひたすら受け入れていた。

ヴェステの塔内部を確認中、ミーティがピオに訓練されている間もニュールが座る膝に乗りモーイは絡み付いている。
思わずミーティの視線が向かってしまう。

「随分と余裕ですね…そうですね、言われた時間も残すところ半分ですし難易度をもう少し上げますか」

そう言ってピオはミーティを弄ぶように半殺しにした。
表面は切り刻むように…内は肉筋つぶれるように…。
何とか一応加減はしてあるようだった。
言っていた時が過ぎ、塔の調査結果が出たのか歩み寄るニュール。それを見てピオが手を止める。
近くまで来たニュールにピオが声を掛ける。

「少しやり過ぎたでしょうか?」

「いやっ、構わん。手間をかけて済まんな」

ニュールの労いの言葉に隠者Ⅸ…ピオは身悶えせんばかりの恍惚とした表情で跪く。

「お役に立てたのなら僥倖であります」

砂の上に横たわるミーティも、近付いて来たニュールが横に立っているのは分かったが全く動けない。意識も朦朧としていて、内臓が少しやられてそうな気がした。

ニュールはモーイを制止し離す。そしてミーティに向き合い丁寧に抱き起こし…徐に顔を近付け…口付けた。
2度目にニュールから貰った口付けは、半分意識有る中での事だった。
深く力強く魔力巡る口付けが降り注ぎ、ミーティに輝きを与え脳天から蕩けさせていく。芯から痺れるような感覚は離れがたく、モーイの気持ちが分かってしまった。
生命の根幹から甦らせる力強い魔力を自身の中から導き出され、癒されていく。
途中からはモーイ同様…自分から貪るように求めていた。

「…っおい、もう十分回復した筈だ」

そう声を掛け、ニュールを欲し離れないミーティを制止する。
そして独り言のように実験的試みで行った過程と起きた結果を呟き考察する。

「…血でなくとも此れ位ならいけるか、寧ろ魔力巡らす方が効果的か…」

ニュールに制御され、少しずつ正気に返るミーティ。
ニュールの口付けと魔力は王宮で魔石部屋へ入ったとき以上の回復力だった。先程まで中々の重症だったミーティが、ほぼ痛みなく立ち上がっていた。
横にいたピオが驚嘆の表情浮かべた後、横に立つミーティの足に蹴りを入れ近寄り呟く。

「貴方が我が君に、接吻求め襲い掛かるのは不快です。そんなに欲が収まらないなら僕がお相手をしますよ」

そう言い背中を絶妙な感触で撫でるピオの手と言葉は、ミーティを別の意味でも心胆寒からしめるのであった。


「転移陣で導かれた3層は砂で埋もれているが、その先は崩れる事なく存在している様だ」

ニュールが大岩蛇の目で確認した事を教えてくれた。
そして塔に潜入した魔物を使い地点登録を行い、18層へ飛んだ。

「特に皆問題無いな」

ニュールの確認に皆無言で頷く。
ここの塔も魔石を惜し気なく使っている…と言うより岩盤に存在する魔石の中に塔が出来上がっている様な造りだった。

「やっぱり地下に存在する系統の塔の方が魔力が浸み込んでいる感じがする…地下故か…建造されたのが古いのか…」

塔の魔石との一体感…タラッサの塔にも感じた感覚だとニュールは思った。
タラッサは主の存在する塔であり、詳しく探れなかったので新しい発見をする事は出来なかった。

ヴェステの塔の壁を作り上げているのは柘榴魔石であり、魔力蠢き魔石の内側から赤黒く輝いている。
魔力強まるのを感じながら下へ降りて行く。
22層に入る。中心に地輝石と思われる赤く重々しく輝く魔石があった。
この塔に賢者の石は存在しなかった…なのに、部屋全体の魔石や地輝石から程々の強さ持つ魔力の放出を感じられる。
通常、賢者の石が残る塔であっても、白の塔と同様で魔力補充しなければ枯渇してしまう状態のはずだった。
気になる状態ではあるが引き続き部屋を調べる。

「ニュールは何か探してるのか?」

ミーティは気になりニュールにそのまま聞いた。

「あぁ、人の出入りの無かった此処の塔なら残っているかもしれないと思ってな」

「何が?」

「文書による記録…彼方より及ぼす力や扉について書かれたもの。人間は記録を重ねる習性がある様だからな」

この会話ににピオが反応する。

「天空の天輝石の名残り持つ魔石と一緒に、プラーデラの王城地下にはプラーデラの賢者の塔から運ばれた様々な文献がありました…その時、多少ヴェステへ石と共に送りました」

その言葉にニュールが問う。

「その中に歴史について書かれた文献はあったか?」

「ざっと見て送ったので詳細は把握してません」

そう言って少し悄気るピオに迂闊なミーティが思ったままを言ってしまう。

「使っかえねぇ~なぁ」

その手短な言葉はピオの冷静な怒りを買い、再び脛に蹴りを食らう。今度は悶絶するぐらいの強さの痛みにて…。
余計な言葉を不用意に吐いたミーティの自業自得である。

皆で文献など探しながら見て回っていると其れは突然やってきた。

何かが煌めき周囲を振動させながら押し寄せてくる感覚。
サルトゥスの鉱山で浴びたものと同じ…地輝が溢れだす感覚だった。

地輝の力強く輝く魔力を浴びる。
鮮烈な赤い魔力として襲い来る。
大量の魔力の粒が押し寄せ、それぞれ回転しながら飛び交う。魔石で出来た壁に当たると魔力を放出しながら跳ね返り、それを繰り返し小さくなり、大きくなり踊るように飛び回り加速する。
一定の時間と共に回転は徐々に緩くなり上空へと…溢れ出してきた地下へと…広がり還っていく。

ミーティとピオがその魔力を浴び不思議そうな顔をしていた。
2度目の地輝との遭遇になるミーティであるが、自身が問題なくソレを遣り過している事に驚く。そしてピオは初めてのソノ感覚に酔いしれていた。

モーイはニュールと繋がり持ち問題ないのは分かっていたが、ミーティとピオも問題なく魔力吸収行い地輝を遣り過ごせた事にニュールは安堵した。

『…安堵??』

なぜ安堵が起きたのか一瞬分からなかった。
その後遅れて、仲間が無事であることに安堵したのだと気付く。
ニュール自身の中にある均衡が危うくなってきていることに気付き始める。

『大量の魔力はオレを保てなくなりそうだ…そして俺が喜んでいる』

ニュールは自身の中の感覚に驚くのであった。
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