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第五章 ヴェステ王国編
おまけ3 フレイリアルが目指す場所 6
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中途半端になっていた往古の水の機構からの切り離しと、新たな機構となる魔法陣の施行を完成まで導くための魔力操作を再開する。
まず先に凝集させた空間魔石を、導き出した魔力で線状にし設計図に沿い結晶構造に呼応する形に大まかに描き出すしていく。そこから少しずつ複雑な魔法陣へ成長させ、空中に浮かび上がらせ少しずつ完成へと向かっていく。
『良い感じに出来上がってきたね。フレイ上手だよ…』
リーシェライルはそう言うと、誉められ少し照れた様に笑むフレイリアルの手を魔力で支える。そして指を絡ませる様に、仕上げに導くための魔力を注ぎ込んでいく。
細部に気を配り慎重に魔石動かす微細な感覚を合わせ、集中して伴に緻密で大きな魔法陣を仕上げていく。
築き上げた魔法陣の力を、地下の往古の機構に流し込んでいる魔力の流れに繋ぎ…地中の奥深く、魔力豊富な場所へと流し接続する。
新たなる流れを持つ機構が完成した瞬間、激しい輝きを放ち魔力供給する拠点が動き出した。
「無事出来上がったね…」
嬉しそうに微笑むフレイに重ねた魔力で作り上げた手のひらを、しっかりとリーシェライルは再度握りしめる。
『フレイが頑張ったからね』
そしてフレイリアルが瞑る瞼の下…意識下で、全ての思いを繋げる様な口付けがリーシェライルによって捧げられる。そして実態なきリーシェライルが持つ熱が、現実の感覚へも思いとなり伝わる。
ブルグドレフは今回、幸運にも両方の陣の組み換えの全てを見守る機会を持てた。
そのフレイリアルの人間離れした技に恐怖を覚えつつも、自身が内包者となり賢者を目指した時を思い出す。
大魔力使いこなす操作技術持つことへの憧れがあったことを…。
ブルグドレフが生まれ育った境界門近辺は、王都はずれだが樹海が近いため荒れ地部分よりも魔力の巡りが多い。その為、王城内のように比較的内包者の多い場所ではあった。
だか、水晶魔石ぐらいまでの内包者は多かったが、それ以上の魔石内包する者は少なかった。
賢者の塔に入ってからも、ブルグドレフが内包した蒼玉魔石を内に持つ者は少なかった。少なくとも同期には存在しなかったし、上位継承権持つ王族にも居なかった。
そのため、有望でも有力…とまでは言えない家の者にとっては風当りが強くなる原因でしかなかった。
過剰な期待と嫉妬渦巻く環境に身を置いたため、表立たず無気力に過ごし自分の興味持てるモノ以外には反応示さない自分が出来上がった。
『あぁ…水準は雲泥の差があるかもしれないけど、あの疎外感と一緒なんだよな…』
自分がフレイリアルに対して抱いた、自分を追い落とす者への恐怖や羨望の眼差し…かつて自分も類似した感情を向けられ、居心地悪くした他人の勝手な思いだった。
地下の機構から地上の瓦礫の中の四阿に再び立った時、フレイリアルは疲労困憊…フラつくのを気力で我慢していると言った状態だった。
「すみません…状態を改善して頂き有難うございました」
ブルグドレフは作業終わり地上に戻り、四阿ある場所から出ようとしたフレイリアルに手を差し出し声を掛けた。
その場所で何がなされたのか理解する能力を、ブルグドレフは持っていた。フレイリアルが往古の機構に代わる、新たに作り直した魔法陣を目にし驚嘆した。
そして、自分がフレイリアルに向けてしまった忌むべき思いへの反省も伝える。
「私の愚かさを謝罪させてください…」
ブルグドレフは気持ちを込めて伝えた。
「あまり気にしないで下さい…慣れてますから」
疲れからの取り繕った笑みではあるが、嫌味でも何でもない心からのフレイリアルの許しにブルグドレフの申し訳なさが倍増する。
ブルグドレフが心重くなった状態から次の言葉を継げずにいる時、足元に突然揺らぎが生じた。いまだに大地創造魔法陣の反動による大地の揺れが時々地上の生物を嘲笑いながら試す。
瓦礫積み上がる場所で作られていた四阿は、この揺れが最後のひと押しとなったのであろう…簡単に崩れた。
四阿の中心部にある陣は物理にも対応した防御結界陣に守られていたが、周囲は範囲外だった。
結界で弾かれた瓦礫が飛び散り、陣から一歩踏み出していた2人を襲う。
咄嗟にフレイリアルに覆い被さり庇ったブルグドレフは、フレイリアルが一瞬で導き出した体内魔石の魔力による防御結界で守られていた。
だが、フレイリアルは疲労が極限に達したのか、其処で意識を失ってしまった。
「フレイ様、大丈夫ですか! フレイ様、フレイ!」
『いきなり倒れたが呼吸も正常だし、物理的な怪我もないはず…問題は無さそうだが…』
賢者の塔でも大魔力扱った後に倒れる賢者は多かったので、抱きかかえ危険少なそうな座れる場所へ移動する。
瓦礫の上に寝かせる訳にもいかないので、ブルグドレフはフレイリアルを抱えたまま腰を下ろし、スッポリと腕に納まる少女を間近で見つめる。
『…あの大魔力動かす事で負荷がかかっていた所に今の防御結界が追い打ちとなって体力的に限界を迎えた…と言った所か…この先、此の王女は王や周囲の者達に抗えるのであろうか…』
色々と酷く心配になる。
ブルグドレフは自分が何故こんなにも今日会ったばかりの者に心配ろうとしているのか検討もつかない。
だが、フレイリアルの顔にかかる髪を指ではらってやりながら、無意識に呟いた言葉に答えが入っていた。
「…愛しい」
自身の口から出た言葉に驚きつつも、膝の上で抱き抱えていたフレイリアルの身体を思わず抱き締めてしまう…。
刹那、背後に冷たい空気が走り、痛み伴う刺し貫くような風が背後から襲うと共に音を作る。
「うっ…っ」
「もし僕のお人形にでもなると言うのなら…近くに立つくらいは許してあげても良いけど、今の君程度じゃあ其れ以上触れることは絶対に許せないな…」
呻き声漏らすブルグドレフの直近で極寒で冷酷な囁きが聞こえた。其の声や口調は、ブルグドレフも過去に何度か賢者の塔で耳にしたことのある前大賢者のモノだった。
「先代…大賢者リーシェライル様は…賢者の石の中に…次代へ継承されたと…」
ブルグドレフは上位の賢者達に箝口令敷かれる賢者の塔の中から、短期間で情報集め推測し真実に辿り着く程度には優秀ではあった。
そして大賢者が記憶を継承する事も知っていたが、大賢者の中に内在する者がある…と言う事については知らなかった。
それは、王と一部の側近だけに受け継がれる機密事項の1つであった。
リーシェライルが導き出した魔力がブルグドレフを拘束する。動けないブルグドレフは更にナイフを押し当てられてるかのような鋭く冷たいモノを喉元に突き付けられる。
口に湧き上がるモノを飲み込む動作だけで突き刺さりそうだったが、幸い恐怖で昂り…口の中はカラカラだった。
「賢者の石が継承されるって言うのは、その者の中で息づくこと。彼女の中に立ち入れるのは僕だけ…彼女の中に永遠に入り、魂まで溶け込み混ざり会えるのは僕だけに許される特権なんだ…」
甘い声で容赦無く背中から殺意纏う言葉をブルグドレフへと注ぎ、心さえも恐怖で縛り上げる。
「だから、彼女を手に入れる者には僕ごと愛せる器量が無いとね。君には難しそうだけど、エリミアにいる間は役立ててあげても良いか考え中だから不用意な行動はとらないでね…ふふふふっ」
笑い声と共に気配と声が消えていった。
まさしく恐怖体験だった。
すっかり肝を冷やし、憑き物が落ちた様な気分になった。ブルグドレフはフレイリアルが意識を取り戻すのを、怯えながらも…何か別のモノがついた様に少し興奮しながら…だけど従順な態度で待つ。
ブルグドレフにとって此の様々な体験は、殻を破り自分の持つ思いをむき出しにする切っ掛けとなった。
意識失い内に沈み落ちたフレイリアルは、リーシェライルの一部始終の会話が聞こえていた。意識戻した時に第一声でブルグドレフに伝えたのは謝罪の言葉だった。
「色々と、申し訳ないです…」
「ふふっ…ああ、気にしないで下さい」
その表情と声の中には既に妬みも恐怖も無く、なにか面白い事でも有ったかのように微笑んでいた。
「…ブルグドレフさん?」
フレイリアルは一瞬、恐怖で通常の対応取れなくなったのかと思いブルグドレフを気遣う。
「すみません。別に恐怖でおかしくなったわけではないですよ」
「では…いったい?」
「…んー、貴方達に親近感覚えた…とでも言うのでしょうか。確かに先代大賢者様の殺気は死の恐怖を生むのですが、貴女に向けた愛情に溢れていると言うか…とても興味が湧き面白くなった…と言うのが正直な所でしょうか…」
今度はあんぐりと口を開けるのはフレイリアルだった。
「私はずっと自身を満たす面白いことを求めていたのです。なので恐怖をも含めて…これ程に興味深くそそられる人達に出会ったのは初めてなのです。王の傀儡となるより面白そうです」
どう考えてもフレイリアルに聞こえた話の内容は、リーシェライルが恐喝しているようにしか聞こえなかったのに、ブルグドレフの受け止め方は異様…とも言えた。
「そして貴女自身に…新たに生まれた大賢者様への興味が止まない…とでも申しましょうか…」
フレイリアルは、少しゾワリッとするような寒気を覚える。普通だと思っていた人のたががはずれて、見てはいけない狂気を発見し驚いた…と言う気持ちになっていた。
「それに私を留め置けば、貴女にとっても先代様にとってもお得ですよ」
ごく普通の…好ましい友人への態度…のような、温かさの入る声音で気安い感じで告げられた。
有難い事であると思いながらも、此の短い時間の中でブルグドレフが全くの別人になったかのような違和感を得た。
被っていた仮面が剥がれた…と言うよりは人格が変貌したと感じるぐらいの変化。
『…また巫女の繋がりが悪影響及ぼしてしまったのかな』
心の中に湧き上がる不安が広がり気持ちが沈む。
その漠然とした思いに、リーシェライルが意識下で答えを返す。
『大丈夫だよ。そいつは元々、恐怖をも喜びに変えてしまうような変な奴みたいだから心配しないで』
フレイリアルにブルグドレフを脅した事を悟られ、咎められない様に意識の表層から隠れていたリーシェライルが戻り告げる。
『僕は少しぐらい壊れた奴の方が扱いやすいから、最初より今の方が好印象かな…』
一旦はブルグドレフへの怒りを顕にしたリーシェライルだが、変貌を遂げ本質が明らかになり気持ちが変わる。
『なら協力者としてお願いする?』
フレイリアル少し不安そうなまま、意識下でリーシェライルに問いかける。
『そうだね。早く終わらせたいからね! フレイはいつでも僕が守るから大丈夫だよ』
頼もしいリーシェライルの思いにフレイリアルは決断して声に出す。
「ブルグドレフさんが良ければ、私達の協力者になって下さい」
「喜んで!」
内容も…利点も聞かずに、本能で答えるブルグドレフ。
今まで計算で求めていた面白さを、本能に委ねてみることにする。
進む道は定まり協力者も得た。
色々な煩わしさから解放されるためにも、フレイリアルは自分が定めた目標達成を目指し、新たな1歩を踏み出すのだった。
まず先に凝集させた空間魔石を、導き出した魔力で線状にし設計図に沿い結晶構造に呼応する形に大まかに描き出すしていく。そこから少しずつ複雑な魔法陣へ成長させ、空中に浮かび上がらせ少しずつ完成へと向かっていく。
『良い感じに出来上がってきたね。フレイ上手だよ…』
リーシェライルはそう言うと、誉められ少し照れた様に笑むフレイリアルの手を魔力で支える。そして指を絡ませる様に、仕上げに導くための魔力を注ぎ込んでいく。
細部に気を配り慎重に魔石動かす微細な感覚を合わせ、集中して伴に緻密で大きな魔法陣を仕上げていく。
築き上げた魔法陣の力を、地下の往古の機構に流し込んでいる魔力の流れに繋ぎ…地中の奥深く、魔力豊富な場所へと流し接続する。
新たなる流れを持つ機構が完成した瞬間、激しい輝きを放ち魔力供給する拠点が動き出した。
「無事出来上がったね…」
嬉しそうに微笑むフレイに重ねた魔力で作り上げた手のひらを、しっかりとリーシェライルは再度握りしめる。
『フレイが頑張ったからね』
そしてフレイリアルが瞑る瞼の下…意識下で、全ての思いを繋げる様な口付けがリーシェライルによって捧げられる。そして実態なきリーシェライルが持つ熱が、現実の感覚へも思いとなり伝わる。
ブルグドレフは今回、幸運にも両方の陣の組み換えの全てを見守る機会を持てた。
そのフレイリアルの人間離れした技に恐怖を覚えつつも、自身が内包者となり賢者を目指した時を思い出す。
大魔力使いこなす操作技術持つことへの憧れがあったことを…。
ブルグドレフが生まれ育った境界門近辺は、王都はずれだが樹海が近いため荒れ地部分よりも魔力の巡りが多い。その為、王城内のように比較的内包者の多い場所ではあった。
だか、水晶魔石ぐらいまでの内包者は多かったが、それ以上の魔石内包する者は少なかった。
賢者の塔に入ってからも、ブルグドレフが内包した蒼玉魔石を内に持つ者は少なかった。少なくとも同期には存在しなかったし、上位継承権持つ王族にも居なかった。
そのため、有望でも有力…とまでは言えない家の者にとっては風当りが強くなる原因でしかなかった。
過剰な期待と嫉妬渦巻く環境に身を置いたため、表立たず無気力に過ごし自分の興味持てるモノ以外には反応示さない自分が出来上がった。
『あぁ…水準は雲泥の差があるかもしれないけど、あの疎外感と一緒なんだよな…』
自分がフレイリアルに対して抱いた、自分を追い落とす者への恐怖や羨望の眼差し…かつて自分も類似した感情を向けられ、居心地悪くした他人の勝手な思いだった。
地下の機構から地上の瓦礫の中の四阿に再び立った時、フレイリアルは疲労困憊…フラつくのを気力で我慢していると言った状態だった。
「すみません…状態を改善して頂き有難うございました」
ブルグドレフは作業終わり地上に戻り、四阿ある場所から出ようとしたフレイリアルに手を差し出し声を掛けた。
その場所で何がなされたのか理解する能力を、ブルグドレフは持っていた。フレイリアルが往古の機構に代わる、新たに作り直した魔法陣を目にし驚嘆した。
そして、自分がフレイリアルに向けてしまった忌むべき思いへの反省も伝える。
「私の愚かさを謝罪させてください…」
ブルグドレフは気持ちを込めて伝えた。
「あまり気にしないで下さい…慣れてますから」
疲れからの取り繕った笑みではあるが、嫌味でも何でもない心からのフレイリアルの許しにブルグドレフの申し訳なさが倍増する。
ブルグドレフが心重くなった状態から次の言葉を継げずにいる時、足元に突然揺らぎが生じた。いまだに大地創造魔法陣の反動による大地の揺れが時々地上の生物を嘲笑いながら試す。
瓦礫積み上がる場所で作られていた四阿は、この揺れが最後のひと押しとなったのであろう…簡単に崩れた。
四阿の中心部にある陣は物理にも対応した防御結界陣に守られていたが、周囲は範囲外だった。
結界で弾かれた瓦礫が飛び散り、陣から一歩踏み出していた2人を襲う。
咄嗟にフレイリアルに覆い被さり庇ったブルグドレフは、フレイリアルが一瞬で導き出した体内魔石の魔力による防御結界で守られていた。
だが、フレイリアルは疲労が極限に達したのか、其処で意識を失ってしまった。
「フレイ様、大丈夫ですか! フレイ様、フレイ!」
『いきなり倒れたが呼吸も正常だし、物理的な怪我もないはず…問題は無さそうだが…』
賢者の塔でも大魔力扱った後に倒れる賢者は多かったので、抱きかかえ危険少なそうな座れる場所へ移動する。
瓦礫の上に寝かせる訳にもいかないので、ブルグドレフはフレイリアルを抱えたまま腰を下ろし、スッポリと腕に納まる少女を間近で見つめる。
『…あの大魔力動かす事で負荷がかかっていた所に今の防御結界が追い打ちとなって体力的に限界を迎えた…と言った所か…この先、此の王女は王や周囲の者達に抗えるのであろうか…』
色々と酷く心配になる。
ブルグドレフは自分が何故こんなにも今日会ったばかりの者に心配ろうとしているのか検討もつかない。
だが、フレイリアルの顔にかかる髪を指ではらってやりながら、無意識に呟いた言葉に答えが入っていた。
「…愛しい」
自身の口から出た言葉に驚きつつも、膝の上で抱き抱えていたフレイリアルの身体を思わず抱き締めてしまう…。
刹那、背後に冷たい空気が走り、痛み伴う刺し貫くような風が背後から襲うと共に音を作る。
「うっ…っ」
「もし僕のお人形にでもなると言うのなら…近くに立つくらいは許してあげても良いけど、今の君程度じゃあ其れ以上触れることは絶対に許せないな…」
呻き声漏らすブルグドレフの直近で極寒で冷酷な囁きが聞こえた。其の声や口調は、ブルグドレフも過去に何度か賢者の塔で耳にしたことのある前大賢者のモノだった。
「先代…大賢者リーシェライル様は…賢者の石の中に…次代へ継承されたと…」
ブルグドレフは上位の賢者達に箝口令敷かれる賢者の塔の中から、短期間で情報集め推測し真実に辿り着く程度には優秀ではあった。
そして大賢者が記憶を継承する事も知っていたが、大賢者の中に内在する者がある…と言う事については知らなかった。
それは、王と一部の側近だけに受け継がれる機密事項の1つであった。
リーシェライルが導き出した魔力がブルグドレフを拘束する。動けないブルグドレフは更にナイフを押し当てられてるかのような鋭く冷たいモノを喉元に突き付けられる。
口に湧き上がるモノを飲み込む動作だけで突き刺さりそうだったが、幸い恐怖で昂り…口の中はカラカラだった。
「賢者の石が継承されるって言うのは、その者の中で息づくこと。彼女の中に立ち入れるのは僕だけ…彼女の中に永遠に入り、魂まで溶け込み混ざり会えるのは僕だけに許される特権なんだ…」
甘い声で容赦無く背中から殺意纏う言葉をブルグドレフへと注ぎ、心さえも恐怖で縛り上げる。
「だから、彼女を手に入れる者には僕ごと愛せる器量が無いとね。君には難しそうだけど、エリミアにいる間は役立ててあげても良いか考え中だから不用意な行動はとらないでね…ふふふふっ」
笑い声と共に気配と声が消えていった。
まさしく恐怖体験だった。
すっかり肝を冷やし、憑き物が落ちた様な気分になった。ブルグドレフはフレイリアルが意識を取り戻すのを、怯えながらも…何か別のモノがついた様に少し興奮しながら…だけど従順な態度で待つ。
ブルグドレフにとって此の様々な体験は、殻を破り自分の持つ思いをむき出しにする切っ掛けとなった。
意識失い内に沈み落ちたフレイリアルは、リーシェライルの一部始終の会話が聞こえていた。意識戻した時に第一声でブルグドレフに伝えたのは謝罪の言葉だった。
「色々と、申し訳ないです…」
「ふふっ…ああ、気にしないで下さい」
その表情と声の中には既に妬みも恐怖も無く、なにか面白い事でも有ったかのように微笑んでいた。
「…ブルグドレフさん?」
フレイリアルは一瞬、恐怖で通常の対応取れなくなったのかと思いブルグドレフを気遣う。
「すみません。別に恐怖でおかしくなったわけではないですよ」
「では…いったい?」
「…んー、貴方達に親近感覚えた…とでも言うのでしょうか。確かに先代大賢者様の殺気は死の恐怖を生むのですが、貴女に向けた愛情に溢れていると言うか…とても興味が湧き面白くなった…と言うのが正直な所でしょうか…」
今度はあんぐりと口を開けるのはフレイリアルだった。
「私はずっと自身を満たす面白いことを求めていたのです。なので恐怖をも含めて…これ程に興味深くそそられる人達に出会ったのは初めてなのです。王の傀儡となるより面白そうです」
どう考えてもフレイリアルに聞こえた話の内容は、リーシェライルが恐喝しているようにしか聞こえなかったのに、ブルグドレフの受け止め方は異様…とも言えた。
「そして貴女自身に…新たに生まれた大賢者様への興味が止まない…とでも申しましょうか…」
フレイリアルは、少しゾワリッとするような寒気を覚える。普通だと思っていた人のたががはずれて、見てはいけない狂気を発見し驚いた…と言う気持ちになっていた。
「それに私を留め置けば、貴女にとっても先代様にとってもお得ですよ」
ごく普通の…好ましい友人への態度…のような、温かさの入る声音で気安い感じで告げられた。
有難い事であると思いながらも、此の短い時間の中でブルグドレフが全くの別人になったかのような違和感を得た。
被っていた仮面が剥がれた…と言うよりは人格が変貌したと感じるぐらいの変化。
『…また巫女の繋がりが悪影響及ぼしてしまったのかな』
心の中に湧き上がる不安が広がり気持ちが沈む。
その漠然とした思いに、リーシェライルが意識下で答えを返す。
『大丈夫だよ。そいつは元々、恐怖をも喜びに変えてしまうような変な奴みたいだから心配しないで』
フレイリアルにブルグドレフを脅した事を悟られ、咎められない様に意識の表層から隠れていたリーシェライルが戻り告げる。
『僕は少しぐらい壊れた奴の方が扱いやすいから、最初より今の方が好印象かな…』
一旦はブルグドレフへの怒りを顕にしたリーシェライルだが、変貌を遂げ本質が明らかになり気持ちが変わる。
『なら協力者としてお願いする?』
フレイリアル少し不安そうなまま、意識下でリーシェライルに問いかける。
『そうだね。早く終わらせたいからね! フレイはいつでも僕が守るから大丈夫だよ』
頼もしいリーシェライルの思いにフレイリアルは決断して声に出す。
「ブルグドレフさんが良ければ、私達の協力者になって下さい」
「喜んで!」
内容も…利点も聞かずに、本能で答えるブルグドレフ。
今まで計算で求めていた面白さを、本能に委ねてみることにする。
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