願いの店

夕暮 春樹

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願いの店

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帰り道に可愛い猫がいた。
猫を撫でていると満足したのか、猫は森のほうにさっていった。
猫の後ろを追いかけていってみると、森の中にポツンと建てられている古びた洋風の店にたどりついた。
気になってお店に入ってみると、さっき追いかけてきた猫も店の中にいた。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

店内を見てまわっていたら、奥から一人の男性が出てきて声をかけてきた。

「いえ、猫を追いかけてきたらたまたまここに行きついて。ここは何のお店なんですか?」
「ここは人の願いを叶えるお店です。」
「願いを叶えるお店?」

私はうまく理解できなくて聞き返した。

「はい。死んでしまった人に会いたいや友達や家族の病気を治して欲しいなど、どんな願いでも叶えます。もちろん、そのぶんの代償はありますけどね。」
「代償?」
「はい。願いを叶える代わりにその人の思い出や、寿命などの時間を支払ってもらいます。
お嬢さんは何か願いはないですか。」

聞かれた瞬間、私の中には一個の願いが出てきた。
それは、
『 親友の病気を治して欲しい 』
だった。
私の親友は不治の病で、余命一年と宣告されていた。
それが私の思い出や寿命で治るならやすいと思った。
だから私はその願いをお願いした。

「そうですか。親友の不治の病を治して欲しいですか。それなら、お嬢さんの思い出一年分か、寿命十年分のどちらかを支払っていただきます。それでも本当にいいんですね。」

私は、はいと答えて寿命十年分を支払って願いを叶えて貰った。

──────────────────

それから1週間後。
本当に親友の病気は治り退院することができた。
私は願いを叶えてくれたお礼を言いにいこうと、お店のある場所に行った。
でも、そこにはもうそのお店はなかった。
そこはただ木々が生えているただの森だった。
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