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1話

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土曜日の朝8時。
普段ならお昼近くまで寝ているけれど、今日は親友の玲奈の家に遊びに行く約束をしていたから早く起きた。

「おはようー」
「おはよう。朝ごはんは机の上に置いてあるから食べていいよ」
「うん、ありがとう」

リビングに行くと、お母さんはソファーに座ってテレビをみていた。
私は、お母さんのみているテレビを一緒にみながら、朝ごはんの置いてある机に座る。

「いただきます」

私が朝ごはんのトーストを食べようとすると、急に家の電話がなり出した。

「お母さん、電話なってるよー」

お母さんは電話に気づくと、ソファーから立ち上がって電話に出る。
電話に出ると、お母さんの表情がいつもと比べて暗くなった。
私はそんなお母さんを見て、電話の内容が気になりつつも、トーストを一口食べる。
電話が終わるとお母さんは、再びソファーに戻って大きくため息をついていた。

「どうしたの?」
「えっと、驚かないで聞いてほしいんだけどね、、、、、」

そう言うと、お母さんは少しのあいだ黙りこんだ。

「どうしたの?そんなに話せないようなことなら、別に話さなくてもいいよ」
「いや、彩衣には話さなきゃいけないことだから、、、、」

お母さんは、また少し黙りこんでから話し始めた。

「あのね、よく家に遊びに来てくれる、玲奈ちゃんっているでしょ?、、、、、」
「玲奈がどうしたの?」
「玲奈ちゃん、今朝ね死んじゃったみたいなの。自殺だって、、、、、」
「・・・・・・・・嘘でしょ・・・・」

玲奈が死んだ。
私はその言葉だけで、心に大きな穴が空いたように感じた。
玲奈が死んだ理由はなんとなくわかる。
きっとクラスでいじめられていたからだ。
それでも玲奈はいつも、『私は大丈夫だよ』、『私には彩衣がいるから大丈夫』って笑っていた。
私は玲奈のそんな言葉を聞いて、大人になっても玲奈と仲良く過ごせるんだと思っていた。
甘えていた。
玲奈の強さと優しさに、私は甘えていたんだ。
私は間違えた。馬鹿だった。
もっと早く玲奈が苦しんでいることに気づいていれば。
あの時、もっと玲奈と向き合って話していれば。
もう手遅れだってことはわかっている。
でも、どうしても後悔と、玲奈の笑った顔が脳裏によぎって涙が止まらなかった。
それから私は、自室にこもってしばらくの間泣き続けた。
家族が玲奈の家に挨拶に行く時も、私は自室から出ることはなかった。
結局、私が玲奈の家に行く勇気がつくまで1週間程かかった。
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