447 / 661
10章 海は広くて冒険いっぱい
415.可愛い子、羨ましい
いろいろありつつも、無事リュウグウ入口に着いたよ! いぇい!
そろそろログアウトしなきゃいけない時間だから、転移で第三の街のホームに戻るつもりだけどね。
船旅ものんびりして楽しかったから、また時間があったらやろうっと。ヒスイたちも楽しそうだったし。
リュウグウ入口の島に着いて、船をしまってから転移スキルを使おう──と思ったら、予想外の姿を発見した。
「……ルト?」
「うおっ!? ……なんだ、モモか」
ホッと胸を撫で下ろしてるルトの姿に首を傾げる。
なんでそんなに驚いたの?
「ルトもログインしてたんだねー? リリは?」
「ちょっと用があって来ただけ。もうすぐログアウトする。リリは来てないんじゃないか? 模試がいい感じだったお祝いに、今夜は家族で外食だって言ってたし」
「ほほぅ……ルトはどうだったの?」
「何が」
「模試」
「聞くな」
サッと目をそらされた。察し。まぁ、そういう日もあるよ!
ポンポンと足を叩いて慰めたら、「その慈愛の眼差しやめろ……」と項垂れながら文句を言われた。
ありゃりゃ、僕の優しさが傷心に追い打ちをかけちゃった?
「ここで何してたのー? というか、用って何……あ」
ルトに向けた質問に答えが返る前に、海からひょっこりと白いイルカが顔を出した。かわいー!
「イルカだ!」
「まぁ、そうだな」
「あれ? この子、敵じゃないよ?」
「俺がテイムしてるからな」
「……えっ!?」
あまりにもあっさりと言われて、聞き流しかけた。でも、ルトの言葉を頭の中で反芻してビックリする。
ルト、モンスターをテイムしたの!?
「──テイムしたなら言ってよ! 先輩テイマーとしてアドバイスくらいするのに!」
ルトの足をポスポスと叩きながら文句を言う。
すぐさま「やめろ、うぜー」と頭を叩き返されたし、白イルカ君も『え、このウサギ、マスターの敵?』とソワソワし始めたから、ちょっと離れる。
僕を攻撃しないでー。
「言うつもりだったぞ? 今度ダンジョン探索をする時」
「そっかー。ならいいや。この子とはどういう出会い?」
「海獣の卵から孵った」
「……ほわっつ?」
ぽかんと口を開ける。ルトが顎を押して閉じてくれた。ありがとう。
でも、それより、思いがけない言葉が聞こえた気がしたんだけど!? 海獣の卵が孵ったの!?
「──それこそ、すぐに教えてよー!」
「すぐに教えたところで変わんなくねぇか?」
不思議そうにしてるけど、変わるとか変わらないとかっていう問題じゃないんだよ。
僕だって海獣の卵を持ってるんだから、純粋に気になる!
ムスッと頬を膨らませてルトを見据えたら、軽い感じで「悪い悪い」と謝られた。
まぁ、許しますけどぉ。
「どういうタイミングで孵ったの?」
「ログインしたら、急にアナウンスで『海獣の卵が孵りそうです』って言われたんだよ。俺は何もしてねぇぞ」
「そうなんだ?」
むむー、そうだとすると、僕の海獣の卵がいつ孵るかはわからないなぁ。
ゲームプレイ時間は、ルトより僕の方が長いと思うんだけど、それは関係ないのかも。生まれるモンスターの種類ごとに、孵るまでの時間が違うのかな。
「こいつは白飛鯆っていう種類らしい。水・風属性で飛べるんだ」
「飛べるんだ!?」
驚きの情報が飛び出した。
ルトは「まぁ、水中の方が好きみたいだけどな」と言いながら肩をすくめる。
海獣の卵をもらった時の冷めた感じとは違い、白飛鯆に向ける眼差しには愛情が滲んでいる気がする。
やっぱり、ルトってクールを気取ってるけど、基本的に優しいよねー。
「──飛べるなら、陸上にも連れていけるね」
ルトと白イルカの組み合わせ、結構いいかも。
そんなことを思いながらニコニコと微笑んだら、ルトはニヤッと笑い、「おう」と自慢げに応じた。
「こいつに騎乗してバトルできるんだぜ? お陰で、【騎乗】スキルをゲットしたよ……それを目撃されて、友だちから騎士なんて呼ばれてる。実際、転職可能な職業に【魔剣騎士】が出てきたし」
ルトが嬉しそうに胸を張った。
ただの剣士より騎士の方が、カッコいい感じがするもんね。喜ぶポイントがルトらしい。
「白イルカに乗って戦う騎士かー……なんか可愛い!」
「ぁあ?」
想像して『ファンタジーだなー』と思って素直な感想をこぼすと、ルトに凄まれた。怖いよー。可愛いの、ダメ?
睨んでくるルトから目を逸らしたら、白飛鯆と目が合う。
「この子の名前はなぁに?」
「ビアンだよ」
「……そのままだね?」
「なんか文句あっか? つーか、お前に言われたくねぇよ」
ペシッと額を叩かれた。ぴえん。
痛くない額を擦りながら、ビアンに語りかける。
「君のマスター、暴力的だよー。一緒にいて大丈夫ー?」
「こら、俺はコイツに体罰なんてしねぇぞ?」
「キュルルン!」
ビアンがルトの言葉に楽しそうに頷く。ルトが微笑み、ビアンの口に魚を投げ入れた。
……もしかして、短時間でもログインしてたのは、餌付けするため? めっちゃ可愛がってるね!
「ビアンの鳴き声可愛い!」
「お前のあざと可愛さとは違って、本物の可愛さだな」
「さては喧嘩売ってるね???」
高くで買うぞー、とファイティングポーズをしたら、スクショを撮られた。
ルトが「掲示板に載せてやろ。『もふもふ神さまの真実の姿を激写!』ってコメと一緒に」と言いながらニヤリと笑う。
な、なんと……卑怯な脅しだね!
でも、大丈夫だもん。きっとみんな、可愛いって言ってくれるから!
……だよね、タマモ?
心の中で尋ねてみたら、タマモが満面の笑みを浮かべて、両腕で大きな丸を作る姿が見えた気がした。
さすがモフラーの第一人者!
******
番外編シリーズの方に、ルト視点の『ビアン誕生話』を公開しますー。
ぜひこちらもあわせてお楽しみくださいませ。
また、書籍版2巻の書影が公開されました。
書籍版の方もチェックしていただけますと嬉しいです!
そろそろログアウトしなきゃいけない時間だから、転移で第三の街のホームに戻るつもりだけどね。
船旅ものんびりして楽しかったから、また時間があったらやろうっと。ヒスイたちも楽しそうだったし。
リュウグウ入口の島に着いて、船をしまってから転移スキルを使おう──と思ったら、予想外の姿を発見した。
「……ルト?」
「うおっ!? ……なんだ、モモか」
ホッと胸を撫で下ろしてるルトの姿に首を傾げる。
なんでそんなに驚いたの?
「ルトもログインしてたんだねー? リリは?」
「ちょっと用があって来ただけ。もうすぐログアウトする。リリは来てないんじゃないか? 模試がいい感じだったお祝いに、今夜は家族で外食だって言ってたし」
「ほほぅ……ルトはどうだったの?」
「何が」
「模試」
「聞くな」
サッと目をそらされた。察し。まぁ、そういう日もあるよ!
ポンポンと足を叩いて慰めたら、「その慈愛の眼差しやめろ……」と項垂れながら文句を言われた。
ありゃりゃ、僕の優しさが傷心に追い打ちをかけちゃった?
「ここで何してたのー? というか、用って何……あ」
ルトに向けた質問に答えが返る前に、海からひょっこりと白いイルカが顔を出した。かわいー!
「イルカだ!」
「まぁ、そうだな」
「あれ? この子、敵じゃないよ?」
「俺がテイムしてるからな」
「……えっ!?」
あまりにもあっさりと言われて、聞き流しかけた。でも、ルトの言葉を頭の中で反芻してビックリする。
ルト、モンスターをテイムしたの!?
「──テイムしたなら言ってよ! 先輩テイマーとしてアドバイスくらいするのに!」
ルトの足をポスポスと叩きながら文句を言う。
すぐさま「やめろ、うぜー」と頭を叩き返されたし、白イルカ君も『え、このウサギ、マスターの敵?』とソワソワし始めたから、ちょっと離れる。
僕を攻撃しないでー。
「言うつもりだったぞ? 今度ダンジョン探索をする時」
「そっかー。ならいいや。この子とはどういう出会い?」
「海獣の卵から孵った」
「……ほわっつ?」
ぽかんと口を開ける。ルトが顎を押して閉じてくれた。ありがとう。
でも、それより、思いがけない言葉が聞こえた気がしたんだけど!? 海獣の卵が孵ったの!?
「──それこそ、すぐに教えてよー!」
「すぐに教えたところで変わんなくねぇか?」
不思議そうにしてるけど、変わるとか変わらないとかっていう問題じゃないんだよ。
僕だって海獣の卵を持ってるんだから、純粋に気になる!
ムスッと頬を膨らませてルトを見据えたら、軽い感じで「悪い悪い」と謝られた。
まぁ、許しますけどぉ。
「どういうタイミングで孵ったの?」
「ログインしたら、急にアナウンスで『海獣の卵が孵りそうです』って言われたんだよ。俺は何もしてねぇぞ」
「そうなんだ?」
むむー、そうだとすると、僕の海獣の卵がいつ孵るかはわからないなぁ。
ゲームプレイ時間は、ルトより僕の方が長いと思うんだけど、それは関係ないのかも。生まれるモンスターの種類ごとに、孵るまでの時間が違うのかな。
「こいつは白飛鯆っていう種類らしい。水・風属性で飛べるんだ」
「飛べるんだ!?」
驚きの情報が飛び出した。
ルトは「まぁ、水中の方が好きみたいだけどな」と言いながら肩をすくめる。
海獣の卵をもらった時の冷めた感じとは違い、白飛鯆に向ける眼差しには愛情が滲んでいる気がする。
やっぱり、ルトってクールを気取ってるけど、基本的に優しいよねー。
「──飛べるなら、陸上にも連れていけるね」
ルトと白イルカの組み合わせ、結構いいかも。
そんなことを思いながらニコニコと微笑んだら、ルトはニヤッと笑い、「おう」と自慢げに応じた。
「こいつに騎乗してバトルできるんだぜ? お陰で、【騎乗】スキルをゲットしたよ……それを目撃されて、友だちから騎士なんて呼ばれてる。実際、転職可能な職業に【魔剣騎士】が出てきたし」
ルトが嬉しそうに胸を張った。
ただの剣士より騎士の方が、カッコいい感じがするもんね。喜ぶポイントがルトらしい。
「白イルカに乗って戦う騎士かー……なんか可愛い!」
「ぁあ?」
想像して『ファンタジーだなー』と思って素直な感想をこぼすと、ルトに凄まれた。怖いよー。可愛いの、ダメ?
睨んでくるルトから目を逸らしたら、白飛鯆と目が合う。
「この子の名前はなぁに?」
「ビアンだよ」
「……そのままだね?」
「なんか文句あっか? つーか、お前に言われたくねぇよ」
ペシッと額を叩かれた。ぴえん。
痛くない額を擦りながら、ビアンに語りかける。
「君のマスター、暴力的だよー。一緒にいて大丈夫ー?」
「こら、俺はコイツに体罰なんてしねぇぞ?」
「キュルルン!」
ビアンがルトの言葉に楽しそうに頷く。ルトが微笑み、ビアンの口に魚を投げ入れた。
……もしかして、短時間でもログインしてたのは、餌付けするため? めっちゃ可愛がってるね!
「ビアンの鳴き声可愛い!」
「お前のあざと可愛さとは違って、本物の可愛さだな」
「さては喧嘩売ってるね???」
高くで買うぞー、とファイティングポーズをしたら、スクショを撮られた。
ルトが「掲示板に載せてやろ。『もふもふ神さまの真実の姿を激写!』ってコメと一緒に」と言いながらニヤリと笑う。
な、なんと……卑怯な脅しだね!
でも、大丈夫だもん。きっとみんな、可愛いって言ってくれるから!
……だよね、タマモ?
心の中で尋ねてみたら、タマモが満面の笑みを浮かべて、両腕で大きな丸を作る姿が見えた気がした。
さすがモフラーの第一人者!
******
番外編シリーズの方に、ルト視点の『ビアン誕生話』を公開しますー。
ぜひこちらもあわせてお楽しみくださいませ。
また、書籍版2巻の書影が公開されました。
書籍版の方もチェックしていただけますと嬉しいです!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします
あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】
