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ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

428.泳いでいくよ

 海中窟ダンジョンは、最初のセーフティエリアで進む道を決定しなければならないらしい。
 奥へと続く洞窟が三つ。
 ここから鑑定してみても、結果は『ダンジョン通路』という表示がされるだけだ。どれを進むのがいいんだろう?

「どーれーにーしーよーうーかーなー」

 リリが三つの洞窟を指しながら歌い始めた。いいね!
 ルトが『えぇ……そんな決め方?』と言いたげにビミョーな顔をしてるけど、僕たちはスルー。
 続きは僕が歌うよ。

「もーふーもーふーかーみーさーまーのーいーうーとーおーり!」
「ふふ、幸運なことが起きそうだね」

 歌詞を変えて歌った僕に、リリが楽しそうに微笑んだ。
 僕の幸運値がきっといい結果を運んできてくれるはずだよ。

 歌を止めたところでリリが指していたのは、真ん中の洞窟だった。
 さぁて、この先で何が待ち受けているか……楽しみだね!

「レッツゴーゴー!」
「……俺が先頭な」

 僕が意気揚々と泳ぎ始めたところで、ルトに杖を掴まれて引き戻された。

 剣士のルトは前衛をしたがる。僕も、もふもふボディの防御力が高いから、前衛をこなせると思うんだけど。
 でも、ルトと違って僕はこだわりないから、大人しく「お願いしまーす」と止まった。

「んじゃ、いつモンスターが襲ってくるかわからねぇから、ダンジョンに入ったら各自警戒は怠らないようにしてくれよ。あと、リュウグウのためにはここで入手できる【水霊魂アクアルーフ】が必要らしいから、探すのを忘れずに」
「あっ、そういえばそういう話があったね!」

 僕はポンッと手を打った。ルトに言われて重要なことを思い出したよ。

 前にリオさんがいる宮殿図書館で入手した情報によると、リュウグウの範囲が狭まっている原因は、国を囲む結界が弱まっているからだったのだ。

 その結界は、かつて海の王と呼ばれたハイエルフが作ったもの。そして、海の根源オーシアルーツというところに、水霊魂アクアルーフを捧げることで強化できるらしい。

 明確なミッションになっているわけじゃないけど、クリアできたら何かいいことが起きそう。
 それでなくとも、リュウグウに貢献するような功績があれば、王族に会えて、水精術を教えてもらえるはずで──がんばって水霊魂アクアルーフを探さないとね!

「あれ? でも、海の根源オーシアルーツの場所を知らなくない?」

 リリがふと思い出した感じで言う。
 確かに僕も聞いた覚えないなぁ。図書館でリオさんと話してた時は、他にたくさんの情報があったから、つい聞き忘れちゃってた。

 ルトも「うっかりしてたな……」と悔やんだ顔をしてる。
 まぁ、今知らなくても、改めてリオさんに聞きに行けばいいわけで、気にしなくていいと思うよ──と僕が慰めようとしたら、「あ、掲示板に情報あった」とルトにあっさり報告された。

「……調べるの早いね」

 僕の優しさがブロックされて迷子になってるぅー! なんて内心で騒ぎつつ、ルトに詳細をねだる。

「リュウグウの端にある【海の社】ってところに、リュウグウのジオラマのようなものが入った水晶玉があって、それが【海の根源オーシアルーツ】っていうらしいぞ」
「なるほど? とりあえず、その海の社っていうところに水霊魂アクアルーフを持っていけばいいってことだね」

 僕はうんうんと頷く。
 ルトが追加で「ちなみにこれ、もふもふ教掲示板情報な。モモが場所知りたがってるってカキコして、地図送ってもらった」と報告してサムズアップしたのはスルーした。

 もふもふ教の連絡網に僕の名前を出せば、あらゆる情報が簡単に集まるのでは? ちょっと怖い──なんて思ってないんだよ。本当だよ。

 ルトにフレンドチャットで地図を共有してもらった途端、マップに【海の社】という表示が増えた。
 宮殿の近くみたいだね。僕が行ったことない場所だー。

「準備万全だし、ルト、さっさと進んで」

 リリがにこやかに微笑みながら、有無を言わせない感じで促す。
 いつまでもここで喋っててもしょうがないもんねー。
 それはルトも同感のようで、肩をすくめてから真ん中の洞窟へ泳ぎ始めた。その後にリリが続く。

 僕はヒスイとペタを連れて後衛だよ。後ろから襲われるのは怖いもんね。防御力が低めなリリを守らなきゃ。

 ルトとリリが平泳ぎして進み、僕とヒスイは犬かき&羽を動かして移動する。
 ペタは一番スムーズに気持ちよさそうに泳いでいた。さすが、水属性モンスター!

「……お、雰囲気変わったな」

 洞窟に入ると、ひんやりとした水を感じる。温度だけじゃなくて、そこに敵意が混じってる感じ。
 明かりはポツポツとあるだけで、あまり視界はよくない。死角が多いから、警戒するのが大変。
 
 バトルの場って感じだなぁ。うぅ、緊張してきたー。

「第一モンスター接近!」

 大して進まない内に、ルトが索敵した結果を叫ぶ。それを受けて、全員がすぐさま戦闘態勢をとった。
 さて、最初の敵はどんな感じだろう?

「……鳥?」

 先頭にいるルトがポツリと呟く。
 遅れて敵の姿を見たリリが「羽がある魚……?」と戸惑った様子で首を傾げた。

 僕もパチパチと目を瞬く。
 現れたのは細長い魚体に、虹色の光沢がある羽を四つ持つモンスターだった。
 トビウオをちょっと鳥に近づけた、っていう説明が一番わかりやすいかも。とりあえず鑑定するよ。

――――――
羽飛魚ウィングウオ
 水属性モンスター
 四つの羽を持ち、水中を矢のように素早く移動する
 顎が固く尖っていて、敵に突き刺し毒を流し込む
――――――

 ……毒!?
 動きが素早いみたいだし、うっかり突き刺されて毒状態にされちゃうかも!

「みんな、突き刺し攻撃に注意──っ!?」

 警戒を促そうと叫んだところで、羽飛魚ウィングウオがものすごい勢いで突進してくるのが見えた。

「クッソ、向こうに有利すぎる環境、卑怯だろ!」

 突き刺されそうになったルトが、なんとか紙一重で回避し、剣を振る。でも、水の抵抗のせいで、羽飛魚ウィングウオに軽々と避けられちゃったみたいだ。

 羽飛魚ウィングウオはリリや僕たちにも襲いかかる。

「きゃっ、掠っちゃった。毒やだぁ」
「はわわっ、あ、僕も毒ー……」

 ヒスイとペタは回避できたみたいだけど、リリと僕は逃げ損ないました。もうちょっと回避スキルを鍛えておけばよかった。

 しょんぼりしながら、状態異常回復スキル【天からの光梯子アンジュレイラダー】を使うか悩む。
 すぐにまた毒状態にされちゃう気がするから、使うタイミングを考えないと。クールタイム問題があるもんなぁ。

「にゃ(モモを傷つけるなんて、この魚嫌いにゃ!)」
「くるる(天誅?)」

 気づいたら、ヒスイが怒り心頭の様子で、それにつられつつも呑気な感じのペタに飛び乗り、羽飛魚ウィングウオに突進していた。
 ペタ、泳ぐの速いねぇー。

「……え、なんで突進?」

 戸惑ったけど、羽飛魚ウィングウオが回避できない距離でヒスイが鎌鼬を放ったのを見て納得。
 至近距離からの攻撃で、ダメージ量もすごく大きくなってる。やるね、ヒスイ!

「ヒスイとペタ、さんきゅ!」

 大ダメージを負った衝撃で動きを止めた羽飛魚ウィングウオに、ルトが剣撃を飛ばして追撃した。
 羽飛魚ウィングウオは逃げることもできなかったようで、見事直撃。
 やっふー! ルト、カッコいいー!

羽飛魚ウィングウオを倒しました。報酬としてアイテム【魚の羽ウオウィング】✕4、【透明な鱗スケスケイル】✕2を入手しました〉
〈水属性モンスターを一体倒し、シーズンアイテム【白き貝殻ブランヤージュ】✕2を入手しました〉

 お、倒せたみたいだね! 素早いだけで、体力と防御力はあんまりなかったのかな?
 僕とリリはほとんど戦ってないけど……ラッキーってことにしよう。

「【天からの光梯子アンジュレイラダー】!」
「モモ、ありがとー」

 次の戦闘に移る前に、状態異常を回復させる。
 体力と魔力の継続回復スキルも使って、全快だよ。

「ヒスイとペタ、ありがとねー」

 率先して戦ってくれたヒスイたちにお礼。
 すると、ヒスイはえっへんと胸を張り、ペタはほのぼのとした感じで手を振った。

「にゃ(ヒスイは強いから、モモを守るために戦うのは当然にゃ!)」
「くるる(ボクは泳いだだけだからねー)」

 二人とも可愛い! 頼りになる!
 さすが僕の仲間だね♪

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