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11章 夏の海ではしゃいじゃお
450.神が裁きましょう
躊躇いがちなぷる君に、僕は優しく話を促すことにした。
「その理由っていうのを話してみてよ。僕はたいていのことじゃ怒らないよ?」
ぷる君に『尻に敷かれたい!』って頼まれた時に、ちょっと精神を削られただけで、大して被害はないしね。
僕がにこやかにそう告げたら、ぷる君は話す決心がついたようで、おずおずと僕を見上げながら喋り始める。
「……実は、スライムとしてゲームを始めた時、ある特殊ミッションを受けたんです」
「へぇ、どういうミッション?」
「『スライムに関係する特別な称号を持つ者を、自分の体の上に乗せてみよう!』っていう」
「……なるほどぉ」
特別な称号って、心当たりしかないな!
どう考えても、それ『スライムキングを尻に敷く』の称号でしょ。
この場で僕だけがその事実を理解して、なんとも言えない思いになった。
運営さんはなんでそんなミッションを用意したの?
「そのミッションをクリアしたら、スライムキングに進化するルートが開かれるらしいんです」
「そうなんだ!?」
初耳の情報に、僕はぎょっと目を見開く。
となると、もしかして、スラリンたちをスライムキングに進化させようと思ったら、スラリンたちの上に僕が乗ればいいってこと?
尻に敷くって言葉は嫌だったけど、スライムに乗るっていう表現なら問題ない気がする。
というか、コンサートの演出でスラリンたちの上に乗ったことがあったはずだし、スライムキングになる条件を達成してることになってるのかな。
それとも、これはプレイヤーのスライムにしか関係ない条件?
僕がちょっと考えて悩んでることに気づかず、ぷる君が話を続けた。
「特別な称号を持つ者が誰かはわからないんですけど、どうせ誰かを乗せるなら、もふもふ神さまがいいなぁって思ったんですよ」
「……そっか」
なんとも言えない思いを抱えて、とりあえず頷く。
まあ、僕は見るからに小さくて軽いしね。人を乗せるより楽だと思うよ……そういう理解でいいんだよね?
自分自身をそう納得させようとしたけど、ぷる君の話はちょっとずつ怪しくなり始めた。
「そしたら、『もふもふ神さまってお尻もモフモフなんだろうなぁ』とか『きっと誰もそこには触ったことないだろうなぁ』とか考えちゃって。『もふもふ神さまを乗せたら、僕がこの世界で初めてそのモフモフ感を体験できることになる!?』ってテンション上がって──」
「ぉぅふ……」
思わず呻く。
え、ぷる君ってやっぱり変態!?
タマモが片眉を跳ね上げるのが見えた。明らかに不機嫌そう。
うーん……気持ちはわからなくもないけど、ぷる君が可哀想だから、怒るのはやめてあげてね。
「でも、もふもふ神さまを乗せたい、なんて言うのは失礼だなって思ったので、こう、自分を下げる意味を込めて、尻に敷かれたいって言い換えて掲示板に書いて」
「ちょっとぷる君のこと理解できなくなってきたよ……」
自分を下げたいからってどうしてそうなるの!?
引いてる僕に、ぷる君が照れくさそうに「ウケ狙いだったところもちょっとあります」と言った。
それなら、わからなくもないかな。
「でも、レベリングがしんどすぎて、しばらくミッションのことは頭の隅に追いやって、すっかり忘れてたんです」
「あー、そうだよね。意味わかんないミッションだもんね。レベリングの方が大事だし」
ぷる君がさっき確認するまでミッションのことを忘れてたのは、その様子を見てたからわかってる。
僕が頷くと、ぷる君はそっと僕の下の方を指して言葉を続けた。
「けど、もふもふ神さまに会った時、お尻の方を指す矢印が見えたんです」
「……ほわっつ!?」
ちょっと耳が悪くなってたかも。最近、こんなことが多いなぁ。
──これが現実逃避だって、僕もわかってるよ。でも、そうしたくなるくらい意味がわからなかったんだもん。ちょっとくらい逃げさせて!
「その矢印を見た途端、僕は『そうだ! もふもふ神さまのお尻に敷かれたかったんだった!』って思い出して」
「そこは思い出さなくてよかったと思う……」
まずはミッションの方を思い出そう?
ぷる君の中で、ミッションに対する印象の比重が、変な方に偏っちゃってたのかなー。尻に敷かれたい、のインパクトは強いもんね……。
「その後はもふもふ神さまがご存知の通りです」
断罪を待つように、粛々と平べったくなりながらぷる君が僕を見上げる。
うーん……これ、どうしたらいいのかな?
ぷる君が原因の一端ではあるけど、そもそも運営さんが変なミッションを用意していたせいだしなぁ。
さらに言うなら、僕のお尻に矢印を向けたことは、運営さんにクレームを入れてもいいと思う! 僕のプリティなもふもふお尻に変なものを向けないで!
「もふもふ教の方で対処しましょうか?」
タマモがにこりと笑って言った。その笑顔がちょっぴり怖い感じに見えるのは、きっと僕の気のせいじゃない。
これ、タマモに任せちゃったら、『そして、その後のぷる君の姿を見た者はいない──』ってことにならない? ホラーかサスペンスな展開だよね?
そんなのはダメ! 僕がぷる君を守らなきゃ。
とはいえ、ただ「もういいよー」って許したんじゃ、ぷる君もタマモも納得しなさそうだしなぁ。
「のーせんきゅー! えっとね、ぷる君には──」
考えつつ話す。
スライムキングへの進化ルート発現の方法を教えてもらったし、多少は甘めに判断してもいいよね?
「僕には……?」
ゴクッと唾を飲んだ感じで緊張してるぷる君を、僕はじっと見下ろした。
そして、間をおいてからビシッと指差す。僕の今の気分は人情味あふれる裁判官だよ。
「しばらく、漁の成果を僕にプレゼントすることで許しましょう!」
「えっ、それでいいんですか!?」
驚いてボールのように跳ねたぷる君に、僕はにこやかに微笑みながら「うん」と頷く。
ぷる君の突然のお願いには驚いたけど、大して被害があったわけでもないし、これくらいでいいでしょ。
僕の態度を見て、タマモが不承不承な雰囲気を漂わせつつも頷いた。
「……モモさんがそうおっしゃるなら、もふもふ教は神のご判断に従います」
「なんか微妙な感じに見えるけど、わかってくれたならいいや。みんなにも伝えておいてねー」
僕とタマモの話が済むと、ぷる君が「たっくさん魚介類を獲ってきて献上しますね!」とぴょんぴょん跳ねながら主張した。
それは嬉しいなー。毎日海鮮パーティーできるし、お店に料理を並べられそうだね。
──ということで、大岡裁きならぬ、もふもふ神裁き、これにて閉幕~♪
あとは、運営さんによる修正を待つだけだね。絶対、矢印は消してもらわなきゃ!
「その理由っていうのを話してみてよ。僕はたいていのことじゃ怒らないよ?」
ぷる君に『尻に敷かれたい!』って頼まれた時に、ちょっと精神を削られただけで、大して被害はないしね。
僕がにこやかにそう告げたら、ぷる君は話す決心がついたようで、おずおずと僕を見上げながら喋り始める。
「……実は、スライムとしてゲームを始めた時、ある特殊ミッションを受けたんです」
「へぇ、どういうミッション?」
「『スライムに関係する特別な称号を持つ者を、自分の体の上に乗せてみよう!』っていう」
「……なるほどぉ」
特別な称号って、心当たりしかないな!
どう考えても、それ『スライムキングを尻に敷く』の称号でしょ。
この場で僕だけがその事実を理解して、なんとも言えない思いになった。
運営さんはなんでそんなミッションを用意したの?
「そのミッションをクリアしたら、スライムキングに進化するルートが開かれるらしいんです」
「そうなんだ!?」
初耳の情報に、僕はぎょっと目を見開く。
となると、もしかして、スラリンたちをスライムキングに進化させようと思ったら、スラリンたちの上に僕が乗ればいいってこと?
尻に敷くって言葉は嫌だったけど、スライムに乗るっていう表現なら問題ない気がする。
というか、コンサートの演出でスラリンたちの上に乗ったことがあったはずだし、スライムキングになる条件を達成してることになってるのかな。
それとも、これはプレイヤーのスライムにしか関係ない条件?
僕がちょっと考えて悩んでることに気づかず、ぷる君が話を続けた。
「特別な称号を持つ者が誰かはわからないんですけど、どうせ誰かを乗せるなら、もふもふ神さまがいいなぁって思ったんですよ」
「……そっか」
なんとも言えない思いを抱えて、とりあえず頷く。
まあ、僕は見るからに小さくて軽いしね。人を乗せるより楽だと思うよ……そういう理解でいいんだよね?
自分自身をそう納得させようとしたけど、ぷる君の話はちょっとずつ怪しくなり始めた。
「そしたら、『もふもふ神さまってお尻もモフモフなんだろうなぁ』とか『きっと誰もそこには触ったことないだろうなぁ』とか考えちゃって。『もふもふ神さまを乗せたら、僕がこの世界で初めてそのモフモフ感を体験できることになる!?』ってテンション上がって──」
「ぉぅふ……」
思わず呻く。
え、ぷる君ってやっぱり変態!?
タマモが片眉を跳ね上げるのが見えた。明らかに不機嫌そう。
うーん……気持ちはわからなくもないけど、ぷる君が可哀想だから、怒るのはやめてあげてね。
「でも、もふもふ神さまを乗せたい、なんて言うのは失礼だなって思ったので、こう、自分を下げる意味を込めて、尻に敷かれたいって言い換えて掲示板に書いて」
「ちょっとぷる君のこと理解できなくなってきたよ……」
自分を下げたいからってどうしてそうなるの!?
引いてる僕に、ぷる君が照れくさそうに「ウケ狙いだったところもちょっとあります」と言った。
それなら、わからなくもないかな。
「でも、レベリングがしんどすぎて、しばらくミッションのことは頭の隅に追いやって、すっかり忘れてたんです」
「あー、そうだよね。意味わかんないミッションだもんね。レベリングの方が大事だし」
ぷる君がさっき確認するまでミッションのことを忘れてたのは、その様子を見てたからわかってる。
僕が頷くと、ぷる君はそっと僕の下の方を指して言葉を続けた。
「けど、もふもふ神さまに会った時、お尻の方を指す矢印が見えたんです」
「……ほわっつ!?」
ちょっと耳が悪くなってたかも。最近、こんなことが多いなぁ。
──これが現実逃避だって、僕もわかってるよ。でも、そうしたくなるくらい意味がわからなかったんだもん。ちょっとくらい逃げさせて!
「その矢印を見た途端、僕は『そうだ! もふもふ神さまのお尻に敷かれたかったんだった!』って思い出して」
「そこは思い出さなくてよかったと思う……」
まずはミッションの方を思い出そう?
ぷる君の中で、ミッションに対する印象の比重が、変な方に偏っちゃってたのかなー。尻に敷かれたい、のインパクトは強いもんね……。
「その後はもふもふ神さまがご存知の通りです」
断罪を待つように、粛々と平べったくなりながらぷる君が僕を見上げる。
うーん……これ、どうしたらいいのかな?
ぷる君が原因の一端ではあるけど、そもそも運営さんが変なミッションを用意していたせいだしなぁ。
さらに言うなら、僕のお尻に矢印を向けたことは、運営さんにクレームを入れてもいいと思う! 僕のプリティなもふもふお尻に変なものを向けないで!
「もふもふ教の方で対処しましょうか?」
タマモがにこりと笑って言った。その笑顔がちょっぴり怖い感じに見えるのは、きっと僕の気のせいじゃない。
これ、タマモに任せちゃったら、『そして、その後のぷる君の姿を見た者はいない──』ってことにならない? ホラーかサスペンスな展開だよね?
そんなのはダメ! 僕がぷる君を守らなきゃ。
とはいえ、ただ「もういいよー」って許したんじゃ、ぷる君もタマモも納得しなさそうだしなぁ。
「のーせんきゅー! えっとね、ぷる君には──」
考えつつ話す。
スライムキングへの進化ルート発現の方法を教えてもらったし、多少は甘めに判断してもいいよね?
「僕には……?」
ゴクッと唾を飲んだ感じで緊張してるぷる君を、僕はじっと見下ろした。
そして、間をおいてからビシッと指差す。僕の今の気分は人情味あふれる裁判官だよ。
「しばらく、漁の成果を僕にプレゼントすることで許しましょう!」
「えっ、それでいいんですか!?」
驚いてボールのように跳ねたぷる君に、僕はにこやかに微笑みながら「うん」と頷く。
ぷる君の突然のお願いには驚いたけど、大して被害があったわけでもないし、これくらいでいいでしょ。
僕の態度を見て、タマモが不承不承な雰囲気を漂わせつつも頷いた。
「……モモさんがそうおっしゃるなら、もふもふ教は神のご判断に従います」
「なんか微妙な感じに見えるけど、わかってくれたならいいや。みんなにも伝えておいてねー」
僕とタマモの話が済むと、ぷる君が「たっくさん魚介類を獲ってきて献上しますね!」とぴょんぴょん跳ねながら主張した。
それは嬉しいなー。毎日海鮮パーティーできるし、お店に料理を並べられそうだね。
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【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】