もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

453.ワンコ(?)と飼い主(?)

 申し訳なさそうにしてる女の子に手を振ってみる。

「気にしなくていいよー。僕はモモ。ここにいるってことは、君たちはもふもふ教の一員だよね?」

 ようやくちゃんと挨拶できた。
 僕がニコニコとしてたら、怒ってないことを察した女の子がホッとした表情になる。

「はい、ずっと前から。あ、私はナディアです」
「第三陣じゃないんだ?」
「そうです。なかなかログイン時間が合わなくて、モモさんにお会いするのは初めてですが。あ、こっちの犬(?)は第三陣です」

 ナディアが犬(?)さんを指す。
 犬(?)さんはまだナディアに片手で地面に押しつけられてるから、砂浜に顔をめり込ませながらウゴウゴしてた。
 それ大丈夫? 呼吸できてる?

「えっと……そのワンちゃん(?)のお名前は?」
「ワンちゃんなんて可愛らしいものじゃないですよ。もふもふなのは間違いないですけど。名前はリコで、大変不本意ながら私のリア友でもあります」
「不本意なんだ……?」
「変人なので」

 キッパリと言い切ってるけど、友だちと言ってるんだから仲はいいんだろう。不思議な関係性だなぁ。

「──せめて、ニャンコだったなら、甘やかしてあげる可能性もあったのに……なんで変なワンコなの……!」

 ナディアがリコをジトッと見下ろしながら呟く。

 なるほど、ナディアは猫好きなのか。わかるー。ニャンコの柔らかくてもふもふした毛って気持ちいいよね!

 ……でも、ウサギも負けてないと思う。僕のこと撫でてみたらきっとウサギも好きになるよ。
 ちょっぴりニャンコに対抗意識を燃やしちゃった。

 それに、ワンコにはニャンコやウサギの愛らしさとはまた違う魅力がある。
 リコはシェパード系の顔立ちと大きめな体格が、大型犬好きな人を虜にしそう。
 ワニ系の要素も足されてるから、そういうカッコいいのが好きな人もいるんじゃないかなー。

「リコも見た目はカッコいいと思うよ?」
「この状態で、ですか……?」

 え……と引いた感じでナディアに見られた。違います。その誤解はイヤだよ!

「シェパードにワニ要素が足された見た目のこと! ナディアに押さえられてる姿は、ちょっと情けないと思うよ!」
「ですよね」
「ぴえん」

 なんか聞こえた。
 僕とスラリン、ナディアの視線がリコに向かう。

 いつの間にかリコが少し体勢を変えて顔が横向きになっていた。そして、僕たちを見上げながら、今度は「ぴえん超えてぱおん」と呟く。

「……ちょっと古くない?」

 僕もぴえんって言うことあるけど、リコが言うと、なんか古さを感じる。なんでだろ?

「愛嬌が足りないですもんね。モモさんが言ったら、可愛らしいと思います」
「ありがと」
「ぴえん……ぴえん五段活用! ぱおん・ぴえん・ぷえん・ぺおん・ぽえん!」
「あなた何言ってるの?」

 急に変なことを叫び始めたリコに、ナディアの氷柱のような視線が突き刺さる。
 それに対して「えへへ、思いついたら言いたくなっちゃった」と照れくさそうに笑うリコは、ハートが強すぎるよ。

「なんていう種族なの?」
鰐狗クロコペロでーす! ワニとイヌが合体したモンスターって感じですね!」

 リコが元気に答えてくれた。未だに顔の半分が砂に埋まってるけど。砂を食べちゃってない?

「この子の職業は体術士と錬金術士なんです。私は魔術士で料理人ですよ」
「あ、もう生産職を変えたんだ?」
「はい! 美味しい料理をたくさん作りたくて」

 ナディアの顔がパッと明るくなった。よっぽど料理が好きなんだね。
 リコは「この体で錬金術をどう使えばいいのか、マジわからんじ」と呟いてる。
 わからんじ、って『マジ』と韻を踏んだつもりかな?

「──あ、モモさんのニャンコ様にイカ料理をお渡ししたくて、たくさん作っているんですけど、もらっていただけませんか?」

 ふと思い出した感じでナディアに頼まれて、僕は「ヒスイに? もちろんいいよー。ありがと」と答えた。

 美味しいものをもらえるのは嬉しいもんね。しかもナディアは職業料理人だもん。絶対美味しいやつ。

 ナディアがリコから手を離し、食料ボックスを取り出した。
 そして「中にはイカを使った料理がたくさん入ってます。一押しはイカボールですね! そのままでも美味しいのですが、おでん出汁に入れたものも気に入ってもらえると思います」と教えてくれた。

「イカボール……」

 食料ボックスから取り出して眺める。見覚えがあるぞ……?
 考え込んでいたら、ラッタンの声が聞こえてきた。

「らぴゅ(イカボールだぁ。美味しそぅ)」
「あ、もしかして、タマモに試作品のイカボールを渡した?」

 手を伸ばしてくるラッタンからイカボールを遠ざけながら、ナディアに尋ねる。
 ラッタンがイカボールを気に入ったきっかけになったのは、ヒスイファンの子が作ったイカボールを食べたからだったんだよね。

 ナディアはきょとんとしてから、「はい、渡しましたけど」と頷いた。
 やっぱり! タマモが言ってたのはナディアのことだったんだ。

「タマモからイカボールをもらって、ラッタンも気に入ったんだ。ヒスイじゃないけど、あげていい?」
「らぴゅ、らぴゅぅううっ」

 僕の周りをぴょんぴょんと跳ねながらイカボールを取ろうとしてるラッタンを指す。
 ナディアは目を瞬かせてから、蕩けるような笑みを浮かべた。ニャンコのヒスイだけじゃなくて、もふもふ全般に弱いのはもふもふ教だから当然だよね。

「もちろんです! 気に入ってもらえて嬉しいです。ラッタンちゃん、たくさん食べてね」
「らぴゅ(食べるぅ)」

 ちょうだい、と手を伸ばしてくるラッタンにイカボールを渡そうとしたら、ペタに上から取られた。

「らぴゅっ!?」

 横取りされた衝撃にラッタンが固まる。
 僕もナディアも「え」と呟いて目を瞬かせた。

 リコは「これが弱肉強食……──世は戦国時代! 戦え! 食いたいものがあるならば、己の力の限りを尽くして奪い取るのだぁあ!」と重々しい口調で変なナレーションを入れてる。
 でも、今は戦国時代じゃないよ。僕たちは基本的にほのぼのしてるよ。

「きゅぃ(小さい子のおやつを取ったらダメだよ)」
「くるる(ボクがあげたかっただけー)」

 スラリンに注意されたペタは、のほほんとした雰囲気のままイカボールをラッタンの口元に差し出す。
 ラッタンの顔が一気に明るく輝いた。

「らぴゅ(ありがとぉ。うままぁ)」
「くるる(いっぱい食べて、ボクみたいに大きくなるんだよー)」

 ほら、やっぱり殺伐さなんて欠片もなかった。
 ラッタンの頭を撫でているペタに微笑んでから、僕はリコに視線を向ける。

 リコは地面に伏せて「かわゆい、尊い……!」と体をくねらせながら悶えてた。
 最初の尊い病が再発したね?
 リコって、テンションがコロコロ変わって面白いなぁ。

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