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13章 ワクワク冒険がいっぱいだ!
560.毒薬と毒料理
ルンルルルーン♪
僕は現在、鼻歌を歌いながらバトルフィールドで採集作業中です!
もちろん、毒目当てだよー。
「きゅーきゅい(こっちのポイントも良さそうよ)」
「あ、ほんと? 今行くー」
「らぴゅ(たくさん採れたぁ)」
「毒物をニコニコしながら掲げるのって、ちょっと猟奇的だよね……」
採集のお手伝いをしてくれてるのはナッティとラッタン。
ナッティは毒採取スキルを持ってないから、採集ポイントを教えてくれるだけなんだけど。僕よりこのエリアのことを知ってるから、見つけるのが上手いんだ。
ここは第三の街・西のキーリ湖エリアだからね。ナッティの元々のすみかだもん。
ラッタンはお手伝いスキルがあるから、早々に僕の真似をして毒採取スキルを習得したんだよ。めちゃくちゃ優秀! ありがとー。
でも、毒々しい色の花とそれを持ってるラッタンの無邪気な笑顔がアンバランスすぎて、ちょっと引く。
かく言う僕も、ニコニコしながら毒採取に勤しんでるんだけど。
西のキーリ湖エリアはいろんな毒が採れて面白いんだよー。
ラナンさんから依頼を受けた毒もたくさん採取できたし、近々納品しに行かなきゃね。
「毒って、そのままでもダメージを与えられるからすごいよねぇ」
チラッと近くの茂みを見て、しみじみと呟く。
そこには大きな蜘蛛みたいなモンスターがいて、スラリン・ユキマルと戦ってた。
というか、一方的に蜘蛛がスラリンたちに殺られてる感じ。蜘蛛は今毒状態で弱ってるからね。
最初、蜘蛛が急に木から下りてきたから、僕がビックリして反射的に採取したばかりの血毒花を投げちゃったんだよ。そしたら、いい感じに口に入ったみたいなんだよねぇ。
僕、蜘蛛、キライ。
バトルはスラリンたちに任せるヨ!
血毒花は、加工しなくても『毎秒2ダメージ、素早さ-5』の効果があるアイテム。
おかげで、素早さがあまり高くないスラリンたちでも、難なくフルボッコ──『ずっと僕のターン!』っていう感じで戦えてるんだ。
ここが僕たちにとって難度低めのバトルフィールドだから、っていうのも理由だけど。
スラリンたちが周囲の警戒とバトルを請け負ってくれてるから、僕たちは採集活動に専念できるのです。ありがとー。
ついでに毒料理スキルを使って、いくつか毒アイテムを作ったよ。
ルトに渡す前に、ちゃんと自分で使って試した方がいいしね。
「きゅぃ(倒したよ!)」
「お疲れさまー。ありがとう!」
「ぴぅ(いっぱい糸もらえたみたい)」
「ほんとだね! 今度リリにあったらあげようかな」
スラリンたちが蜘蛛を倒したら、ドロップアイテムで【頑丈な白糸】をたくさんもらえた。
これは裁縫スキルでよく使うらしいから、リリにあげて、僕の新作衣装を作ってもらおう。
バトル勝利を報告してくれたスラリンとユキマルにそう言いながら、キョロキョロと周囲を見回す。
どこかに毒効果を確かめるのにちょうどいいモンスターはいないかな。
「らぴゅ(それ、食べていぃ?)」
「ダメです! これは毒!」
僕が持ってる【毒クッキー】にラッタンが手を伸ばすから、慌てて遠ざける。
毒料理の難点は、食いしん坊たちが食べたがっちゃうことだ。特にラッタンは危ない。
ダメって言ったら、やめてくれるけど。ちゃんとしつけをしていてよかったよ。
ちなみに毒クッキーは『毎秒5ダメージ、素早さ-10』の効果がある。
素材そのものより、やっぱり効果が高くなるよねー。
錬金術を使うと【毒ポーション】とかも作れるみたいだ。
効果は毒料理とあまり変わらない。
それなら敵に投げて使える毒ポーションの方が便利そうに感じるけど、毒料理にはめちゃくちゃすごい利点があるんだよ。
「あ、敵が来そう! ということで、これを地面に置いて……みんな、ちょっと離れるよー」
毒クッキーを置き去りにして、みんなを連れて茂みに身を潜める。
入れ違いで現れた敵は、大きめのネズミだった。ネコくらいのサイズ感で、僕よりちょっと小さいくらい。
このネズミ、立派な前歯を持ってて、噛まれると弱体化っていう状態異常になっちゃうから、厄介なんだ。
弱体化すると、全ステータスが一割下がっちゃうからね。
そのネズミが、僕が置いた毒クッキーに気づいてすぐさま駆け寄り、食べ始めた。
僕たちの気配に気づいて近づいてきただろうに、毒クッキーにまっしぐらだ。
「キィー!?」
「毒状態になってる! あとは、みんなやっちゃってー」
毒にやられたネズミを、スラリンたちが袋叩き。ネズミはほとんど抵抗できないまま倒れた。
「毒料理、凄いねぇ。品質が高ければ高いほど、敵が毒料理に惹かれて無警戒で食べちゃうんだもん……」
何度目かの毒料理実験を繰り返して、毎回同じ結果になるから、ちょっと怖いくらいだ。
毒料理の最大の利点がこれなんだよ。
まるで釣り餌のように、敵が自ら進んで毒料理を食べて、毒状態になってくれるんだ。
品質が高いほど、食いつく率が高くて効果も凄い。
料理人としては、ちょっと微妙な気分になるけど、バトル効率がいいのは間違いない。
「きゅぃ(モモは陸でも釣りマスターになるんだね! たくさんモンスターが釣れてる!)」
「う、ん……? なんか違う気がするけど、否定しきれないかも?」
凄い、と褒めてくれるスラリンに苦笑して、そろそろ毒採取の作業を切り上げようと、マップを開いて眺めた。
このあとは、他のデバフ系アイテムを作るか、レベリングするか……どっちにしようかな?
「きゅーきゅい(モモって、妖樹系モンスターに効く毒アイテムを作りたいのよね?)」
「うん、そうだよ。それがどうかした?」
毒クッキーがあったところを見つめて、ナッティがちょっと首を傾げてる。
なんか不思議なものある?
「きゅーきゅい(妖樹って、食べ物を食べるの?)」
沈黙。
草木が風に揺られてサワサワと音を立てているのが、やけにはっきりと聞こえた。
「……ハッ、もしかして、妖樹系に毒料理は効果ない!?」
今更気づいた事実に、硬直が解けた瞬間に叫んじゃった。
がんばって、毒料理たくさん練習したのにー。やっぱり毒ポーション一択の方がよかったのかなー?
ガクッと項垂れた僕を、スラリンたちが慌てて慰めてくれる。
「きゅぃ(妖樹は顔があるから食べるかもよ!?)」
「ぴぅ(口開いてるし……!)」
「らぴゅ(木だって気合いで食べられるよ、きっとぉ)」
気合いで食べる、とは?
不思議な慰め文句に笑っちゃって、ショックが和らいだ。
「きゅーきゅい(ま、まぁ……スープとかジュースとか、液体なら根っこから吸収できるかもしれないしね?)」
今更気づいたんかい、と言いたげな顔をしていたナッティの言葉に「それだ!」と僕のテンションが復活した。
妖樹系は根っこを動かして移動するし、そこから毒を吸収できるかも。
つまり、液体系の毒料理なら、無駄にならない可能性が高い!
僕は毒ジュース(スープでも可)職人になってやるぞぉ。
……でも、保険で、毒ポーションも量産しておきます。ルトに「役立たず」って言われたくないからね。
僕は現在、鼻歌を歌いながらバトルフィールドで採集作業中です!
もちろん、毒目当てだよー。
「きゅーきゅい(こっちのポイントも良さそうよ)」
「あ、ほんと? 今行くー」
「らぴゅ(たくさん採れたぁ)」
「毒物をニコニコしながら掲げるのって、ちょっと猟奇的だよね……」
採集のお手伝いをしてくれてるのはナッティとラッタン。
ナッティは毒採取スキルを持ってないから、採集ポイントを教えてくれるだけなんだけど。僕よりこのエリアのことを知ってるから、見つけるのが上手いんだ。
ここは第三の街・西のキーリ湖エリアだからね。ナッティの元々のすみかだもん。
ラッタンはお手伝いスキルがあるから、早々に僕の真似をして毒採取スキルを習得したんだよ。めちゃくちゃ優秀! ありがとー。
でも、毒々しい色の花とそれを持ってるラッタンの無邪気な笑顔がアンバランスすぎて、ちょっと引く。
かく言う僕も、ニコニコしながら毒採取に勤しんでるんだけど。
西のキーリ湖エリアはいろんな毒が採れて面白いんだよー。
ラナンさんから依頼を受けた毒もたくさん採取できたし、近々納品しに行かなきゃね。
「毒って、そのままでもダメージを与えられるからすごいよねぇ」
チラッと近くの茂みを見て、しみじみと呟く。
そこには大きな蜘蛛みたいなモンスターがいて、スラリン・ユキマルと戦ってた。
というか、一方的に蜘蛛がスラリンたちに殺られてる感じ。蜘蛛は今毒状態で弱ってるからね。
最初、蜘蛛が急に木から下りてきたから、僕がビックリして反射的に採取したばかりの血毒花を投げちゃったんだよ。そしたら、いい感じに口に入ったみたいなんだよねぇ。
僕、蜘蛛、キライ。
バトルはスラリンたちに任せるヨ!
血毒花は、加工しなくても『毎秒2ダメージ、素早さ-5』の効果があるアイテム。
おかげで、素早さがあまり高くないスラリンたちでも、難なくフルボッコ──『ずっと僕のターン!』っていう感じで戦えてるんだ。
ここが僕たちにとって難度低めのバトルフィールドだから、っていうのも理由だけど。
スラリンたちが周囲の警戒とバトルを請け負ってくれてるから、僕たちは採集活動に専念できるのです。ありがとー。
ついでに毒料理スキルを使って、いくつか毒アイテムを作ったよ。
ルトに渡す前に、ちゃんと自分で使って試した方がいいしね。
「きゅぃ(倒したよ!)」
「お疲れさまー。ありがとう!」
「ぴぅ(いっぱい糸もらえたみたい)」
「ほんとだね! 今度リリにあったらあげようかな」
スラリンたちが蜘蛛を倒したら、ドロップアイテムで【頑丈な白糸】をたくさんもらえた。
これは裁縫スキルでよく使うらしいから、リリにあげて、僕の新作衣装を作ってもらおう。
バトル勝利を報告してくれたスラリンとユキマルにそう言いながら、キョロキョロと周囲を見回す。
どこかに毒効果を確かめるのにちょうどいいモンスターはいないかな。
「らぴゅ(それ、食べていぃ?)」
「ダメです! これは毒!」
僕が持ってる【毒クッキー】にラッタンが手を伸ばすから、慌てて遠ざける。
毒料理の難点は、食いしん坊たちが食べたがっちゃうことだ。特にラッタンは危ない。
ダメって言ったら、やめてくれるけど。ちゃんとしつけをしていてよかったよ。
ちなみに毒クッキーは『毎秒5ダメージ、素早さ-10』の効果がある。
素材そのものより、やっぱり効果が高くなるよねー。
錬金術を使うと【毒ポーション】とかも作れるみたいだ。
効果は毒料理とあまり変わらない。
それなら敵に投げて使える毒ポーションの方が便利そうに感じるけど、毒料理にはめちゃくちゃすごい利点があるんだよ。
「あ、敵が来そう! ということで、これを地面に置いて……みんな、ちょっと離れるよー」
毒クッキーを置き去りにして、みんなを連れて茂みに身を潜める。
入れ違いで現れた敵は、大きめのネズミだった。ネコくらいのサイズ感で、僕よりちょっと小さいくらい。
このネズミ、立派な前歯を持ってて、噛まれると弱体化っていう状態異常になっちゃうから、厄介なんだ。
弱体化すると、全ステータスが一割下がっちゃうからね。
そのネズミが、僕が置いた毒クッキーに気づいてすぐさま駆け寄り、食べ始めた。
僕たちの気配に気づいて近づいてきただろうに、毒クッキーにまっしぐらだ。
「キィー!?」
「毒状態になってる! あとは、みんなやっちゃってー」
毒にやられたネズミを、スラリンたちが袋叩き。ネズミはほとんど抵抗できないまま倒れた。
「毒料理、凄いねぇ。品質が高ければ高いほど、敵が毒料理に惹かれて無警戒で食べちゃうんだもん……」
何度目かの毒料理実験を繰り返して、毎回同じ結果になるから、ちょっと怖いくらいだ。
毒料理の最大の利点がこれなんだよ。
まるで釣り餌のように、敵が自ら進んで毒料理を食べて、毒状態になってくれるんだ。
品質が高いほど、食いつく率が高くて効果も凄い。
料理人としては、ちょっと微妙な気分になるけど、バトル効率がいいのは間違いない。
「きゅぃ(モモは陸でも釣りマスターになるんだね! たくさんモンスターが釣れてる!)」
「う、ん……? なんか違う気がするけど、否定しきれないかも?」
凄い、と褒めてくれるスラリンに苦笑して、そろそろ毒採取の作業を切り上げようと、マップを開いて眺めた。
このあとは、他のデバフ系アイテムを作るか、レベリングするか……どっちにしようかな?
「きゅーきゅい(モモって、妖樹系モンスターに効く毒アイテムを作りたいのよね?)」
「うん、そうだよ。それがどうかした?」
毒クッキーがあったところを見つめて、ナッティがちょっと首を傾げてる。
なんか不思議なものある?
「きゅーきゅい(妖樹って、食べ物を食べるの?)」
沈黙。
草木が風に揺られてサワサワと音を立てているのが、やけにはっきりと聞こえた。
「……ハッ、もしかして、妖樹系に毒料理は効果ない!?」
今更気づいた事実に、硬直が解けた瞬間に叫んじゃった。
がんばって、毒料理たくさん練習したのにー。やっぱり毒ポーション一択の方がよかったのかなー?
ガクッと項垂れた僕を、スラリンたちが慌てて慰めてくれる。
「きゅぃ(妖樹は顔があるから食べるかもよ!?)」
「ぴぅ(口開いてるし……!)」
「らぴゅ(木だって気合いで食べられるよ、きっとぉ)」
気合いで食べる、とは?
不思議な慰め文句に笑っちゃって、ショックが和らいだ。
「きゅーきゅい(ま、まぁ……スープとかジュースとか、液体なら根っこから吸収できるかもしれないしね?)」
今更気づいたんかい、と言いたげな顔をしていたナッティの言葉に「それだ!」と僕のテンションが復活した。
妖樹系は根っこを動かして移動するし、そこから毒を吸収できるかも。
つまり、液体系の毒料理なら、無駄にならない可能性が高い!
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