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13章 ワクワク冒険がいっぱいだ!
590.呪術研究者と僕
魔術学院を経由して研究塔に到着~。
研究塔は魔術学院の主塔から、渡り廊下で繋がっていたのだ。
紹介状も、魔術学院の受付さんに見せたら、それでオッケーだったみたい。
「内装は魔術学院とほとんど変わらないねぇ」
カーペットが敷かれた廊下。
片側の壁には小さな窓、反対側の壁には扉が等間隔に並んでる。
円形の塔の中心部に研究室があって、その周囲を廊下で囲んでいる形だ。
塔自体がすごく大きいから、昇降機(エレベーターのようなもの)の反対側に研究室が位置していると、行くのが毎回面倒くさそう。
「にゃ(普通の建物にゃ)」
「ピルル(閉塞感があるね)」
キョロキョロと見回しながら廊下を歩く僕とは違い、ヒスイとアリアはあまり関心がなさそうだ。
モンスターにとっては、開放感のある自然の中にいるのが一番快適なのかも。
そんなことを考えながら、扉に掛かった研究室名を眺めて通り過ぎる。
ノーロウさんがいる呪術研究室の場所は、受付さんに教えてもらったからわかってるけど、こうしてどんな研究室があるのか知るだけでも楽しい。
残念なことに、紹介状がない研究室には立ち入れないらしいけど。
「『生態研究室・頬袋容量』って面白そう……」
さっき見たばかりの研究室に掛かっていた名前を呟く。
頬袋……僕みたいにたくさんご飯を溜め込めるほっぺたを持ってるモンスターの研究をしてるのかな。容量なんて気にしたことないけど、モンスターごとに違いがあるのか気になる。
それはそれとして、研究内容がマニアックすぎじゃないかな、とも思うけど。
頬袋を研究してどうなるんだろう。空間魔術的なものに繋がるのかな? それとも素材としての活用方法を調べてるの?
んー、と呟きながら首を傾げたところで、目的の研究室を発見した。
扉に掛かっている研究室名は『呪術研究室・呪術全般』だ。その下に小さく『室長:ノーロウ』と書かれている。
よし。初対面の印象は大切だから、ちゃんと挨拶しよう。
まずはノックから、と扉に触れようとした瞬間──
「『呪いをのぞく時、呪いもまたこちらをのぞいているのだ』」
突然扉に人の唇のような形の口が現れて、しゃべるように動き、音声が流れてきた。怖っ。ホラーじゃん。
「扉がしゃべった!?」
「にゃっ(敵襲にゃ?)」
「ピルル(攻撃はされてないと思うよ)」
口は赤い唇しかなくて、開いた瞬間に中を見ても、歯や舌は見当たらない。深淵というわけでもない。奥には普通に扉が見える。
……どこから音が出てるんだろう?
キョトンと首を傾げていると、扉がガチャッと音を立てて開いた。
「驚いても逃げないところは、呪術研究者として素晴らしい。呪いを学ぶには、その恐ろしさを知りながらも忌避せず、それでいて呪いの悪しき魅力に呑まれずにいられる胆力が必要だからな。入りたまえ」
そう言いながら現れたのは、青白い顔色の男性だった。
黒髪を顎下辺りでバッサリ切っていて、なんとなくあまり手入れしていない雰囲気が漂ってる。身なりにあまり気を使ってない感じ。黒一色のシャツとスラックスを着てるし。
闇使徒団です、と言われたら納得しちゃいそうな出で立ちだ。
この人、信用して大丈夫? モンちゃんに紹介してもらったんだから、問題はないんだろうけど、あからさまに怪しい見た目だよ。
「……ん? 逃げ去る音は聞こえなかったが、どこに──」
目の前に視線を向けたまま、パチリと瞬きをした男の人が、ゆっくりと左右に顔を向けて廊下を眺める。
そこには誰もいませんよ。下です、下。
僕の身長が低いから、すぐに気づかれない状況には慣れてる。
こういう時は、手を振ってアピールしながら、元気よく挨拶しよう!
「こんちゃー! 僕、冒険者のモモだよ!」
ニパッと笑って愛嬌いっぱいに自己紹介したら、男の人が僕を見下ろして、再びパチリと瞬きをした。
「……なるほど、モンスター、いや、流暢に話しているところを見るに、異世界からの旅人か。珍しい客が来たものだ。──私はノーロウ。呪術研究をしている。私に用があって来たのだろう? 入りたまえ」
無表情だけど、目には少し好奇心を滲ませていたから、人形のような無機質感はない。
なんだか面白い人だな。あまり出会ってこなかったタイプ。
モンちゃんとどんな付き合いがあるのか、すごく気になる。話していてもあんまり噛み合わなくて、傍から見ていて面白い感じになりそう。
「どうもー。あ、僕の仲間も一緒でいい?」
「構わん。だが、資料に触れさせるなよ」
ノーロウさんは、ヒスイとアリアをチラリと一瞥し小さく頷くと、研究室内へと踵を返した。
その背をトテトテと追って入室。
研究室内の床にはたくさんの本が積み上がり、塔のようになっていた。
これ、ちょっと触ったら倒しちゃいそう。ドミノ倒しになったら悲惨だなぁ。
注意されたヒスイとアリアは、特に気にした様子もなく、本でできた塔の細い隙間を軽やかな足取りで歩いて遊んでる。迷路みたいで面白いらしい。
ヒスイたちが遊ぶ姿を眺めながら研究室の奥まで行くと、怪しげなアイテムが乱雑に散らばった机があった。
そこが主な研究スペースらしく、一人掛けのイスに腰を下ろしたノーロウさんが、机を挟んで向かい側にある木製の客用らしきイスを手で示す。
座れ、ということのようだ。寡黙な性格っぽい。
遠慮なく「どうもー」と飛び乗って、ノーロウさんを見上げる。
闇のように深い黒の瞳と視線がぶつかった。
しばしの沈黙の後に、ノーロウさんがおもむろに口を開く。
「さて、貴殿の用とは、誰かを呪う術を知ることでいいだろうか」
「全ッ然よくないよ!?」
ナチュラルに誰かを呪うことを勧めるような言動はよくないと思う! 怖いよ!
モンちゃん、この人、本当に信用して大丈夫!?
研究塔は魔術学院の主塔から、渡り廊下で繋がっていたのだ。
紹介状も、魔術学院の受付さんに見せたら、それでオッケーだったみたい。
「内装は魔術学院とほとんど変わらないねぇ」
カーペットが敷かれた廊下。
片側の壁には小さな窓、反対側の壁には扉が等間隔に並んでる。
円形の塔の中心部に研究室があって、その周囲を廊下で囲んでいる形だ。
塔自体がすごく大きいから、昇降機(エレベーターのようなもの)の反対側に研究室が位置していると、行くのが毎回面倒くさそう。
「にゃ(普通の建物にゃ)」
「ピルル(閉塞感があるね)」
キョロキョロと見回しながら廊下を歩く僕とは違い、ヒスイとアリアはあまり関心がなさそうだ。
モンスターにとっては、開放感のある自然の中にいるのが一番快適なのかも。
そんなことを考えながら、扉に掛かった研究室名を眺めて通り過ぎる。
ノーロウさんがいる呪術研究室の場所は、受付さんに教えてもらったからわかってるけど、こうしてどんな研究室があるのか知るだけでも楽しい。
残念なことに、紹介状がない研究室には立ち入れないらしいけど。
「『生態研究室・頬袋容量』って面白そう……」
さっき見たばかりの研究室に掛かっていた名前を呟く。
頬袋……僕みたいにたくさんご飯を溜め込めるほっぺたを持ってるモンスターの研究をしてるのかな。容量なんて気にしたことないけど、モンスターごとに違いがあるのか気になる。
それはそれとして、研究内容がマニアックすぎじゃないかな、とも思うけど。
頬袋を研究してどうなるんだろう。空間魔術的なものに繋がるのかな? それとも素材としての活用方法を調べてるの?
んー、と呟きながら首を傾げたところで、目的の研究室を発見した。
扉に掛かっている研究室名は『呪術研究室・呪術全般』だ。その下に小さく『室長:ノーロウ』と書かれている。
よし。初対面の印象は大切だから、ちゃんと挨拶しよう。
まずはノックから、と扉に触れようとした瞬間──
「『呪いをのぞく時、呪いもまたこちらをのぞいているのだ』」
突然扉に人の唇のような形の口が現れて、しゃべるように動き、音声が流れてきた。怖っ。ホラーじゃん。
「扉がしゃべった!?」
「にゃっ(敵襲にゃ?)」
「ピルル(攻撃はされてないと思うよ)」
口は赤い唇しかなくて、開いた瞬間に中を見ても、歯や舌は見当たらない。深淵というわけでもない。奥には普通に扉が見える。
……どこから音が出てるんだろう?
キョトンと首を傾げていると、扉がガチャッと音を立てて開いた。
「驚いても逃げないところは、呪術研究者として素晴らしい。呪いを学ぶには、その恐ろしさを知りながらも忌避せず、それでいて呪いの悪しき魅力に呑まれずにいられる胆力が必要だからな。入りたまえ」
そう言いながら現れたのは、青白い顔色の男性だった。
黒髪を顎下辺りでバッサリ切っていて、なんとなくあまり手入れしていない雰囲気が漂ってる。身なりにあまり気を使ってない感じ。黒一色のシャツとスラックスを着てるし。
闇使徒団です、と言われたら納得しちゃいそうな出で立ちだ。
この人、信用して大丈夫? モンちゃんに紹介してもらったんだから、問題はないんだろうけど、あからさまに怪しい見た目だよ。
「……ん? 逃げ去る音は聞こえなかったが、どこに──」
目の前に視線を向けたまま、パチリと瞬きをした男の人が、ゆっくりと左右に顔を向けて廊下を眺める。
そこには誰もいませんよ。下です、下。
僕の身長が低いから、すぐに気づかれない状況には慣れてる。
こういう時は、手を振ってアピールしながら、元気よく挨拶しよう!
「こんちゃー! 僕、冒険者のモモだよ!」
ニパッと笑って愛嬌いっぱいに自己紹介したら、男の人が僕を見下ろして、再びパチリと瞬きをした。
「……なるほど、モンスター、いや、流暢に話しているところを見るに、異世界からの旅人か。珍しい客が来たものだ。──私はノーロウ。呪術研究をしている。私に用があって来たのだろう? 入りたまえ」
無表情だけど、目には少し好奇心を滲ませていたから、人形のような無機質感はない。
なんだか面白い人だな。あまり出会ってこなかったタイプ。
モンちゃんとどんな付き合いがあるのか、すごく気になる。話していてもあんまり噛み合わなくて、傍から見ていて面白い感じになりそう。
「どうもー。あ、僕の仲間も一緒でいい?」
「構わん。だが、資料に触れさせるなよ」
ノーロウさんは、ヒスイとアリアをチラリと一瞥し小さく頷くと、研究室内へと踵を返した。
その背をトテトテと追って入室。
研究室内の床にはたくさんの本が積み上がり、塔のようになっていた。
これ、ちょっと触ったら倒しちゃいそう。ドミノ倒しになったら悲惨だなぁ。
注意されたヒスイとアリアは、特に気にした様子もなく、本でできた塔の細い隙間を軽やかな足取りで歩いて遊んでる。迷路みたいで面白いらしい。
ヒスイたちが遊ぶ姿を眺めながら研究室の奥まで行くと、怪しげなアイテムが乱雑に散らばった机があった。
そこが主な研究スペースらしく、一人掛けのイスに腰を下ろしたノーロウさんが、机を挟んで向かい側にある木製の客用らしきイスを手で示す。
座れ、ということのようだ。寡黙な性格っぽい。
遠慮なく「どうもー」と飛び乗って、ノーロウさんを見上げる。
闇のように深い黒の瞳と視線がぶつかった。
しばしの沈黙の後に、ノーロウさんがおもむろに口を開く。
「さて、貴殿の用とは、誰かを呪う術を知ることでいいだろうか」
「全ッ然よくないよ!?」
ナチュラルに誰かを呪うことを勧めるような言動はよくないと思う! 怖いよ!
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