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2巻
2-1
第一章 新たな街へ行こう!
僕はモモ。種族ガチャでゲットしたアバター――天兎っていう羽のあるピンクのウサギのようなモンスターの姿――を使って、毎日のんびりとフルダイブ型VRMMOで遊んでるんだ。
ゲーム内は剣と魔法のファンタジー世界ですっごく楽しい!
でも、僕は今ちょっぴりピンチに陥っているのです……寂しくって泣いちゃいそう。
キョロキョロと周囲を観察する。うーん……見渡す限り、岩、岩、岩、そして溶岩――
「……地獄かな?」
ぽつりと呟いて、僕はガックリと項垂れた。
ここは、はじまりの街と第二の街の間のエリアボス――岩犀がいた谷間を見下ろせる、岩山の上。
岩犀を倒すのはワールドミッションになっていた。ワールドミッションっていうのは、一つのサーバー内で最初にクリアした人だけが報酬をもらえるミッションだ。
岩犀は火の古竜のイグニスさんに倒されてるから、今のところ、ここに危険はないはず。
イグニスさんの攻撃の影響で、街道が溶岩のようになっていて怖いけどね!
討伐の報酬である転移スキルなどを、自分で戦うことなく獲得できたのはありがたい。転移スキルを使うと、転移ピンをさした街中とかバトルフィールドに転移できるし。
でもイグニスさんによって強制的にここに連れてこられた上に、置いてけぼりにされちゃったことは「なーんでーなのー?」と嘆きたい。放置プレイはご褒美じゃないぞー!
心の中でイグニスさんにひとしきり文句を言って、なんとか平常心を取り戻す。
過去のことより、今後のことを考えなきゃ。
どっかで死に戻り――体力が0になり、最終データセーブ地点に戻ること――をしたら、はじまりの街の宿から再スタートできるだろう。ゲームデータは街中の宿に入る度に上書き保存されていて、僕の最終データセーブ地点は、はじまりの街の宿になってるから。
手っ取り早くはじまりの街に戻るには、死に戻りするのが一番だ。
でも、ここでそれをするのはもったいない。
このゲームでは死に戻りする度に、アイテムや所持金の一部が没収されて、しばらくの間ステータスも半減するんだよ。
つまり、今死に戻りしたら、ワールドミッション達成の功績は保持できても、アイテムを没収される可能性がある。
そんなのイヤだし、できる限り死に戻りを避けて、自力で街に辿り着かなきゃ!
「さて、どちらに進むかが問題だ……」
右手側に続くのは岩山。左手側に続くのは、はじまりの街に続くノース・サウス街道。
「たぶん、こっちが第二の街なんだよね」
右手側を眺める。岩が邪魔をしてるから、街は見えない。でも、進めば第二の街に辿り着くはず。やっぱり行ったことない街って惹かれるし、こっちに進むしかない!
「いざゆかん、第二の街へ!」
気持ちを切り替えて意気揚々と歩き始める――というより、飛翔スキルを使って飛んだ。岩場って歩きづらいんだもん。
飛翔スキルは今レベル2で、十五秒間自由自在に飛べるんだよ。
第二の街ってなんて名前だったっけ? と首を傾げながら移動し始めてすぐに、モンスターに遭遇して追いかけられた。
敵は巨大なゴーレムみたいなやつ。
動きが速くて、僕は逃げるのに必死で鑑定できてないから、詳細はわからないんだけど。
「ふぎゃー! ここのモンスター、怖いよー!」
必死に岩場を飛ぶ。後ろから、ドドドッと地響きのような足音がした。
「グオオッ!」
「なんか、鳴いてるぅ!」
滞空可能時間が終わって、一旦着地してすぐに飛翔スキルを発動。
でも、着地した瞬間に地面が揺れたから、上手く勢いをつけられなかった。
痛恨のミス!
ずっと地面が揺れてる気がするのは、モンスターの影響?
しばらく必死に逃げて、ようやく少し距離を取れたから、振り返って全鑑定スキルを発動する。
【苔むした岩ゴーレム】
土属性モンスター。ボーッとしすぎて苔が生えたゴーレム
固有のテリトリーを持ち、そこに侵入した者を追い払う
素早さ・防御力が高く、物理・魔力攻撃どちらも効きにくい
地鳴りと岩落としで攻撃してくる
得意属性【風】苦手属性【木】
「急に働き者になるのよくなーい! ボーッとしてて!」
思わず文句を言っちゃった。僕、いつの間にこのモンスターのテリトリーに入ったのかな?
追いかけられてからこいつに気づいたんだけど……さては、テリトリー広すぎだね?
「すくすくばっさーん――【木の玉】!」
とりあえず木魔術で攻撃してみるけど、あんまり効いてる気がしない。
これ、逃げ一択なのでは? テリトリーから出れば、ついてこないかも。
「グオオッ!」
「なんか怒ってる。ごめんなさーい!」
攻撃したせいですね。うわ、地面の揺れがひどくなってる……着地したら、体が揺れるよ。
とにかく逃げましょう。街まではついてこないでしょ。
「ガアアッ!」
「って、なんか増えてるぅ!?」
ビックリ仰天。振り返ると、ところどころに苔が生えた人型の岩みたいなモンスターが二体になってた。ポケットを叩いたらビスケットが増えるみたいに、攻撃したらゴーレムが増えるの?
「――いや、普通に、別のやつのテリトリーに入っただけか」
最初から追ってきてたゴーレムが立ち止まってるのを見て、ちょっぴり安心した。
二体目にはまだ追いかけられてるから、逃げなきゃいけないのは変わらないけど。
僕の攻撃力じゃ倒すのに時間かかりそうだし、ひたすら第二の街を目指そう! 全力で逃走だー。
しばらく必死に飛んでいたら、岩山が途切れた先に高い壁が見えた。
岩山の谷間にある街道が、壁にある門に続いているのがわかる。
「おお、あれが第二の街かな!」
結局、街の名前はなんだったっけ? 思い出せないんだけど……まぁいっか。
岩山を飛び下りて門の前に着地。僕を追ってきたゴーレムはいつの間にかいなくなってた。
「……は?」
門衛さんが目を丸くしてるのを見て、僕はすぐさま冒険者ギルド証を差し出す。
「こんにちは、僕は冒険者のモモです。ただのモンスターじゃないよ」
僕は天兎っていうモンスターの種族だから、敵に間違われかねないもんね。自衛大切!
ウサギに羽がある感じの見た目は可愛いし、いきなり討伐されそうになるってことはないと思う。というか、そうであってほしい。
「あ、あぁ……あの、異世界から旅してきた人(?)ですね。モンスター種もいるとは聞いてましたが、初めて会いました」
マジマジと見つめられたけど、問題はなさそう。
門衛さんは僕の冒険者資格を確認して、すぐに「どうぞお通りください」って言ってくれた。
「第二の街オースへようこそ。歓迎しますよ」
「あ、オースだった!」
「はい? そうですが……」
なんか困惑させちゃった。ごめんよ。
街の名前を思い出せなくて、もやもやしてたのが解消されただけだから。
時々なんで思い出せないんだろっていうことあるよね? そういうの、めっちゃ気になっちゃうんだよなぁ。
「気にしないでー。それじゃ、入らせてもらいまーす」
「あ、そういえば、ここにいらしたということは、モンスターを避けてこられたんですか?」
街に入った途端、門衛さんが思い出したように尋ねてきたけど……モンスターってどれのこと?
「ゴーレム?」
振り返って尋ねたら「いえ、岩犀というモンスターですよ」と返された。それか!
「……それは火の古竜が倒してたよ」
「は?」
ぽかんとした顔の門衛さんから、僕は目を逸らす。
あれは悲しい事故(?)だったね……僕が言えることは一つだけ――
「古竜って凄く強いから、敵に回しちゃダメだよ……」
「そんな予定はそもそも一切ありませんけど……?」
でしょうね。僕が頷いてたら、状況を理解した様子の門衛さんが「え、でも、岩犀が倒されたというのが事実なら……」と言いながら目を見開く。
「――この街の冒険者による討伐計画はどうなって……?」
「何それ?」
初耳の情報だ。ふざけるのをやめて真剣に聞いてみる。
「岩犀が交易の障害になっていたため、近々、高ランクの冒険者を集って、全員で一斉に討伐を行うことにしていたんですよ。ちょうど異世界の方がたくさん来られるということで、有望そうな方がいたら作戦に協力してもらう予定でもありました」
つまり、僕らが異世界の住人と協力して岩犀を倒すというレイドイベントが開催予定だった?
「はじまりの街にたくさん冒険者が来てたのは……」
「異世界の方をスカウトするためですね」
今さら『バトルチュートリアルでの指南役冒険者多すぎじゃね?』話の裏設定がわかったよ!
このゲームの最初の頃に、異世界の住人の冒険者さんが指南役になって、バトルの仕方を教えてくれるチュートリアルがあったんだ。その際にプレイヤーごとに違う指南役が用意されてて、掲示板で『指南役のバラエティが豊かすぎる(笑)』って話題になってたんだよねー。
その冒険者さんたちみんな、岩犀を倒すイベントのためにはじまりの街に集まってたのかぁ。
僕の指南役だったカミラと仲良くなってたら、一緒にイベントに参加できたのかな……何それ、凄い楽しそうだったじゃん!
すでにイグニスさんの攻撃一発で倒されちゃってるけどね!
「報酬の転移スキルって、もっとたくさんの人に行き渡る予定だったのでは……?」
恐ろしいことに気づいてしまった。
岩犀が倒れた結果、ワールドミッションを達成したことになったんだけど、報酬に転移スキルがあったんだよね。
めっちゃ便利なスキルだと思うんだけど、僕一人しかもらえてないのはいいのかなーって不安だったんだ。今のところワールドミッションでしかもらえないスキルっぽいし。
本来は岩犀討伐のレイドイベント報酬として大多数に行き渡る予定だったなら、もらえなかったみんなが可哀想では? 僕、みんながもらう機会を潰しちゃった?
「――運営さんに言っとこう!」
どっかで補填してくれー! 神頼みならぬ、運営さん頼みです。僕、恨まれたくないから。
メニューから運営さんにメールする。ついでに、魔術を使う時の変な詠唱についての苦情も入れとこう。早く文言変更か、詠唱破棄スキルを準備してください!
「とりあえず、岩犀の情報は上に報告しなくては……!」
そう言いながら、門衛さんが慌てて上司がいる門衛所に向かう……ここ、空にしていいんです?
はじまりの街から来る人は、今ほとんどいない感じとはいえ、ね?
「――あ、モモさん! ぜひご一緒に! 詳しいお話を聞かせてください!」
「えー……」
面倒くさいなぁって思ったら、うっかり心の声が漏れてしまった。門衛さんが苦笑いしてる。
「桃のソルベをお出しできますよ。長旅でお疲れでしょう? 休憩を兼ねて、お願いします」
「桃のソルベ!? 的確に僕の好物を提示してくるの、凄すぎない?」
あっさり釣られますー。僕、桃が大好きなんだよ。第二の街は農業が盛んで、果物がたくさんあるって聞いてたから、楽しみだったんだよねー。
僕はルンルンしながら門衛所に向かい、知る限りの情報を話した。説明は面倒くさかったけど、もらった桃のソルベは冷たくて甘くて、最高に美味しかったよ!
門衛さんとのお話が終わってから、ようやく第二の街オースに入る。新しい街を楽しむぞ。
第二の街はグリーン系の色をした建物が多いみたい。目に優しい感じがしていいねー。
「はじまりの街は港街って感じだったけど、こっちは山に近い街って感じ? 田畑が多いなぁ」
周囲を見渡して呟く。
農業が盛んだって言われるのがよく理解できる。建物と同じくらい、田んぼや畑が目立っている。日本も、地方の街ってわりとこんな景色だよなぁ。
街はぐるっと高い壁で囲まれていて、田畑も街中にある。外はモンスターがいるから、農作業なんてできないもんね。
そんなことを考えながら歩いてたら、たくさんの果樹があるエリアを見つけた。
「ふわぁ……! 果物たくさんだ! 桃、ブドウ、サクランボ、梨……とりあえずたくさんある!」
正直、種類多すぎだと思う。ここ、果物天国かな? 季節感はあんまり関係なく実が生ってるのは、ゲームらしい。
たわわに実っている果物を眺めて、僕は思わず「美味しそうだなぁ……」とこぼした。
食べたい……
「お? お客さんかい?」
果樹園から男の人が出てきた。僕を見て驚いた顔をしたけど、「あぁ、噂の異世界のやつか……」と呟いて納得してる。
「ここ、販売してるの?」
「してるぞ。果物狩りもできる。採った分だけ金を払ってもらうけどな」
時間制じゃなくて、収穫量に応じた料金制ってことね。意外と、いつの間にか高いお金を払うことになっちゃうやつだ。
「……おいくらですか?」
「種類によるぞ。ブドウなら、一房二十リョウだな」
「お安い!」
はじまりの街の市場に果物が並んでた時に値札をチラ見したけど、倍以上の値段だったよ。
ちなみに、リョウはこのゲーム内での貨幣単位。この街での果物の市場価値はまだわからないから、提示額が本当に安いかはわからないけど――
「とりあえず、桃、採りたい!」
「毎度ありー。桃は一個二十五リョウだぞ」
我慢できなかった。桃食べたいんだもん。さっきソルベを食べたけど、それだけじゃ食欲はおさまらないよ。
果樹園主からカゴを受け取り、桃の木に案内してもらう。木に実った桃は、どれも美味しそう。大きさや色味はそれぞれ少し違うみたいだ。
「どれがいいかなー?」
「甘いのは、全体的にふっくら丸みがあって、紅く色づいてるやつだぞ」
「なるほど……じゃあ、これかな!」
飛翔スキルを使って飛んで、目当ての桃を掴む――途端に採集スキルが発動して、あっという間に桃を収穫できた。
桃は両手で抱えるくらい大きい。これを丸ごと食べられるなんて、夢みたいだ!
「う~ん、美味しそう!」
「飛べるってのは楽でいいな」
果樹園主に羨ましそうに言われた。飛べないと、脚立とか使って収穫しないといけないもんね。
「――お前さん、ここでバイトしないか?」
「へっ、バイト?」
次の桃を品定めしてたところで、唐突に提案された。
果樹園主は真剣な表情だ。
「ああ。この果樹は基本的に三日で実ができる。種類ごとに収穫する日を分けてるんだけどよぉ……収穫ってのは結構な重労働なわけだ。朝一番で市場に持っていかないとならねぇし。お前さんが手伝ってくれたら、ちっとは楽できるなぁと思ってよ」
なるほど。ここの果物が市場に卸されてるのかー。果樹はたくさんあるみたいだし、三日でできるなら、収穫が大変なのも理解できる。
「僕、毎日は来れないよ?」
「おう。時間がある時だけでいい。バイト代は、好きな果物三十個ってことで」
「果物、三十個……!」
凄く心惹かれる。果物一個二十リョウとしても、一回で六百リョウの報酬ってことだ。果物を買うお金が浮くのは最高。来るのは気が向いた時だけでいいっていう緩さだし。
「――わかった。その依頼、受けるよ!」
「お、ほんとか。助かるよ。俺の名前はフルーオだ。よろしくな」
「僕はモモだよ。よろしくねー」
挨拶しながらフルーオさんと握手した。
デイリーミッション【果物収穫バイト】を開始しました
毎朝ミッションを達成することができます
ミッション【果物収穫バイト】
第二の街オースの果樹園で果物を百個収穫する
ゲーム内で朝の時間帯のみ、何度でも達成可能
達成報酬は果物三十個
アナウンスもあったし、これって正式なミッションだったんだね。
ゲーム内時間の一日は、現実時間の六時間に相当する。現実時間の二時間ごとに、ゲーム内では朝・昼・夜が来るんだ。朝のタイミングでログインできたら、忘れずに果樹園に来よう。
「今日はもう昼時だから、また明日以降に頼むな」
「りょうかいです」
「とりあえず、桃三つ、サービスにしてやるから、持ってけ」
「いいの!?」
今日の桃採集も、三つ無料になっちゃった。ラッキー。
ルンルンしながら、あと二つを選びに選んで採集する。どれもふんわり甘いにおいがして美味しそう!
「桃好きなら、中心街にある『桃カフェ・ピーチーズ』ってところに行ってみるといいぞ」
「桃カフェ?」
「桃を使ったメニューが山ほどある。評判がいいらしい。ここの桃も卸してるしな」
お得意様を紹介された。桃を使ったメニューがたくさんなんて惹かれる。絶対行こう。
フルーオさんにカフェがある場所の地図をもらったら、システムのマップに反映された。便利でいいね。現実もこうならないかな。
「とりあえず、お腹空いたから早速一個いただきます!」
桃を抱えて口を開ける。皮を剥かなくても、ゲームシステムで問題なく食べられるから便利だ。バトル中に悠長に皮を剥いてられないからだろうけど。
かぶりついた瞬間に、じゅわっと果汁が溢れてくる。甘くてみずみずしい。
「うっまーい!」
「そりゃよかった」
フルーオさんが相好を崩して言う。夢中で食べちゃって、半分なくなったところで満腹状態になっていることに気づいた。やっぱり僕って、燃費がいいよね?
「あ、鑑定するの忘れてた。リンゴみたいにレアアイテム化するかな……?」
リンゴは食べかけだと、【天兎の食べかけリンゴ】っていうアイテムになって、空腹になりにくくなる効果が追加されてたんだ。桃はどうだろう?
【天兎の食べかけ桃】レア度☆☆☆
満腹度を5回復する。一時間、空腹になりにくくなる
天兎が50パーセント食べ残した桃
やっぱりレアアイテム化してる!
天兎って、果物特化でアイテムに影響を与える感じなのかな。ラッキー。
もう満腹だし、これはアイテムボックスにとっておこう。
「もういいのか?」
「うん、お腹いっぱいだから」
「モモは小さいからなぁ。いっぱい食って大きくなれよ!」
桃を一個追加でもらった。僕はこれ以上大きくならないと思うけど、ありがたく受け取る。
「それじゃ、僕、街探索に行ってくるね!」
「おう。中心街で宿を探すなら『黄金リンゴの宿』がオススメだぞ」
「なんか派手そうな名前だね?」
フルーオさんのオススメに首を傾げながらも、とりあえず地図をもらっておく。
中心街にあるみたいだし、歩いてたら着くでしょ。高そうだったらやめればいいし。
大好物の桃を食べられて上機嫌なまま街中を歩く。
お米も欲しいな。プレイヤー友だちのリリはお寿司が好きだって言ってたから、作ってあげたい。何より、僕はどんぶり飯を食べたいんだ。豪華海鮮丼とか、夢だよね。
田んぼや畑を横目に、建物が密集してそうなエリアを目指す。
マップ上に冒険者ギルドとかのマークがついてるから、そこを目指せばにぎやかなところに着くはず。田畑エリアはあんまり人がいないなぁ。
「おお? いいにおいがする……」
建物がたくさんあるエリアに入った途端、魅力的な香りがしてきた。
これは、バーベキューの雰囲気! クンクンとにおいを嗅いで、探し歩く。
僕がモンスターの姿だから街の人にちょっと驚かれるけど、すぐに「あぁ、異世界の」って納得してくれてるし、問題はなさそう。
周囲の反応を半ばスルーしながら歩いた先に、屋台エリアがあった。料理や食材、食べられないアイテムなどを売ってる屋台がごちゃまぜに並んだ大規模な市場だ。
とりあえずいいにおいがする屋台に並ぶ。人がたくさん並んでるから、人気の屋台なんだろう。
楽しみー。さっき満腹って言ったけど、食べられないわけじゃないもん。
「うお? あぁ、異世界の……」
列の先頭まで来たらちょっと驚かれたけど、その反応にはもう飽きてるから、スルーして商品を眺めた。お客さんはみんな、野菜とお肉が串に刺さった料理を買ってるようだ。
「ここの屋台はバーベキューしてる感じ?」
「そうだぞ。一番人気はトウモロコシとピーマン、夢羊の肉を刺したやつだな」
「美味しそう! 二本ちょうだい」
「毎度あり!」
手早く焼き上がった串をもらった。具材が大きくて食べごたえがありそう。
トウモロコシは醤油が塗られてて香ばしい香りがする。ピーマンはなんかのタレがついてるのかな。夢羊のお肉はラムっぽい感じ。
一本をアイテムボックスにしまって、屋台から少し離れたところでかぶりついてみる。
最初はピーマン。焼き肉のタレっぽい味付けで、ピーマン自体、苦みが少なくて食べやすい。
続いて夢羊のお肉。どんなモンスターなのか想像できないけど、味はジンギスカンっぽい。結構分厚いお肉だけど、タレの味が濃いからかクセを感じない。柔らかいし美味しい!
最後はトウモロコシ。僕的に、焼きトウモロコシはデザートだ。
噛んだ瞬間に溢れる果汁。醤油がちょっと焦げた感じの香ばしさで、飽きることなく食べられちゃう。甘じょっぱい食べ物って、止まらなくなるよね。
「うまうまー」
堪能してたら、街の人が「あのウサギさんが食べてるの美味しそう。どこで買ったのかしら……あ、あそこの屋台ね」って言いながら通り過ぎていく。僕が串焼きを買った屋台は、さっきよりも列が長くなってた……僕が販促した感じ? 美味しいからみんな楽しんでくださいな。
近くにあったベンチで一休み。空が暗くなってきてるなぁ。今日は一日いろんなことがあったけど、終わりよければすべてよしだ。桃も串焼きも美味しかったから幸せ。
「次もきっと楽しくな~る!」
願掛けの言葉は、一番星まで届いたかな。
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