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1-2.もふもふダンジョンの作り方〈公開前2日目〉
17.〈リルくん〉よーい、どん!
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マスターから重要な任務を指示されて、僕はルンルンとダンジョンの外に向かった。
マスターに頼られて嬉しくなるのは、ダンジョンの魔物としての本能だ。それに外をお散歩する楽しさが加わるんだから、心躍って当然なんだよ。
ダンジョンから出て、ぐるりと周囲を見渡す。朝日が昇り、山の中も少しずつ明るくなっていた。
古竜の卵がある場所はアリーが作った地図で共有してもらってる。出入り口から北に進んだ方角のはずだ。
『んー……山がちょっとざわついてる?』
最初に訪れた時とは、山に漂う雰囲気が少し違った。魔物たちが息を潜めて緊張状態にある気がする。
ダンジョンがあることとか、僕がいることだけが、その理由ではないと思うんだけど――
『――土龍を捕まえた騒ぎのせいかな』
少なからず山の生態系に影響があることをした自覚はある。
木とかいっぱい倒したし、一部地面が割れているところもあるし。この山の生態系の頂点に土龍がいたなら、それがいなくなって、魔物同士の争いが激化する可能性もあるし。
『まぁ、いっか。僕はマスターの望みを叶えられれば、他はどうでもいいしー』
ささやかな疑問を放り投げ、大地を踏みしめる。そして、勢いよく宙へと飛び上がった。木が邪魔なので、空を進んでいくよ。
ビュンビュンと風を切り、古竜の卵を目指して宙を駆ける。
そして、あっという間に目的地に辿り着いた。
僕より大きな丘だ。
土が盛り上がり、その上に木々や草花が生えている。土が割れているところから、黄金色の輝きが見えた。これが古竜の卵の殻らしい。
『へぇ、すっごく埋まっちゃってる。いつからあるんだろう? というか、温めなくても卵が孵るって不思議ー』
土に温め効果があるのかな? だから親が埋めた?
いろいろ気になるけど、僕の任務はこの卵をダンジョンに持ち帰ることなので、作業を開始することにした。
『ここ掘れ、わんわーん』
なんとなく言わなきゃいけないと思ったセリフを歌うように呟きながら、卵を覆う土を除けていく。一緒に木々が飛んでいって、結構ひどい音がしてるけど気にしなーい。
『大判小判がザックザクー』
掘り返して出てくるのは卵だけど。黄金色だし、売ったら高値が付きそうだから間違ってないよね?
しばらく土を掘っていたら、卵の全容が見えるようになった。僕よりちょっと大きいけど、なんとかなりそう。
卵に前足を掛けて、ぐいっと押す。卵がグラッと揺れた。
『リル選手、位置に着きました――よーい、どん!』
ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃちゃちゃー♪
マスターがいた世界の〈運動会〉というイベントでよく流れると記憶されている音楽が、頭の中で再現された。なんかやる気が湧く曲だー。
楽しくなりながら卵を転がす。卵はまん丸じゃないから、なかなかまっすぐ進まないけど、それがおもしろい。
道中、たくさんの木を倒しちゃったし、下り坂を卵が勢いよく転がり落ちて、魔物を轢いちゃった気がするけど、見なかったことにしよう。
大丈夫、きっとマスターは怒らない。
『ルルルー、ルルルー、ルルルルルー♪』
卵を転がし、ようやくダンジョン出入り口になっている岩に着いた。
――ここで問題です。
『どう考えても出入り口より卵が大きいの、どうしよう~♪』
歌いながら卵と出入り口を見比べる。
僕が通るのにギリギリのサイズの出入り口だから、当然このままでは卵が入らない。
でも、僕は土龍という前例を知っているので! ダンジョンの柔軟性に期待して、卵を押し付けてみる。
『ほらほらお食べ。大切な卵だよー』
ダンジョンも僕たちの仲間だよね? それならきっと協力してくれるはず。ダンジョンだってマスターのことが大好きでしょ。
ぐいぐい、と卵を押していたら、唐突に抵抗がなくなった。さすがダンジョン! やってくれると思ってたよー。
ダンジョンに飲み込まれる卵を追って、僕もひょいっと中へ戻った。
『お、スライムくん、出迎えどうもー』
ダンジョンに入ってすぐのところは、ちょっとしたホールのように広い空間になっている。そこからいくつかの通路が伸びているんだけど、その通路からはスライムたちがひょっこりと僕を覗き見ていた。
彼らも僕の仲間だから、とりあえず尻尾を振って挨拶をする。
スライムたちはおっかなびっくりとした感じで、体からみょーんと手らしきものを伸ばして揺らした。おもしろい挨拶だねー。
卵の横に座り、スライムたちとささやかな交流をしていたら、マスターの気配が近づいてきた。
「……うわ、帰ってくんの早っ。それに、マジで卵持って帰ってこれたんだな」
マスターの口がポカンと開いてる。そして、卵をじっくりと眺めた後、僕を見て手を伸ばしてくる。僕が顔を寄せると、鼻筋を優しく撫でてくれた。
マスターに撫でられると気持ちいいんだよー。でも、全身を撫でてもらいたくなっちゃうから、ちょっぴり困る。僕が小さくなれたら撫でてもらえるかなぁ?
『ただいまー』
「おかえり。どうやって、卵を運んだんだ?」
『転がしたんだよー。下り坂を勢いよく転がってておもしろかった!』
卵を転がしていた時の話を、マスターは笑いながら聞いてくれた。
「やっば。卵転がして来るとは考えてなかったよ」
『そうなの? でも、丸いものは転がすのが一番手っ取り早い運び方だよね』
「そうだなー。卵の中身にとっては、たまったもんじゃないかもしれないけど」
マスターが笑いながら卵を軽く叩く。いたわるような仕草だった。
卵の中身、目を回しちゃったかな? うーん……古竜だから大丈夫な気がする!
『この卵、どこに置くの?』
「古竜用の空間を作ったから、そこに転送するよ」
マスターがそう言った途端、卵の下の地面に魔法陣が展開され光った。その一瞬後には卵が消える。
『あとは卵が孵るのを待つだけ?』
「そうだな。仲間になるのが待ち遠しいな」
「うん! 強い仲間は大歓迎だよー」
マスターを守る頼もしい仲間ができそうで楽しみだね!
マスターに頼られて嬉しくなるのは、ダンジョンの魔物としての本能だ。それに外をお散歩する楽しさが加わるんだから、心躍って当然なんだよ。
ダンジョンから出て、ぐるりと周囲を見渡す。朝日が昇り、山の中も少しずつ明るくなっていた。
古竜の卵がある場所はアリーが作った地図で共有してもらってる。出入り口から北に進んだ方角のはずだ。
『んー……山がちょっとざわついてる?』
最初に訪れた時とは、山に漂う雰囲気が少し違った。魔物たちが息を潜めて緊張状態にある気がする。
ダンジョンがあることとか、僕がいることだけが、その理由ではないと思うんだけど――
『――土龍を捕まえた騒ぎのせいかな』
少なからず山の生態系に影響があることをした自覚はある。
木とかいっぱい倒したし、一部地面が割れているところもあるし。この山の生態系の頂点に土龍がいたなら、それがいなくなって、魔物同士の争いが激化する可能性もあるし。
『まぁ、いっか。僕はマスターの望みを叶えられれば、他はどうでもいいしー』
ささやかな疑問を放り投げ、大地を踏みしめる。そして、勢いよく宙へと飛び上がった。木が邪魔なので、空を進んでいくよ。
ビュンビュンと風を切り、古竜の卵を目指して宙を駆ける。
そして、あっという間に目的地に辿り着いた。
僕より大きな丘だ。
土が盛り上がり、その上に木々や草花が生えている。土が割れているところから、黄金色の輝きが見えた。これが古竜の卵の殻らしい。
『へぇ、すっごく埋まっちゃってる。いつからあるんだろう? というか、温めなくても卵が孵るって不思議ー』
土に温め効果があるのかな? だから親が埋めた?
いろいろ気になるけど、僕の任務はこの卵をダンジョンに持ち帰ることなので、作業を開始することにした。
『ここ掘れ、わんわーん』
なんとなく言わなきゃいけないと思ったセリフを歌うように呟きながら、卵を覆う土を除けていく。一緒に木々が飛んでいって、結構ひどい音がしてるけど気にしなーい。
『大判小判がザックザクー』
掘り返して出てくるのは卵だけど。黄金色だし、売ったら高値が付きそうだから間違ってないよね?
しばらく土を掘っていたら、卵の全容が見えるようになった。僕よりちょっと大きいけど、なんとかなりそう。
卵に前足を掛けて、ぐいっと押す。卵がグラッと揺れた。
『リル選手、位置に着きました――よーい、どん!』
ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃちゃちゃー♪
マスターがいた世界の〈運動会〉というイベントでよく流れると記憶されている音楽が、頭の中で再現された。なんかやる気が湧く曲だー。
楽しくなりながら卵を転がす。卵はまん丸じゃないから、なかなかまっすぐ進まないけど、それがおもしろい。
道中、たくさんの木を倒しちゃったし、下り坂を卵が勢いよく転がり落ちて、魔物を轢いちゃった気がするけど、見なかったことにしよう。
大丈夫、きっとマスターは怒らない。
『ルルルー、ルルルー、ルルルルルー♪』
卵を転がし、ようやくダンジョン出入り口になっている岩に着いた。
――ここで問題です。
『どう考えても出入り口より卵が大きいの、どうしよう~♪』
歌いながら卵と出入り口を見比べる。
僕が通るのにギリギリのサイズの出入り口だから、当然このままでは卵が入らない。
でも、僕は土龍という前例を知っているので! ダンジョンの柔軟性に期待して、卵を押し付けてみる。
『ほらほらお食べ。大切な卵だよー』
ダンジョンも僕たちの仲間だよね? それならきっと協力してくれるはず。ダンジョンだってマスターのことが大好きでしょ。
ぐいぐい、と卵を押していたら、唐突に抵抗がなくなった。さすがダンジョン! やってくれると思ってたよー。
ダンジョンに飲み込まれる卵を追って、僕もひょいっと中へ戻った。
『お、スライムくん、出迎えどうもー』
ダンジョンに入ってすぐのところは、ちょっとしたホールのように広い空間になっている。そこからいくつかの通路が伸びているんだけど、その通路からはスライムたちがひょっこりと僕を覗き見ていた。
彼らも僕の仲間だから、とりあえず尻尾を振って挨拶をする。
スライムたちはおっかなびっくりとした感じで、体からみょーんと手らしきものを伸ばして揺らした。おもしろい挨拶だねー。
卵の横に座り、スライムたちとささやかな交流をしていたら、マスターの気配が近づいてきた。
「……うわ、帰ってくんの早っ。それに、マジで卵持って帰ってこれたんだな」
マスターの口がポカンと開いてる。そして、卵をじっくりと眺めた後、僕を見て手を伸ばしてくる。僕が顔を寄せると、鼻筋を優しく撫でてくれた。
マスターに撫でられると気持ちいいんだよー。でも、全身を撫でてもらいたくなっちゃうから、ちょっぴり困る。僕が小さくなれたら撫でてもらえるかなぁ?
『ただいまー』
「おかえり。どうやって、卵を運んだんだ?」
『転がしたんだよー。下り坂を勢いよく転がってておもしろかった!』
卵を転がしていた時の話を、マスターは笑いながら聞いてくれた。
「やっば。卵転がして来るとは考えてなかったよ」
『そうなの? でも、丸いものは転がすのが一番手っ取り早い運び方だよね』
「そうだなー。卵の中身にとっては、たまったもんじゃないかもしれないけど」
マスターが笑いながら卵を軽く叩く。いたわるような仕草だった。
卵の中身、目を回しちゃったかな? うーん……古竜だから大丈夫な気がする!
『この卵、どこに置くの?』
「古竜用の空間を作ったから、そこに転送するよ」
マスターがそう言った途端、卵の下の地面に魔法陣が展開され光った。その一瞬後には卵が消える。
『あとは卵が孵るのを待つだけ?』
「そうだな。仲間になるのが待ち遠しいな」
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マスターを守る頼もしい仲間ができそうで楽しみだね!
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