ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

文字の大きさ
17 / 234
1-2.もふもふダンジョンの作り方〈公開前2日目〉

17.〈リルくん〉よーい、どん!

しおりを挟む
 マスターから重要な任務を指示されて、リルはルンルンとダンジョンの外に向かった。
 マスターに頼られて嬉しくなるのは、ダンジョンの魔物としての本能だ。それに外をお散歩する楽しさが加わるんだから、心躍って当然なんだよ。

 ダンジョンから出て、ぐるりと周囲を見渡す。朝日が昇り、山の中も少しずつ明るくなっていた。

 古竜エンシェントドラゴンの卵がある場所はアリーが作った地図で共有してもらってる。出入り口から北に進んだ方角のはずだ。

『んー……山がちょっとざわついてる?』

 最初に訪れた時とは、山に漂う雰囲気が少し違った。魔物たちが息を潜めて緊張状態にある気がする。
 ダンジョンがあることとか、僕がいることだけが、その理由ではないと思うんだけど――

『――土龍アースドラゴンを捕まえた騒ぎのせいかな』

 少なからず山の生態系に影響があることをした自覚はある。
 木とかいっぱい倒したし、一部地面が割れているところもあるし。この山の生態系の頂点に土龍アースドラゴンがいたなら、それがいなくなって、魔物同士の争いが激化する可能性もあるし。

『まぁ、いっか。僕はマスターの望みを叶えられれば、他はどうでもいいしー』

 ささやかな疑問を放り投げ、大地を踏みしめる。そして、勢いよく宙へと飛び上がった。木が邪魔なので、空を進んでいくよ。

 ビュンビュンと風を切り、古竜エンシェントドラゴンの卵を目指して宙を駆ける。
 そして、あっという間に目的地に辿り着いた。

 僕より大きな丘だ。
 土が盛り上がり、その上に木々や草花が生えている。土が割れているところから、黄金色の輝きが見えた。これが古竜エンシェントドラゴンの卵の殻らしい。

『へぇ、すっごく埋まっちゃってる。いつからあるんだろう? というか、温めなくても卵が孵るって不思議ー』

 土に温め効果があるのかな? だから親が埋めた?
 いろいろ気になるけど、僕の任務はこの卵をダンジョンに持ち帰ることなので、作業を開始することにした。

『ここ掘れ、わんわーん』

 なんとなく言わなきゃいけないと思ったセリフを歌うように呟きながら、卵を覆う土を除けていく。一緒に木々が飛んでいって、結構ひどい音がしてるけど気にしなーい。

『大判小判がザックザクー』

 掘り返して出てくるのは卵だけど。黄金色だし、売ったら高値が付きそうだから間違ってないよね?

 しばらく土を掘っていたら、卵の全容が見えるようになった。僕よりちょっと大きいけど、なんとかなりそう。
 卵に前足を掛けて、ぐいっと押す。卵がグラッと揺れた。

『リル選手、位置に着きました――よーい、どん!』

 ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃー、ちゃちゃちゃちゃちゃー♪
 マスターがいた世界の〈運動会〉というイベントでよく流れると記憶されている音楽が、頭の中で再現された。なんかやる気が湧く曲だー。

 楽しくなりながら卵を転がす。卵はまん丸じゃないから、なかなかまっすぐ進まないけど、それがおもしろい。

 道中、たくさんの木を倒しちゃったし、下り坂を卵が勢いよく転がり落ちて、魔物を轢いちゃった気がするけど、見なかったことにしよう。
 大丈夫、きっとマスターは怒らない。

『ルルルー、ルルルー、ルルルルルー♪』

 卵を転がし、ようやくダンジョン出入り口になっている岩に着いた。

 ――ここで問題です。

『どう考えても出入り口より卵が大きいの、どうしよう~♪』

 歌いながら卵と出入り口を見比べる。
 僕が通るのにギリギリのサイズの出入り口だから、当然このままでは卵が入らない。

 でも、僕は土龍アースドラゴンという前例を知っているので! ダンジョンの柔軟性に期待して、卵を押し付けてみる。

『ほらほらお食べ。大切な卵だよー』

 ダンジョンも僕たちの仲間だよね? それならきっと協力してくれるはず。ダンジョンだってマスターのことが大好きでしょ。

 ぐいぐい、と卵を押していたら、唐突に抵抗がなくなった。さすがダンジョン! やってくれると思ってたよー。

 ダンジョンに飲み込まれる卵を追って、僕もひょいっと中へ戻った。

『お、スライムくん、出迎えどうもー』

 ダンジョンに入ってすぐのところは、ちょっとしたホールのように広い空間になっている。そこからいくつかの通路が伸びているんだけど、その通路からはスライムたちがひょっこりと僕を覗き見ていた。

 彼らも僕の仲間だから、とりあえず尻尾を振って挨拶をする。
 スライムたちはおっかなびっくりとした感じで、体からみょーんと手らしきものを伸ばして揺らした。おもしろい挨拶だねー。

 卵の横に座り、スライムたちとささやかな交流をしていたら、マスターの気配が近づいてきた。

「……うわ、帰ってくんの早っ。それに、マジで卵持って帰ってこれたんだな」

 マスターの口がポカンと開いてる。そして、卵をじっくりと眺めた後、僕を見て手を伸ばしてくる。僕が顔を寄せると、鼻筋を優しく撫でてくれた。

 マスターに撫でられると気持ちいいんだよー。でも、全身を撫でてもらいたくなっちゃうから、ちょっぴり困る。僕が小さくなれたら撫でてもらえるかなぁ?

『ただいまー』
「おかえり。どうやって、卵を運んだんだ?」
『転がしたんだよー。下り坂を勢いよく転がってておもしろかった!』

 卵を転がしていた時の話を、マスターは笑いながら聞いてくれた。

「やっば。卵転がして来るとは考えてなかったよ」
『そうなの? でも、丸いものは転がすのが一番手っ取り早い運び方だよね』
「そうだなー。卵の中身にとっては、たまったもんじゃないかもしれないけど」

 マスターが笑いながら卵を軽く叩く。いたわるような仕草だった。
 卵の中身、目を回しちゃったかな? うーん……古竜エンシェントドラゴンだから大丈夫な気がする!

『この卵、どこに置くの?』
古竜エンシェントドラゴン用の空間を作ったから、そこに転送するよ」

 マスターがそう言った途端、卵の下の地面に魔法陣が展開され光った。その一瞬後には卵が消える。

『あとは卵が孵るのを待つだけ?』
「そうだな。仲間になるのが待ち遠しいな」
「うん! 強い仲間は大歓迎だよー」

 マスターを守る頼もしい仲間ができそうで楽しみだね!
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

大陸を散策する聖女と滅ぶ王国~婚約破棄は引き金~

鷲原ほの
ファンタジー
傲慢な王子と侯爵令嬢が、厳しく制約された聖女を解き放ってしまう婚約破棄騒動。 犠牲を強いてきた王国は傾き、されど転生者は異世界の不思議に目を輝かせるだけ。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

処理中です...