ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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1-3.もふもふダンジョンの作り方〈公開前3日目〉

26.探る者たち

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 モニターにアリーの視界を映し出す。視界共有の能力で直接見るよりも見やすいかも。

 畑の脇の草むらにレジャーシートを敷いて座りながらモニターを眺めた。エンドとリルも見やすいように位置を調整してある。

『これが外?』
『外だよー。エンド、そこの丘にいたんだ。僕が連れてきたんだよ!』

 リルがエンドに教えてるのを聞きながら、イチゴジュースを飲んだ。ダンジョン内だと作物が早く育つから、新鮮なフルーツジュースを作れて嬉しい。さすがに果樹は数時間じゃ無理だったけど。

「丘って言っても、卵を持ってきたからもうないだろ」

 巨大なものを掘り返した跡が残る地面を眺めて呟く。改めて思ったけど、この大きさの卵を運べたリルってすごい。

『そうだねー。僕が卵を持ってきた時から変わってない感じに見える、けど……?』

 リルが首を傾げた。
 俺も違和感に気づいて、モニターを凝視する。

 土が露出した場所を動く者たちがいる。魔物かと思ったけど、よく見ると違った。

「人間?」

 どう見ても人の姿に見える。俺がよく知ってる馴染みのある姿とは違うけど。だって、獣のような耳と尻尾がある。

『獣人だね。狼族だと思うよ』
「へー。耳と尻尾だけじゃ、種類まではわからなかったな」

 リルの言葉に頷く。
 もふもふの耳と尻尾がついた人間って、知識としては知ってたけど、実際に見るとファンタジー感が強くて現実とは思えない。モニターで見てるせいか、映画でも見ているような気分だ。

『すごく警戒してるね』
「見てわかるのか?」
『うん、なんとなく。普通の人間だったらわかんないけど、狼族だからかな』

 リルは神狼フェンリルという狼系魔物だからか、狼族に少し親しみを覚えたようだ。魔物と人という大きな違いがあるのに、興味深い事実だな。もしかして、言葉が通じるなんてこともあり得るんだろうか。

『強い?』
『ううん。瞬殺できると思うよ』
『そっかぁ』

 一瞬で興味を失ったエンドと、親しみを覚えた相手をあっさりと倒せると明言したリルに、思わず頬が引き攣る。
 なんか怖い。さすが魔物だな。俺、絶対に敵対することのないダンジョンマスターで良かったよ。

『あらあら、もしかして、卵を監視していたのはこの人たちだったのかしら』

 コネクトを通してアリーの声が聞こえてきた。
 なるほど。監視用の小屋は獣人が管理していたものだった可能性は高い。確か、この山の麓には狼族獣人の街があったはずだし。

 アリーが姿を隠して獣人たちに忍び寄る。
 さすが隠密行動が得意の闇妖精ダークフェアリーだ。察知能力が高いとされる獣人に気づかれることなく、声が聞こえる距離まで近づいていた。

[ないな]
[ないっすね。姿も見えないっす]

 獣人の男たちが険しい顔で囁きあっている。周囲には、魔物を警戒している男たちもたくさんいた。調査員と護衛って感じかな。

 というか、今さらだけど、現地の人の言葉がわかるのが不思議だ。見た目は全然日本人じゃないのに、日本語を喋ってるように見える。

 ふと設定を見てみたら、通訳能力のところに〈現地語⇆日本語〉と書いてあった。至れり尽くせりでありがたい。

[一昨日の凄まじい音は、卵が孵った音だったってことかもね]

 女性の獣人が呟く。男たちが険しい顔で頷いた。

「……一昨日?」

 俺は首を傾げた。卵を運んだのは昨日のことだったはずだ。一昨日は俺がダンジョンに来た初日だし。
 初日にしたことと言えば……。

「——あ、リルが土龍アースドラゴンを捕獲したな」

 十中八九、女性獣人が言った凄まじい音は、リルと土龍アースドラゴンの戦いの際に生じたものだろう。

 リルを見ると、ほのぼのとした顔をしていた。

『戦った時の音かな。運んだ時の音かな』
「運んだ時もそんなに音がしてたのか?」
『たくさん木が倒れたね。魔物たちがわぁっと逃げてったのも、音かな? それとも気配?』
「あー……獣人なら、魔物の移動が激しくても騒がしく感じるかもな」

 頷く。リルがしたことが、それほどまでに影響力があったのだと、理解するのは難しくなかった。というか、当然だと思う。

 だって、戦った相手は土龍アースドラゴンだったし。古竜エンシェントドラゴンほどじゃなくても、強者と言われるドラゴンの一種であることは間違いない。

 俺とリルが話している間に、獣人たちの会話も続いていた。

[昨日の音はどう考える?]
[んー……昨日のは一昨日のものほど激しくなかったし、卵から孵った古竜エンシェントドラゴンが周辺の魔物を餌として狩った時の音かな]
[なるほど、その可能性は高いな]

 女性の言葉に男性が頷く。
 俺はエンドに視線を向けた。

『濡れ衣を着せられた気がする……解せぬ』

 非常に納得がいきません、と言いたげな顔をエンドがしていた。鳥っぽい竜の顔なのに感情表現が豊かだ。おもしろい。

「難しい言葉をよく知ってたな」
『なんか、ダンジョンの魔物としての知識が頭の中に入ってた』
「濡れ衣って、ダンジョンの魔物に必要な知識か??」

 リルの中途半端でよくわからない日本知識も変だけど、一般的なダンジョンの魔物の知識も謎だと思う。操人形マリオネとかは、すぐに現地人に馴染める言語力を持ってたし、魔物って謎の塊だ。

 世界の真理に至りそうな謎に意識を向けていたら、獣人たちの会話の流れが変わった。

[これ、どう国に報告する?]
[あいつら、俺らにここの管理任せてたくらいだし、大して関心ねぇんじゃね?]
[監視対象の卵がなくなったとなると、小屋管理料がなくなるな……]

 重々しい声で放たれた言葉の後に、沈黙が続いた。
 古竜エンシェントドラゴンが近場にいることより、管理任務終了による収入がなくなることの方が深刻な話なのか。それでいいのか。

「というか、監視の大本はこの国ってこと? 確かイリア国だったよな」

 タブレットで確認して頷く。
 古竜エンシェントドラゴンの影響力を考えたら、山の麓の獣人だけが対応してるより、国が主導して監視してる方が納得できる。

 再びモニターに視線を向ける。

[卵はまだあるってことにしよう]

 おい、それ、虚偽報告だろ。

[だな。どうせ国の役人たちは山の中まで見に来ねぇし]
[報告書に添える写真はどうする?]
[何回か前のを使い回せばいいだろ。バレたことないし]
[やったことあんのかよ]

 俺が思ったのと同じツッコミをしてくれた獣人がいた。
 監視してるわりに、国の対応が杜撰すぎるだろ。

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