ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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3-2.ダンジョンは止まらない

100.懸念は続く

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 俺たちが新たな空間作りを楽しんでいる間にも、操人形マリオネたちの依頼は進んでいた。

[よし、全員アイテムをもらえたな]
[はい。でも、これを持ってるだけで獣系魔物と戦わずに済むなんて、不思議ですね]

 ラッカルに対して、アイテム入手要員の冒険者が首を傾げる。

[俺が聞いたところによると、少なくとも一時間は効果があるらしいぞ? ダンジョン外でも効果があるかはわからないけどな]

 こう答えたラッカルに、各々が[へぇ……]と頷く。
 その後、周囲を警戒していたダダンが口を開いた。

[それより、さっさと帰ろうぜ。アイテムは余さずギルドに渡さなきゃならねぇし、ここにいる間にアンデッドや不可視の敵に襲われたらもったいねぇだろ]
[ここにいたら魔物に襲われないって聞いたわよ?]

 ダダンの言葉に、ルイリが不思議そうな顔で返す。
 すると、ダダンは[それ、ただの経験則だろ。ここで襲われたヤツがいねぇってだけで、襲われないと決まったわけじゃねぇ]と苦い顔で言った。

 意外とダダンはきちんと考えるタイプだったらしい。
 ラッカルもダダンに賛同する様子で頷いた。

[ここにはセーフティエリアのような特殊な空気は感じられない。つまり、魔物に襲われないのは、ダンジョンマスターの意思か、あるいはこの宗教というものの効果だな]
[宗教、なぁ……]

 ラッカルの言葉を聞いて、ダダンがなんとも言えない顔をする。小声で[もふもふ教って名前、ふざけすぎてるだろ]と納得できない様子で呟いていた。

「うん、それは俺もわかってるよ……」

 ラッカルたちの会話を聞きながら、俺はそっと目を逸らす。

 遊びの一環でもふもふ教を作っただなんて、彼らには聞かせられない。風変わりなダンジョンマスターっていう評価がさらに強まっちゃいそうだから。

 ……時すでに遅し、という気もするけど。

[宗教をどうこう言ったらダメよ]

 ダン街を目指して来た道を戻りながら、ルイリがダダンを注意する。
 気まずそうな様子のダダンと苦笑しているラッカルを見ながら、ルイリは言葉を続けた。

[――ダダンの気持ちはわからないでもないけど、絶対に狼族獣人の耳には入らないようにしてよね]
[狼族獣人って、飯屋やってる奴らか?]

 ダダンが不思議そうに問い返す。
 他の冒険者たちの中には[あー……]と思い当たる節がある様子を見せる者たちがいた。

「ロアンナたちがなんなんだ?」

 俺はモニターを眺めながら、首を傾げてしまう。

 ロアンナとはたまに顔を合わせるけど、いつもと変わった感じはなかった。
 たまに狼族村に行っても、そこにいる狼族獣人たちからは農作物の収穫量などの報告を受けるだけだ。

『あー……リルの影響ですね』
『リルだにゃー』
『というか、フェンリルだよね~』

 インク、ミーシャ、影兎シャドウラビたちの順で納得したように頷く。インクは遠い目をしてる気がする。

 リルの影響……もふもふ教……と単語を並べて、祈りの間をチラッと見て、俺もようやく察した。

「なるほど、神狼フェンリル崇拝」
『それです』

 インクが深く頷く。
 そっかー、狼族獣人たち、神狼フェンリル崇拝をまだやめてないのかー。やめる理由ないもんなー。

 狼族獣人と出会った頃から、彼らが神狼フェンリルを自分たちの種族の遠い祖先と考えて敬っていることはわかっていた。
 でも、咄嗟にそのことともふもふ教が上手く結びつかなかったのだ。

 だって、俺がもふもふ教なんて宗教を信じてないことくらい、狼族獣人たちはわかってるだろ!? もふもふ教がでっち上げ宗教だって察してるはずだろ!?

 それなのに、なんで冒険者たちの間で、狼族獣人たちはもふもふ教の信者みたいな勘違いが広がってるんだよ!

 俺がそんなことを主張してみると、インクが『勘違いじゃないんだと思いますよ?』と意外なことを言った。
 俺は思わずインクの顔を凝視する。ちょっと嫌な予感がするぞ……。

『リルは狼族獣人に跪かれるのを嫌がるので、彼らはもふもふ教の祈りの間を通して、リルに祈りを捧げることにしてるみたいです』
「嫌がられてるのわかってんならやめよう!?」

 そんなに神狼フェンリルを崇め奉りたいのか……狼族獣人たちの気持ちが全然わからない。
 俺はもふもふが好きだけど、それを拝もうとは思わないぞ。もふもふ教は作っちゃったけど。

 でも、言われてみたら、祈りの間でたまに狼族獣人たちを見かけてたなぁ……と思い出し、しょっぱい気分になる。
 マジで祈っちゃってるのかぁ。

『ご利益を求められちゃったら困るけど……今のところどうでもいいね!』
「リル、本当にそれでいいのか……」

 あっけらかんと言うリルを、俺は思わず呆然と見つめた。
 リルはにぱっと笑って尻尾を揺らす。

『うん。だって、実際は僕にもマスターにもなんの影響もないし』
「……リルの判断基準はよくわかったよ」

 最近は多少仲間認識してるように見えた狼族獣人たちに対しても、リルは結構クールな考え方をしているようだ。
 俺と俺以外の区別がハッキリしてる。まぁ、そんなことは初めからわかってたからいいんだけどさ。

『あ、ラッカルたちがダン街に辿り着きましたよー。操人形マリオネは用があるってことで、ダダンに自分が入手した加護アイテムを預けて地上を目指すみたいですー。報酬は地上のギルドで受け取るようですねー』

 サクがモニターを指して報告する。
 俺も視線を向けたが、そこに映る光景で気になることが一つあった。

「……ラッカル、すげー訝しげな目を操人形マリオネに向けてるよな?」
『ですねー』

 あっさりと肯定された。そんな簡単に流しちゃっていい状況かな?

 俺はうーん、と悩み、決断した。
 操人形マリオネが魔物だとバレたらデメリットが大きい。一旦、ダンジョン周辺から離れさせよう、と。

 幸い、マーレ町と契約を結んだことで、このダンジョン周辺を監視する必要性が低くなってるし。

操人形マリオネー、報酬受け取ったらこっちに一時帰還な」
『了解でーす』

 コネクトを使って指示を出したら、すぐに返答があった。
 さて、操人形マリオネにはどこに行っておいてもらおうかな……?

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