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雫の部屋
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「どう?改めて見て私の部屋は」
最初に雫の部屋に入ったときは霞の泣き声のインパクトが強すぎたため、じっくり見入ることができなかった。今は無人の状態なため何かに気を取られることもない。
「物が少ないですね」
率直な意見だった。雫の部屋は女子高生の部屋とは思えない殺風景な部屋だった。ベッド、テーブル、チェストなどの最低限必要な家具は置かれているが雑貨やアンティーク、飾り棚はまったくと言っていいほどない。余白が多い分、他の部屋より広々と感じる。少女らしいものといえば、隅に置かれたサイズが大きい淡いピンクのテディベアとドーナツ型のクッションだけだった。
「私、物欲ないんだよね。あ、ドーナツは別だけど」
「でしょうね」
「……それにしても」
雫は一呼吸置いた後、長押ラックに掛けられているあるものを眺める。それは殺される直前まで着用していた制服だった。白い線が入った茶色の襟に白いスカーフのセーラー服。
「見事なまでの飛び散りようだなぁ」
セーラー服は雫の血が大量に付着していた。正確には左肩の襟部分から左斜め下までしぶきのように飛び散っている。白いトップスとスカーフが今や血で汚れ、生々しいものになっていた。
現在、霊となってしまった雫の着ている制服は黒一色に染まっている。皮肉にもこの黒に染まった制服なら血はそれほど目立たなかっただろう。
「もう関係ないけど、綺麗にしてくれないかなぁ」
雫は血で汚れた制服に近づき呟いた。
「見たところ、血で汚れてはいますが傷ついてはいませんね」
玖月は雫の後ろから制服を眺める。玖月の言う通り、制服に血が付着はしているが刃物の跡や銃弾の穴のような傷は一つもなかった。つまり、制服の上からは攻撃されなかったことがわかる。
「制服だけじゃわかんないから、あとは死体を調べよう」
「そうですね」
二人は視線を制服からベッドに置かれた亡骸に移した。
「それにしても私、死ぬときはもっとエグい死に方をすると思っていたよ」
「エグい?」
「拷問での発狂死とか四肢切り落とされての出血死とか。最悪死骸はカラスか魚の餌になるのかな、って」
「淡々と言いますね」
「理解してるつもりだからね、自分のやってること。安らかに死なせてもらおうなんて、さすがに図々しいからね……いや、死に方を選ぼうをすること自体図々しいか」
雫は仰向けに寝かされている己の亡骸を頭のてっぺんから足のつま先まで凝視する。目を閉じ、痛みに絶叫した様子も人為的に破壊されているわけでもない安らかな顔だった。体も一見、四肢が伸びており今にも動きそうなほど綺麗にとどまっている。雫は己の顔をより近くで見ようと体をふわっと浮かせ、横たわった己の亡骸と向かい合わせになるような形になった。
「こうして見ると私……」
「何か気づきました?」
「寝顔そんなにかわいくないな」
雫は顎に手を当て、食い入るように己の顔を見ながらさらに続ける。
「髪もっと長いほうが少しはマシになるかな」
雫は視線を髪に移した。雫の髪形はゆるいウェーブがかかったミディアムヘアだった。目の前のシーツに流されている毛髪の代わりに、確かめるように己の髪を触った。
「私、ひと月ぐらい前までは腰までのロングヘアだったんだよね。でも、任務での銃撃のせいであやまってペンキが髪に大量についちゃって、しかたなしに切る羽目になっちゃったんだ。まぁ、そのときは涼しくなるからちょうどいいかなって思ったんだけどこうして見るとロングのほうが私に似合ってるかも」
「………」
「玖月くんはどう思う?ロングとショートどっちが似合うと思う?」
「………」
「そんな目で見ないでよ。ただの世間話じゃんか」
「僕は早くあなたの死の真相を解きたいんです。そして、次の仕事に移りたいんです」
「いいじゃんか。これくらいの冗談で場を和ませたって。死んだ自分が目の前にあるのって気分のいいもんじゃないからね」
「すみません。まったく滅入っているようには見えなかったので」
やはり玖月は表情も口調もまったく変えないままだ。
「生真面目だなぁ。ごめんごめん、ちゃんと調べると」
軽く苦笑し、改めて自分の亡骸と向き合った。
「髪の毛で少しわかりにくいけど、たぶん死因はこれだろうね」
雫は右付近の首の付け根を指差す。玖月もそれに促され、刺された部分に視線を送った。直径2センチほどの細く、深い溝のような傷口がある。傷の周囲の皮膚は固まり、皮下組織がわずかに顔をのぞかせていた。しかし、清拭してくれたからなのか傷口の周囲は血で醜く汚れてはいなかった。傷口は髪の毛先に半分ほど隠れており、遠目ではわかりにくくなっている。
「これで間違いないと思う」
「つまり、死因は首の頸動脈を切られての出血死ということですか」
「たぶんね。たいへんだったろうなぁ、後始末。傷深いからけっこう飛び散ったと思う」
傷口を見ると大量の血が噴出したと推測できる。おそらく、現場で多方面に雫の血が飛び散っていただろう。それを短時間で跡形もなく処理するなんてさすがとしか言いようがない。
「本当に覚えていないんですか?これほどわかりやすく首を刺されたとわかるのに」
玖月は少し眉を顰めながら問いかける。見たところ、死因は頸動脈を切られての出血死。これほど凶器を深々と首元を抉られたにもかかわらず、雫は犯人の顔どころか刺されたこと自体思い出すことがなかった。突発的な事故で一時期死んだ前後の記憶があやふやな霊はいるが、それでも時間が経てば徐々に思い出すことが常だった。
「それが本当に覚えていないんだよね。自分でも不思議なほどに」
雫は記憶を思い起こそうとしてはみたが、かすりもしなかった。
犯人の顔も刺された痛みもその瞬間も。
「厄介ですね」
「苦労かけるよ」
辟易と話す玖月に対し、雫は軽く笑う。
「他に何か気づいたことはありますか?」
玖月は宙で亡骸と向き合ったままの雫に投げかける。
「そうだねぇ」
雫は髪で半分隠れた傷口に手を伸ばす。しかし、すり抜けるだけで髪を払うことができない。
「触れたらいいんだけど触れないんだよね」
傷口をもっとはっきり目にしたいのに触れそうで触れない。もどかしい思いが駆け巡る。
「でもこの傷口、似てるかも」
すべて見えているわけではないが、確認できなくもない。雫は傷口から凶器が何なのか、覚えがあるらしい。
「そうだとしたら」
雫は浮遊をやめ、立ち上がった。雫はもう一度、制服に近寄りスカートを目を細めて凝視する。
「やっぱり見ただけじゃわかんないなぁ」
「何を探してるのですか?凶器が何なのか特定したのですか?」
「まだ断言はできないけど、可能性は高いと思う」
雫は制服に近づけていた顔を離し、振り返った。
「私がいつも持ち歩いていたナイフね。主に護身用として」
「ナイフですか」
「ただのナイフじゃないよ。折りたたみ式の万能ナイフ。ナイフの他にドライバーとかはさみとかのこぎりとか付いているんだ。吹雪くんが私専用に改造してくれたからけっこう使いやすいやつね」
「傷口を見ただけでわかったんですか?」
「断言はやっぱりまだ、できないな。でもそのナイフはよく殺しの仕事でも使っていたから見慣れた刺し傷だと思って」
「そのナイフ、死ぬ直前まで持ってました?」
「もちろん、スカートのポケットの中に」
雫は掛けてある制服のスカートを指差す。
「そんなに大きなものじゃないから入っているかどうかわかんないや。もし、ポケットになかったら凶器で決まりだと思う」
手で触れれば一発でわかる。しかし、魂だけの体ではどうすることもできない。
「でも、もしポケットになかったとしたら凶器はどこに」
玖月は顎に手を当てて呟いた。雫のスカートのポケットにナイフがなかった場合、疑念が確信に変わるだろう。凶器は雫が持ち歩いていた折りたたみ式のナイフだと。
だが、新たな疑問も生まれる。凶器の行方という疑問がだ。
「現場には何も落ちてはいなかったはずです……もしかして薄暗かったから見逃したのでしょうか」
「いや、それはないと思う。わずかな血痕も残さないように後処理していた3人が血の付いた凶器に気づかないはずないからね」
「では」
「部屋に置かれていないところを見るとたぶん、3人の誰かがまだ持ってると思う」
雫はぐるりと部屋を見渡す。
「やっぱり、幽霊の体って不便だね、何も触れないんだから。もしかして置かれたんじゃなく棚に仕舞われたかもしれないし」
雫は手を広げ、やれやれといった仕草をする。
「でももし凶器が雫さんのナイフだと判明した場合、ますますわからなくなりますね。殺された時の状況が」
「ほんと。真相に迫ろうとすればするほど謎が深まっちゃってる感じ」
雫は辟易とする思いで、天を仰ぐ。凶器が常に持ち歩いていたナイフだとすると、次の疑問も当然でてくる。
なぜ、雫のナイフが凶器になったのか。いつ、ポケットから出されたのか。殺されたとき、一体どういう状況だったのか。
「私、今日誰かと乱闘した覚えもないし、ましてやナイフを奪われた記憶もないんだ。ほんとわけわかんないや」
「雫さんがその時の状況を思い出せばすぐに解決できるのですが」
「ごめん、やっぱり無理」
雫は軽く首を振る。ふと、掛け時計に目が行った。
「もうこんな時間か。夕食には遅い時間だ」
20時40分だった。
「私たちも下に降りない?部屋や死体は一通り見たからね。皆の様子も見たいし」
「そうですね。何気ない会話で真相へのヒントもあるかもしれませんし」
余白の多い部屋だが二人は念のためもう一度見て回り、気になるところが何もないところを確認して部屋から出ようとする。雫は部屋から出ようとするとき、一瞬横目で己の亡骸を見た。
「……ほんと変な感じ」
最初に雫の部屋に入ったときは霞の泣き声のインパクトが強すぎたため、じっくり見入ることができなかった。今は無人の状態なため何かに気を取られることもない。
「物が少ないですね」
率直な意見だった。雫の部屋は女子高生の部屋とは思えない殺風景な部屋だった。ベッド、テーブル、チェストなどの最低限必要な家具は置かれているが雑貨やアンティーク、飾り棚はまったくと言っていいほどない。余白が多い分、他の部屋より広々と感じる。少女らしいものといえば、隅に置かれたサイズが大きい淡いピンクのテディベアとドーナツ型のクッションだけだった。
「私、物欲ないんだよね。あ、ドーナツは別だけど」
「でしょうね」
「……それにしても」
雫は一呼吸置いた後、長押ラックに掛けられているあるものを眺める。それは殺される直前まで着用していた制服だった。白い線が入った茶色の襟に白いスカーフのセーラー服。
「見事なまでの飛び散りようだなぁ」
セーラー服は雫の血が大量に付着していた。正確には左肩の襟部分から左斜め下までしぶきのように飛び散っている。白いトップスとスカーフが今や血で汚れ、生々しいものになっていた。
現在、霊となってしまった雫の着ている制服は黒一色に染まっている。皮肉にもこの黒に染まった制服なら血はそれほど目立たなかっただろう。
「もう関係ないけど、綺麗にしてくれないかなぁ」
雫は血で汚れた制服に近づき呟いた。
「見たところ、血で汚れてはいますが傷ついてはいませんね」
玖月は雫の後ろから制服を眺める。玖月の言う通り、制服に血が付着はしているが刃物の跡や銃弾の穴のような傷は一つもなかった。つまり、制服の上からは攻撃されなかったことがわかる。
「制服だけじゃわかんないから、あとは死体を調べよう」
「そうですね」
二人は視線を制服からベッドに置かれた亡骸に移した。
「それにしても私、死ぬときはもっとエグい死に方をすると思っていたよ」
「エグい?」
「拷問での発狂死とか四肢切り落とされての出血死とか。最悪死骸はカラスか魚の餌になるのかな、って」
「淡々と言いますね」
「理解してるつもりだからね、自分のやってること。安らかに死なせてもらおうなんて、さすがに図々しいからね……いや、死に方を選ぼうをすること自体図々しいか」
雫は仰向けに寝かされている己の亡骸を頭のてっぺんから足のつま先まで凝視する。目を閉じ、痛みに絶叫した様子も人為的に破壊されているわけでもない安らかな顔だった。体も一見、四肢が伸びており今にも動きそうなほど綺麗にとどまっている。雫は己の顔をより近くで見ようと体をふわっと浮かせ、横たわった己の亡骸と向かい合わせになるような形になった。
「こうして見ると私……」
「何か気づきました?」
「寝顔そんなにかわいくないな」
雫は顎に手を当て、食い入るように己の顔を見ながらさらに続ける。
「髪もっと長いほうが少しはマシになるかな」
雫は視線を髪に移した。雫の髪形はゆるいウェーブがかかったミディアムヘアだった。目の前のシーツに流されている毛髪の代わりに、確かめるように己の髪を触った。
「私、ひと月ぐらい前までは腰までのロングヘアだったんだよね。でも、任務での銃撃のせいであやまってペンキが髪に大量についちゃって、しかたなしに切る羽目になっちゃったんだ。まぁ、そのときは涼しくなるからちょうどいいかなって思ったんだけどこうして見るとロングのほうが私に似合ってるかも」
「………」
「玖月くんはどう思う?ロングとショートどっちが似合うと思う?」
「………」
「そんな目で見ないでよ。ただの世間話じゃんか」
「僕は早くあなたの死の真相を解きたいんです。そして、次の仕事に移りたいんです」
「いいじゃんか。これくらいの冗談で場を和ませたって。死んだ自分が目の前にあるのって気分のいいもんじゃないからね」
「すみません。まったく滅入っているようには見えなかったので」
やはり玖月は表情も口調もまったく変えないままだ。
「生真面目だなぁ。ごめんごめん、ちゃんと調べると」
軽く苦笑し、改めて自分の亡骸と向き合った。
「髪の毛で少しわかりにくいけど、たぶん死因はこれだろうね」
雫は右付近の首の付け根を指差す。玖月もそれに促され、刺された部分に視線を送った。直径2センチほどの細く、深い溝のような傷口がある。傷の周囲の皮膚は固まり、皮下組織がわずかに顔をのぞかせていた。しかし、清拭してくれたからなのか傷口の周囲は血で醜く汚れてはいなかった。傷口は髪の毛先に半分ほど隠れており、遠目ではわかりにくくなっている。
「これで間違いないと思う」
「つまり、死因は首の頸動脈を切られての出血死ということですか」
「たぶんね。たいへんだったろうなぁ、後始末。傷深いからけっこう飛び散ったと思う」
傷口を見ると大量の血が噴出したと推測できる。おそらく、現場で多方面に雫の血が飛び散っていただろう。それを短時間で跡形もなく処理するなんてさすがとしか言いようがない。
「本当に覚えていないんですか?これほどわかりやすく首を刺されたとわかるのに」
玖月は少し眉を顰めながら問いかける。見たところ、死因は頸動脈を切られての出血死。これほど凶器を深々と首元を抉られたにもかかわらず、雫は犯人の顔どころか刺されたこと自体思い出すことがなかった。突発的な事故で一時期死んだ前後の記憶があやふやな霊はいるが、それでも時間が経てば徐々に思い出すことが常だった。
「それが本当に覚えていないんだよね。自分でも不思議なほどに」
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玖月は顎に手を当てて呟いた。雫のスカートのポケットにナイフがなかった場合、疑念が確信に変わるだろう。凶器は雫が持ち歩いていた折りたたみ式のナイフだと。
だが、新たな疑問も生まれる。凶器の行方という疑問がだ。
「現場には何も落ちてはいなかったはずです……もしかして薄暗かったから見逃したのでしょうか」
「いや、それはないと思う。わずかな血痕も残さないように後処理していた3人が血の付いた凶器に気づかないはずないからね」
「では」
「部屋に置かれていないところを見るとたぶん、3人の誰かがまだ持ってると思う」
雫はぐるりと部屋を見渡す。
「やっぱり、幽霊の体って不便だね、何も触れないんだから。もしかして置かれたんじゃなく棚に仕舞われたかもしれないし」
雫は手を広げ、やれやれといった仕草をする。
「でももし凶器が雫さんのナイフだと判明した場合、ますますわからなくなりますね。殺された時の状況が」
「ほんと。真相に迫ろうとすればするほど謎が深まっちゃってる感じ」
雫は辟易とする思いで、天を仰ぐ。凶器が常に持ち歩いていたナイフだとすると、次の疑問も当然でてくる。
なぜ、雫のナイフが凶器になったのか。いつ、ポケットから出されたのか。殺されたとき、一体どういう状況だったのか。
「私、今日誰かと乱闘した覚えもないし、ましてやナイフを奪われた記憶もないんだ。ほんとわけわかんないや」
「雫さんがその時の状況を思い出せばすぐに解決できるのですが」
「ごめん、やっぱり無理」
雫は軽く首を振る。ふと、掛け時計に目が行った。
「もうこんな時間か。夕食には遅い時間だ」
20時40分だった。
「私たちも下に降りない?部屋や死体は一通り見たからね。皆の様子も見たいし」
「そうですね。何気ない会話で真相へのヒントもあるかもしれませんし」
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