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「ああもう……出遅れた……」
今日は先生に雑用を頼まれたせいで、終わった頃には昼休みが始まりだいぶ経ってしまっていた。今日はあまり何かする時間も無いが一応見に行かないと。足早に階段を駆け上がり屋上に向かうと、扉の向こうで影が動いた気がした。
「……?」
そっと扉を開けて中を覗く。予想通り、また一葉は日陰で眠っているようだった。しかし今日は何だかいつもと違う感じがする。
「いいよな?ちょっとだけだから……」
聞こえるはずのない声が聞こえた。一葉の声じゃない……ちょっと待て、もしかして。混乱する中、嫌な汗が流れた。
意を決して目の前まで行くと、そこには眠る一葉の唇にキスをする高橋の姿があった。
「は?」
自分でも驚くほど低い声が出た。心の中で沸々と湧き上がる感情があった。これはきっと怒りだ。俺だけが触れていたい聖域に入り込んできた奴を見逃すことなどできない。恐る恐る振り返る高橋と目が合った。
「……えっ、戸波!?」
俺に気付いた高橋は慌てて一葉から離れたが、もう遅かった。離れる直前まで一葉の服の中に手を入れていたのがしっかり見えたのだ。どうにか冷静でいようと気持ちを言葉に出した声は震えていた。
「何してんだよ……俺の一葉に……」
「いや、何を勝手に有馬を自分のものにしてんの?あっもしかして……まだしてなかったんだ。ははっ、悪いな、俺が初めて奪っちゃって!」
嘲笑うかのような高橋の顔を見た瞬間、思わず手が出ていた。左頬を一発、高橋は何が起こったか分からずしばらくぽかんとしていた。数秒経ってから我に返り頬を抑えて騒ぎ出した。
「いっっった!お前マジかよ!」
「おい騒ぐな、一葉が起きるだろ」
「いやお前がっ……」
思い切り高橋を睨み付けると、言い返そうとした高橋は悔しそうな顔をして言葉を飲み込んだようだった。
「クッソ……絶対これ跡になってんじゃん。まあ良いや、後で有馬に慰めてもらお」
「こいつっ……!」
「どうせお前だって同じことしようとしてたんだろ?有馬にはもうやめとけって忠告しといてやるよ」
殴られても構わず高橋はずっと煽ってくるので頭の血管が切れそうになった。もう一発殴ってやろうか、この男。しかしもうそろそろ授業が始まってしまう。一葉が起きてしまう前に戻らなければ。怒りを爆発させたい気持ちを我慢し、その場から去ることにした。
そして、次の日から一葉は昼寝をしなくなった。
今日は先生に雑用を頼まれたせいで、終わった頃には昼休みが始まりだいぶ経ってしまっていた。今日はあまり何かする時間も無いが一応見に行かないと。足早に階段を駆け上がり屋上に向かうと、扉の向こうで影が動いた気がした。
「……?」
そっと扉を開けて中を覗く。予想通り、また一葉は日陰で眠っているようだった。しかし今日は何だかいつもと違う感じがする。
「いいよな?ちょっとだけだから……」
聞こえるはずのない声が聞こえた。一葉の声じゃない……ちょっと待て、もしかして。混乱する中、嫌な汗が流れた。
意を決して目の前まで行くと、そこには眠る一葉の唇にキスをする高橋の姿があった。
「は?」
自分でも驚くほど低い声が出た。心の中で沸々と湧き上がる感情があった。これはきっと怒りだ。俺だけが触れていたい聖域に入り込んできた奴を見逃すことなどできない。恐る恐る振り返る高橋と目が合った。
「……えっ、戸波!?」
俺に気付いた高橋は慌てて一葉から離れたが、もう遅かった。離れる直前まで一葉の服の中に手を入れていたのがしっかり見えたのだ。どうにか冷静でいようと気持ちを言葉に出した声は震えていた。
「何してんだよ……俺の一葉に……」
「いや、何を勝手に有馬を自分のものにしてんの?あっもしかして……まだしてなかったんだ。ははっ、悪いな、俺が初めて奪っちゃって!」
嘲笑うかのような高橋の顔を見た瞬間、思わず手が出ていた。左頬を一発、高橋は何が起こったか分からずしばらくぽかんとしていた。数秒経ってから我に返り頬を抑えて騒ぎ出した。
「いっっった!お前マジかよ!」
「おい騒ぐな、一葉が起きるだろ」
「いやお前がっ……」
思い切り高橋を睨み付けると、言い返そうとした高橋は悔しそうな顔をして言葉を飲み込んだようだった。
「クッソ……絶対これ跡になってんじゃん。まあ良いや、後で有馬に慰めてもらお」
「こいつっ……!」
「どうせお前だって同じことしようとしてたんだろ?有馬にはもうやめとけって忠告しといてやるよ」
殴られても構わず高橋はずっと煽ってくるので頭の血管が切れそうになった。もう一発殴ってやろうか、この男。しかしもうそろそろ授業が始まってしまう。一葉が起きてしまう前に戻らなければ。怒りを爆発させたい気持ちを我慢し、その場から去ることにした。
そして、次の日から一葉は昼寝をしなくなった。
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