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2破滅
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その日はひどく疲れていて、なんだかとても眠かった。
「お前が悪い」
声に目を開くと僕の首を絞める人影があった。兄さんだった。 首を絞める力が弱い。
「俺の家族をめちゃくちゃにしやがって!!」
こんな力では赤子を殺すのでもせいいっぱいかもしれない。
僕は兄さん目掛けて近くにあったものを投げつけた。目覚まし時計は派手な音を立てて床にころがる。兄さんが一瞬ひるんだ隙に、僕は部屋を飛び出した。
リビングから光が漏れている。
そこでは母も父も目がうつろでぼんやりと僕を見ていた。
「トモ!! 待て!!」
後ろから兄さんの声が追いかけてくる。
僕の脳裏にはいつもしていた鬼ごっこの景色が甦る。僕は外に駆け出した。
兄さんの足はとても遅い。ただ意思だけが肥大化したかのように鬼気迫る気配だけはすぐ後ろにある。
家を飛び出し、空を見ながら走る。
僕の姿が滑稽にみえるのか満月が笑っている気がした。足音が三人分追いかけてくる。家族で追いかけてきたようだ。
僕はいつの間にか夢の中にいたようだ。いつまでも同じ十字路がずっと続いている。
ここはいつも僕とミライが遊んでいる夢の中だ。現実と夢の境目、何度目かしれない十字路で、ミライが僕に向かって微笑んだ。
「家族というものは良いものだね」
僕らはいつもこうやって鬼ごっこをする。捕まえるのは僕ら以外の鬼だ。
いつも僕が囮で、ミライがもう一人を後ろから殴りかかる。
動きを鈍らせたその隙に、僕がもう一人を食べてしまう。そして最後には火を灯して全部消してしまう。
病院から出て、はじめて夢の出来事が不審火としてニュースになっていることを知った。
ほとんどの鬼は言わないが、みんなそれぞれ特異な能力を持っている。
鬼にもいくつか種類があり、精神を蝕まれ食われる側の人間。そして、鬼すら食う鬼がいる。
それが僕らだ。ミライの力を借りて夢の中で僕らは狩りをする。
鬼以外には巻き込まれて半ば人間としての思考を失ってしまう人なんかもいるが、今回は父と母がそうだった。
「トモ! お前が来てからみんなおかしくなったんだ!!!!」
リクは憎悪を顔いっぱいに浮かべて僕の元へ走って来た。
いつもここ寸前のところでミライが、追いかけてきた『鬼』を殴る。
「ごめんトモ」
兄さんを止めるそぶりを一つも見せずにミライは言った。手に灯油缶を持っている。
その瞳は見たことがないくらいに冷たい。
「面倒なんだよね、君さ」
「何だよそれ!」
兄さんが僕に触れ、父や母も僕に触れた。
家族の親交を深めるためじゃない。僕を殺す為だ。
そういえば、人は親交を深めるために抱きしめ合うこともあると映画で学んだ。僕が『家』に帰ってから、父や母は僕に触れてくれたこと、あったっけ……。
兄さんは力が弱すぎて僕を殺せなかったのは理解していたようで、母が僕の首を絞め、父が僕の体を抑えて、じわじわと意識を奪われていく……。
兄さんは傀儡をあやつる能力に目覚めたようだ。
意識のない人間は力のセーブなんてしない。僕がいくら暴れても拘束はとけなかった。
僕は特別なんだ。
食われる側じゃない。食う側だ!!
「お前が悪い」
声に目を開くと僕の首を絞める人影があった。兄さんだった。 首を絞める力が弱い。
「俺の家族をめちゃくちゃにしやがって!!」
こんな力では赤子を殺すのでもせいいっぱいかもしれない。
僕は兄さん目掛けて近くにあったものを投げつけた。目覚まし時計は派手な音を立てて床にころがる。兄さんが一瞬ひるんだ隙に、僕は部屋を飛び出した。
リビングから光が漏れている。
そこでは母も父も目がうつろでぼんやりと僕を見ていた。
「トモ!! 待て!!」
後ろから兄さんの声が追いかけてくる。
僕の脳裏にはいつもしていた鬼ごっこの景色が甦る。僕は外に駆け出した。
兄さんの足はとても遅い。ただ意思だけが肥大化したかのように鬼気迫る気配だけはすぐ後ろにある。
家を飛び出し、空を見ながら走る。
僕の姿が滑稽にみえるのか満月が笑っている気がした。足音が三人分追いかけてくる。家族で追いかけてきたようだ。
僕はいつの間にか夢の中にいたようだ。いつまでも同じ十字路がずっと続いている。
ここはいつも僕とミライが遊んでいる夢の中だ。現実と夢の境目、何度目かしれない十字路で、ミライが僕に向かって微笑んだ。
「家族というものは良いものだね」
僕らはいつもこうやって鬼ごっこをする。捕まえるのは僕ら以外の鬼だ。
いつも僕が囮で、ミライがもう一人を後ろから殴りかかる。
動きを鈍らせたその隙に、僕がもう一人を食べてしまう。そして最後には火を灯して全部消してしまう。
病院から出て、はじめて夢の出来事が不審火としてニュースになっていることを知った。
ほとんどの鬼は言わないが、みんなそれぞれ特異な能力を持っている。
鬼にもいくつか種類があり、精神を蝕まれ食われる側の人間。そして、鬼すら食う鬼がいる。
それが僕らだ。ミライの力を借りて夢の中で僕らは狩りをする。
鬼以外には巻き込まれて半ば人間としての思考を失ってしまう人なんかもいるが、今回は父と母がそうだった。
「トモ! お前が来てからみんなおかしくなったんだ!!!!」
リクは憎悪を顔いっぱいに浮かべて僕の元へ走って来た。
いつもここ寸前のところでミライが、追いかけてきた『鬼』を殴る。
「ごめんトモ」
兄さんを止めるそぶりを一つも見せずにミライは言った。手に灯油缶を持っている。
その瞳は見たことがないくらいに冷たい。
「面倒なんだよね、君さ」
「何だよそれ!」
兄さんが僕に触れ、父や母も僕に触れた。
家族の親交を深めるためじゃない。僕を殺す為だ。
そういえば、人は親交を深めるために抱きしめ合うこともあると映画で学んだ。僕が『家』に帰ってから、父や母は僕に触れてくれたこと、あったっけ……。
兄さんは力が弱すぎて僕を殺せなかったのは理解していたようで、母が僕の首を絞め、父が僕の体を抑えて、じわじわと意識を奪われていく……。
兄さんは傀儡をあやつる能力に目覚めたようだ。
意識のない人間は力のセーブなんてしない。僕がいくら暴れても拘束はとけなかった。
僕は特別なんだ。
食われる側じゃない。食う側だ!!
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