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呪われ王の技術革新
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ある国にとても交渉上手な帝王がおりました。
先祖代々から続くとても長く続いた帝国でした。
ちょうど百代目にあたるルイス王は今では名君と国民の間で評判です。
幼い頃から離宮で暮らしていた彼は、宮からなかなか外に出ない引きこもり。公務で外にでても夏でもまるでそこだけ冬であるかのように服を着こんでいました。
そのせいで幼い頃から、何かの呪いなのではないか、と噂されていました。
体中に呪いのアザが広がっているだとか。
体には魔物のようなウロコが生えているだとか。
そんな根も葉もない噂が広がっていました。ですが、一つ本当のことがありました。
それは彼が呪われているという点です。
ルイスの体は常に冷え切っていて、離宮は常に真夏かのように魔法で温度が保たれていました。夏でも長袖を着ている彼を周囲は不気味に思うとともに可哀想だと哀れむのでした。
豊かな国であるがゆえ、それまでに流された血は数知れず。数百年にも及ぶ呪いが時折こうして小さな呪いとなって血筋の体に現れるのでした。
もちろん、そんな酷い寒がりの彼に王位を継ぐ継承権などありませんでした。剣が出来ても、勉強が出来ても、とても綺麗でかわいらしい婚約者と結ばれても、彼は王様にはなれません。
なれないはずでした。
ですが、何の因果かルイス以外にいた王位を継ぐべき王子や姫たちが次々と継承権を捨てたのでした。
四人もいた王子や姫たち。
王太子と言われていた王子が隣国の王族と運命的に出会い、留学と共にそちらで恋愛結婚をしてしまいました。
姫たちは既に降嫁が決まっており、そして女王は認められてはいませんでした。
もう一人の王子は強大な精霊と契約し、力のコントロールのために神殿へ。高潔なる精霊の意思により、王ではなく人民に寄り添って生きていくことになってしまった。
そうして離宮でひっそりと魔法に守られていたルイスは急に王さまになることになったのです。
常にルイスの隣には魔法使いがおり、温度調整の魔法を使っていました。おかげでどうにか公務をこなし生活することができました。
困ったのは周りの人間です。
ルイスの周囲は常に真夏のように暑いのですから。
自然と付き従う侍従は薄着になりました。
時折、体調が悪くなり倒れるものも出るくらいでした。
自身の魔法で意図せず人が倒れていく姿を見て傷ついた魔法使いは、彼らのために魔法を無効にするアイテムを作成して渡しました。
こちらの国におもむいて他国との会談が行われる時、ルイスやルイスの周りにいる人間は涼しい顔で対応していました。
ですが他国の人間はたまったものではありません。
精神支配の魔法を心配し、その部屋には魔法が無効になる結界が貼られていました。暖炉で暖かくしたその部屋は、やはり真夏のように暑いのでした。
ルイス王の周りにいるものは派閥を越えて協力していました。一番の敵は暑さであり敵対派閥ではないのです。そしてお互いが倒れ、支え合い、この奇妙な仕事場で戦う仲間なのです!
魔法使いも例外ではありません。彼らのために出来るだけ涼しい衣服を用意するために所属組織の力を使って研究に研究を重ねました。
カガクと呼ばれていた古代技術を使い、何のために存在していたのか分からない小さなファンを組み込んだ衣服を開発しました。
他国の使節たちは暑さで冷静な対処が難しく、どうしても有利に立てません。それにこの部屋にいる使用人たちは近くによると風車が高速回転するかのような不思議な音がするのです。
頭がおかしくなりそうでした。
こうして難しい交渉も、負けではなく引き分けに持ち込んでいったルイスは呪いを逆手に取り、太平の世を作ることに成功しました。
彼の兄弟や姉妹たちも協力し、この国はとても平和になりました。呪われた王子は、名君と称えられるようになりました。
後世ではルイスはとても冷え性だったと伝えられています。同じようにひどい冷え性であった遠方の国のお姫さまを王妃に迎え、二人は幸せに暮らしました。
二人のいる所は真夏のように暑く、ここから温度調整の魔法を使って真冬でも夏に収穫できる野菜を栽培するなど技術革新が進みました。
先祖代々から続くとても長く続いた帝国でした。
ちょうど百代目にあたるルイス王は今では名君と国民の間で評判です。
幼い頃から離宮で暮らしていた彼は、宮からなかなか外に出ない引きこもり。公務で外にでても夏でもまるでそこだけ冬であるかのように服を着こんでいました。
そのせいで幼い頃から、何かの呪いなのではないか、と噂されていました。
体中に呪いのアザが広がっているだとか。
体には魔物のようなウロコが生えているだとか。
そんな根も葉もない噂が広がっていました。ですが、一つ本当のことがありました。
それは彼が呪われているという点です。
ルイスの体は常に冷え切っていて、離宮は常に真夏かのように魔法で温度が保たれていました。夏でも長袖を着ている彼を周囲は不気味に思うとともに可哀想だと哀れむのでした。
豊かな国であるがゆえ、それまでに流された血は数知れず。数百年にも及ぶ呪いが時折こうして小さな呪いとなって血筋の体に現れるのでした。
もちろん、そんな酷い寒がりの彼に王位を継ぐ継承権などありませんでした。剣が出来ても、勉強が出来ても、とても綺麗でかわいらしい婚約者と結ばれても、彼は王様にはなれません。
なれないはずでした。
ですが、何の因果かルイス以外にいた王位を継ぐべき王子や姫たちが次々と継承権を捨てたのでした。
四人もいた王子や姫たち。
王太子と言われていた王子が隣国の王族と運命的に出会い、留学と共にそちらで恋愛結婚をしてしまいました。
姫たちは既に降嫁が決まっており、そして女王は認められてはいませんでした。
もう一人の王子は強大な精霊と契約し、力のコントロールのために神殿へ。高潔なる精霊の意思により、王ではなく人民に寄り添って生きていくことになってしまった。
そうして離宮でひっそりと魔法に守られていたルイスは急に王さまになることになったのです。
常にルイスの隣には魔法使いがおり、温度調整の魔法を使っていました。おかげでどうにか公務をこなし生活することができました。
困ったのは周りの人間です。
ルイスの周囲は常に真夏のように暑いのですから。
自然と付き従う侍従は薄着になりました。
時折、体調が悪くなり倒れるものも出るくらいでした。
自身の魔法で意図せず人が倒れていく姿を見て傷ついた魔法使いは、彼らのために魔法を無効にするアイテムを作成して渡しました。
こちらの国におもむいて他国との会談が行われる時、ルイスやルイスの周りにいる人間は涼しい顔で対応していました。
ですが他国の人間はたまったものではありません。
精神支配の魔法を心配し、その部屋には魔法が無効になる結界が貼られていました。暖炉で暖かくしたその部屋は、やはり真夏のように暑いのでした。
ルイス王の周りにいるものは派閥を越えて協力していました。一番の敵は暑さであり敵対派閥ではないのです。そしてお互いが倒れ、支え合い、この奇妙な仕事場で戦う仲間なのです!
魔法使いも例外ではありません。彼らのために出来るだけ涼しい衣服を用意するために所属組織の力を使って研究に研究を重ねました。
カガクと呼ばれていた古代技術を使い、何のために存在していたのか分からない小さなファンを組み込んだ衣服を開発しました。
他国の使節たちは暑さで冷静な対処が難しく、どうしても有利に立てません。それにこの部屋にいる使用人たちは近くによると風車が高速回転するかのような不思議な音がするのです。
頭がおかしくなりそうでした。
こうして難しい交渉も、負けではなく引き分けに持ち込んでいったルイスは呪いを逆手に取り、太平の世を作ることに成功しました。
彼の兄弟や姉妹たちも協力し、この国はとても平和になりました。呪われた王子は、名君と称えられるようになりました。
後世ではルイスはとても冷え性だったと伝えられています。同じようにひどい冷え性であった遠方の国のお姫さまを王妃に迎え、二人は幸せに暮らしました。
二人のいる所は真夏のように暑く、ここから温度調整の魔法を使って真冬でも夏に収穫できる野菜を栽培するなど技術革新が進みました。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
コメントありがとうございます!
常に真夏では周囲がしんどいと思うので、周りの人からの協力が必須ですね! 魔法使いは交代で何人かがローテーションしていたらホワイトな感じで良いなと思いました!