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0001 君の本当

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 ある日、SNSで知り合いからメッセージが届いた。

『久しぶりに話でもしませんか?』

 彼女は専門学校に通っていた頃の知り合いだ。
 正直、仲が悪かった。同級生の近況も気になっていた私は『いつ会える?』と返信した。

 彼女とは水と油のような関係だった。どうあっても友達になれないと思っていたしなったところで仕方ないと思っていた。それは彼女も同じだろう。

 ずいぶんと時がたち、私も過去を反省する事があった。
 彼女もそうなのだろうか。
 ある意味、私たちはお互いの過去の『痛いところ』なのかもしれない。

 待ち合わせ場所で待っていると、彼女は時間通りにやってきた。

「幸せそうね?」

 そう憎々し気に呟いた。私はその顔に思わず立ち尽くしてしまった。若い頃よりもずっと、おのれの感情を隠そうとしない姿に敵意よりも驚いた。

「あ、……ああ。君は?」

「はぁ……うっざ」

 何なんだろうか。
 彼女はしきりにスマホを見続けている。

「近くにあるカフェにでもいかないか?」

「なんであんたと?」

 睨みつけられ素直に目をはずした。
 五分ほど気まずい沈黙に耐えただろうか、私が視線を泳がせた方向に彼女の姿が見えた。

「ごめんごめん! 寝坊しちゃった」

 先ほどまで『彼女』が立っていた場所を見た。
 何もない。
 向こうからやってきた彼女はずいぶんと人が好さそうだった。

「元気そうね! 仕事どう?」

「ああ。大変だけど充実してるよ」

「良かったわね! 第一志望だったものね!」

 彼女とはその日、とても会話が弾んだ。
 しかし、どうにも私は彼女の言葉に裏があるように感じてしまった。

 あの憎々しげに私を見やった彼女は一体なんだったのだろう。
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