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0034 雨音、帰宅困難

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 しとしとと雨音が響く。夕方というのに空は曇り空で灰色だ。
 憂鬱な気分を振り払うように、湿気で跳ねてしまう髪をぶんぶんと振る。図書館で時間を潰してみたが、やはり晴れてはくれないようだ。

(まったく嫌な季節よね)

 ため息を吐きつつ、私は帰る覚悟を決めた。

 レインコートを着込んで、腰に差した剣やナイフは取り出しやすいように確認する。冒険者仕様のこのレインコートを買って良かった。

「ゲコオオオオォ!!!」

 カエルのような叫び声がして、私は剣に手を添え振り向いた。
 そこにいたのは、およそ一メートルはあるジャイアントフロッグだ。

 この時期になると街中に入り込んでくることがあるのだ。

 教育改革の結果、平民でも読み書きができるようになった、貸出には制限があるが図書館も利用できる。ありがたい限りだが、やはり根本的に『戦わないといけない日常』からは脱しきれない。

 ジャイアントフロッグは確かに素早く、舌を伸ばした攻撃もしてくるが、動きを予測して斬りかかればそう難しい相手ではない。
 伸ばしてきた舌を避け、ナイフで舌を一刀両断した。

 反発する皮は厄介だが、それでも力任せに切れないこともない。このあたりは5年冒険者をやって培われた勘だ。

 舌を切られ狼狽えているジャイアントフロッグに向かって走り、体重をかけた突きを食らわせた。

 ジャイアントフロッグを倒して、核をえぐり取る。素材はその場に残し、私は立ち去った。図書館の窓から、帰宅困難者がちらほら見える。

 雨音がした時には既に帰れなくなったものたちの視線を背中に感じながら、私は宿屋への道を進んだ。

(知識が広がっても世界は弱肉強食なのよね……)
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