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二十二話
しおりを挟む*残酷な描写があります。
地竜に馬車を引いてもらい、激しい揺れの中で二日間。やっと、目的地の村まで着くことが出来ました。
最後の方、森の中を地竜が遠慮なく駆け抜けて行った時はいくら皇太子が乗るような馬車でも死ぬかと思いました。
まぁ、死んでいないので結果良ければ全て良し……なんてわけは無いので帰りはゆっくりでお願いしたいものです。
「ここが目的地ですか?」
「えぇ、そのはずです。とりあえず、警備をさせている騎士に話を聞いてみましょうか」
ミノタウロスから村を警備していた騎士に話を聞くために私たちは馬車を降りました。
「騎士様ッ! お願いです! 娘を! 娘をッ!」
「お願いします! 息子を探してください!」
「お、落ち着いてください」
私たちが馬車を降りると一人の騎士に村人が群がっていました。
一体何があったんでしょう?
そう思っていると、村人に囲まれている騎士とは別の騎士がこちらに駆け寄ってきました。
「皇太子殿下。お待ちしておりました」
静かにそう言って、アティスの前で跪く。
「顔を上げろ。朝からこの騒ぎは一体なんだ?」
「何故か、昨日の夜までは居たはずの子供が朝起きたら居なくなっていると」
「警備はどうなっていたんだ?」
「警備はしっかりと行っていました! 人数は少ないですがこれくらい小さな村ですので何人も子供がさらわれる事を見逃すことはないと思います」
「そうか」
アティスと騎士がやり取りをしている間に、村人がアティスに気がつきました。
「こ、皇太子殿下、娘を!」
「皇太子殿下、とりあえずこちらへ」
村人を他の騎士が止めている間に、この騎士が警備の際に使っていたであろう家に向かいます。
「このような場所で大変申し訳ありません」
「いや、かまわない。
それよりも、ミノタウロスについて分かっている情報を教えなさい」
「はっ! シャドウミノタウロスについて分かっている事は多くありませんが、まず一度冒険者に討伐された時よりも大幅に力もスピードも上がっているとのことです。
また、影を操る能力も手に入れたようで残念ながら我々ではどうしようもありませんでした」
どうやらこの騎士達は影を操るミノタウロスの事をシャドウミノタウロスと呼ぶ事にしているらしい。
「分かった。では私たちはすぐにミノタウロスの討伐に向かう。
お前たちは引き続き、村の警備にあたれ」
「はっ!」
「マリア、森に行きましょう」
「はい……」
それから私たちはすぐに村を離れて森に入った。
流石に馬車では進むのも大変なので歩きでミノタウロスを探す。
騎士さんの話ではそう遠くまでは行っていないらしい。
私は森の中を歩きながらある事を考えていた。
頭に浮かび上がるのは騎士に向かって泣きながら、あるいは微かな希望に手を伸ばすような表情で息子を、娘をと縋るように叫ぶ親の姿。
十中八九、子供が消えた件に関してミノタウロスが関係していると思う。
どうやって、子供だけを連れ去ったのか?
何故、子供だけを連れ去り他の人間を襲わなかったのか?
いくつかの疑問が出てくるけど、過去に女の子だけを攫って自分の住処で食べていた例もあるからその特殊なタイプなんだと思う。
私は王国にしか結界を張っていないし、王国の人にしか加護を付与していなかった。
だけどこれがもしも、もしも私が聖女を辞めた所為だったなら……そう考えると心臓が締め付けられるような痛みを感じた。
もしも、私がミアとイオンに嫌気がさしても結界を維持していたら子供が連れ去られることもなかったのかな……?
はぁ……考えても仕方ない、か。
もう起こってしまった事はどうこうできない。
まだ連れ去られた子供が生きている事を願うことにしよう。
そう思った矢先。
「マリア、気をつけてください。血の匂いがします」
「……本当、ですね」
人間でも感じ取れるほど、血の匂いがした。
それからすぐに血の匂いの元が見えた。
一匹の大きな人型の牛が、大きな切り株の上に腰をかけている。
その周りには、手、足、下半身、骨、頭……
見るも無残な姿になった死体がそこら中に転がっていた。
明らかに村から連れ去られた子供だけの数じゃない……
アティスが剣を抜いた。
「酷い事をしますね……マリア、サポートをお願いします」
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