33 / 60
三十三話 イオン視点
しおりを挟む王城に入るとすぐにルファルスが走ってきた。
「陛下! ご無事ですか!?」
「なんとかギリギリのところで助かった」
「ご無事でなによりです」
「貴族街のすぐそこまで魔物が侵入してきていたが、いったい何が起きている?」
「たった今報告が入りました。王都の城壁が破壊されたそうです」
そんな、馬鹿な。
十メートル以上ある城壁だぞ。そこらの街よりよっぽど高さも厚さもある壁だ。
そんな易々と破壊されるはずが……
「どれだけ破壊された?」
「今のところ門付近の場所で三箇所破壊されています。どれも大きく損傷しておりすぐに直すのは不可能です」
「破壊された大きさは?」
「正確には分かりませんが、横に八メートル以上とのことです」
「確かにすぐに修復するのは不可能だな……」
「い、イオン、大丈夫なの?」
ミアが心配そうな顔をして言ってくる。
きっと先程のことで不安になっているに違いない。
「大丈夫だ、ミア。
直ぐに冒険者と騎士団を総動員して対応する。直ぐにこんな問題解決できるさ。
それに、ここまで魔物が来ることはないだろうから心配しないでくれ」
「分かったわ、イオン」
「私はルファルスとまだ話があるから、私の部屋で待っていてくれ」
「えぇ」
何度か来たことがあるからメイドに案内される必要はないだろう。
私はミアが見えなくなったことを確認してから話の続きを始めた。
「城壁を破壊した魔物は分かっているのか?」
「恐らくダークリザードの変異種かと」
変異種だと!?
ダークリザードだけでも精鋭が倒れた今では討伐するのが危ういと言うのに、それの変異種だと? いったいなんなんだ……
たったの数週間で変異種が連続して出るなどあり得ない。
しかも今回はダークリザードの変異種? オーガの変異種の方がよっぽどマシだったぞ。ダークリザード自体が強力であるのに、それの変異種など聞いたことがない。
このクラスの変異種など出ても数百年に一回程度だろうが。
「冒険者と騎士団員で討伐できるか?」
「現在の戦力では無理でしょう。ダークリザードは羽はありませんが竜に近い存在です。それの変異種となると竜と同等の存在と見るしかありません。
ダークリザードに破壊された城壁の穴からは常時魔物が侵入しようとしておりほとんどの騎士団員がそこに手を割かれています。騎士団の精鋭を多く失ってしまった状態では厳しいかと。
報告によると、城壁を破壊してからダークリザードは王都付近をゆっくりと移動しているらしく今のところ王都の中に入ってくる動きはありません。
ですが、王都の中に入ろうと思えば簡単に入ることができるでしょうし、入られれば王都は壊滅します。
他の街に援軍を、それでも無理なら帝国に援軍を要請した方が良いかと」
他の街からの援軍で対処できなければ、帝国に援軍を要請するしかないのか……ッ!
国王になって一週間も経たずに救援を求めるなど他国からどう思われるか……
「他の街に援軍を要請しよう。それでどうにかダークリザードを討伐しろ。
例え出来なかったとしても帝国へ救援を求めるのは最終手段だ」
「了解致しました」
他国に助けられることなどあってなるものか。今後の為にも救援要請など出すわけにはいかない。
ダークリザードの変異種さえ倒せば今後もう変異種など出ることはないだろう。
数百年に一度出るか出ないかの化け物だ。これさえ乗り切れば、大丈夫だ……!
ルファルスが指示を出そうと動き出したと同時に王城の扉が開かれる。
扉を開いて直ぐに私がいる事を予想していなかったようで少し慌てながら膝をついた。
「陛下! ラバトルフがワイバーンの変異種により襲撃され大きな被害が出ております。
ラバトルフから至急救援をとのことです!」
馬鹿な……
いったいなんの冗談だ?
王都近くにあるラバトルフにも援軍を頼もうと思っていたのに、援軍を逆に求められるだと……?
「救援など、出来るはずないだろう! 貴様は今の王都の状況を分かっているのか!」
「落ち着いてください、陛下」
……少し、取り乱したな。
ラバトルフには他の街から騎士と冒険者を送ってもらうしかないか。
バンッ!
また先程と同じように王城の扉が開け放たれる。
「陛下! 恐れながら申し上げます! ネケラスに推定二万から三万の魔物の大群が進行中! 防衛線を張っていますが長くは持ちません! 魔物の大群の中にはホワイトウルフと見られる個体も確認されています! 至急救援を頼みたいとのことです!」
「魔物の到着はいつだ!」
「計算によると、あと二時間で到着します!」
倒れそうだった。
私は夢でも見ているのだろうか? あり得ない。
変異種はいないものの、魔物の数が異常だ。ホワイトウルフも高ランクモンスター。
ネケラス程度の戦力では到底、迎え撃つことは不可能。
「陛下、ご決断を」
この状態、どう考えても我が国だけでは対処できない。国にある戦力を隅から隅まで掻き集めても対処できるかどうか分からない。
「……ッ! 帝国に救援要請を出せ」
絶対に出したくない指示を私はルファルスに出した。
国が滅ぶよりは幾分かマシだろう。
「了解致しました、陛下」
ルファルスは直ぐに帝国に救援要請をする準備に取り掛かった。
44
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。
佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。
二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。
クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。
その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。
「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」
「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」
「僕を騙すつもりか?」
「どういう事でしょう?」
「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」
「心から誓ってそんなことはしておりません!」
「黙れ!偽聖女が!」
クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。
信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。
――目覚めたら一年前に戻っていた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる