妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜

雪島 由

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四十話

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 王都に到着した私たちは急いで王城に向かった。
 騎士と魔術師、冒険者が魔物と戦っていたけど破壊された外壁から大きく前線が後退しているみたいだった。

 王城に近づくと、入り口に一人の人影があるのが分かった。

 見た目から判断するに恐らくメイドさんだろう。

 「お待ちしておりました。アティス皇太子様と……」

 「マリアです」

 「マリア……様ですね。ご案内いたします」

 メイドさんの案内で私たちは一つの部屋に案内された。

 「陛下。帝国からの救援で皇太子様とお連れの方が到着されました」

 「分かった。通してくれ」

 開けられた扉の中には三人の姿があった。
 イオンとミアと執事さんだ。

 「えっ!?」

 「なっ……」

 ミアが驚きに満ちた表情になり、イオンが言葉にならない声を発する。

 「マルドルク帝国皇太子。アティス———」

 「この、反逆者がッ!!」

 部屋にあるソファーに腰をかけていたイオンがアティスの言葉を遮り立ち上がる。
 拳を握りしめて私に近づく。

 「……え?」

 イオンは拳を振り上げた。
 目の前にいるのは私だ。恐らく私を殴ろうとしているのだろうけど、一体どうして?
 それに、反逆者って私のこと……? 
 自分から婚約破棄して聖女の座まで剥奪しておいて、次は反逆者呼ばわり?
 本当に一体なんなんですか。

 とりあえず殴られるのは嫌なので魔法で阻止しようとしましたがその必要はないようです。

 「イオン陛下ッ!」

 執事が叫ぶ。

 「なんの真似ですか? その手を下ろしなさい、でなければ今ここで貴方の首を落としますよ」

 拳が振り下げられる直前、アティスの剣がイオンの首に突きつけられる。
 騎士でも魔術師でもないイオンには一瞬にして剣を突きつけられたように見えただろう。

 「帝国は、犯罪者を庇うのか?」

 「彼女が犯罪者だというのなら証拠を出してください」

 「証拠など必要ない! ここにいるクソ女がこの事態を引き起こした張本人だ! それ以上でもそれ以下でもない! このクソ女のせいで今この状況がある、それが事実だ」

 心底憎いとばかりに私を睨みつけてくる。

 「話は聞きます。ですが、今はその手を下ろしてください」

 「———ッ」

 一向に手を下ろさないイオンの首から血が流れる。脅しの意味を込めてアティスが剣を少しだけ押し込んだからだ。

 「……いいのか? 私はこの国の王だ。私を殺せばいくら帝国といえど戦争になるぞ」

 「戦争ですか、確かに良くはありません。やっと数十年前にほとんどの戦争が終わり平和な世がやってきたばかりですからね。
 ですが、なんの根拠も示さず犯罪者呼ばわりされて彼女が殴られるのを見過ごすわけにはいきません。
 そもそも、自国のトラブルにすら対処できてない状態で戦争? 王国が万全の状態でも勝率など無いに等しいほどの力の差があるのにですか?」

 アティスの言っていることはもっともです。

 このあたりの国の中で一番の国土と一番の戦力を持つ帝国。小国である王国が帝国に戦争を仕掛けたところで勝率は皆無だ。
 それどころか今の状態の王国の攻撃なんてほぼ無傷でやり過ごせるでしょう。

 「陛下、手を下ろしてください。こんなところで陛下を失うわけにはいきません」

 執事が後ろから声をかける

 「クソっ!」

 イオンは一歩下がり、拳を下ろす。

 やっと話をできる状態になりそうだ。

 「皇太子様、マリア様どうぞお座りください。
 すぐにお飲み物をご用意いたします」

 執事さんは私のことを覚えているらしい。
 直接話した覚えはないから私はあんまりだけど。

 私とアティスが腰をかけたソファーの対面にイオンが座っている。そして、その隣にはミアが。

 久しぶりにミアの顔を見てみると、顔色がとても悪いように思える。
 それほど暑くもないのに汗の量もすごい。目に見えてわかるほどだ。

 魔物の襲撃からそこまで時間が経過していないし、まだ魔物の襲撃は続いている。
 
 何か怖い思いでもしたのでしょうか。
 
 
 
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