普通に役立たずなので当たり前の様に追放されたんだけど明日からどうしよう

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漂流した教室編

後日談sideA 朧ヶ丘高校にて

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「それでね、家に梅干しの種を植えたら一晩で木になって咲いたんだ」
「今梅の季節じゃなくない?」
 ジュンイチとハルカは学校の廊下で、他愛もない話をしていた。こんな時間が送れるのも、バスター達の尽力によって帰還出来た故。
「もしかしてその梅、向こうの世界に繋がっていないかな?」
「うーん、どうだろう」
「みんなで写真撮って吊るしてみようよ!」
 どうにかして自分達の無事を伝えたい。そんな気持ちからハルカは突飛なことを提案する。そんな不思議な梅ならもしかして、と思ってしまうのも無理はない。クラスメイト達もその想いは同じだったようで、次々に提案に乗る。
 朧ヶ丘高校二年十一組の面々は、共通の危機を乗り越えて更に強くなった。その一方で、何か忘れている様な気がするのは何故だろう。
「おい、この机なんだ?」
 マサキは誰も使っていない机を見る。
「あれ? そういえば今日ずっと空いてる机あるね」
「欠席か?」
「いや、全員来てる」
 クラスの一同が顔を見合わせる。欠席者はいないのに、空いた机。今の時期、転校生というわけでもない。
「まいっか」
 だが、気に留める者はいなかった。そこに、見えなくなったシンジがいることさえ知覚することもなく。
(お、オラはここにいるだで……気づくで!)
 自分では声を出さず、ただ席に着いてじっと待っている。シンジも異変には気づいていたが、ただ誰かに見つけてもらうのを待っていた。だが、この世界に戻ってからというのも妙であるとは思っていた。
「んじゃ、片付けるか」
「だで!」
 誰も自分の存在に気づかない。それどころか、この様に机を片付けられて転んでも人にぶつかることなくすり抜けてしまう。かなり大きな声を出したが、それも聞こえていない様だ。そもそも座っている椅子を何もないかの様に軽々持ち上げて片付けるなど考えられない。
「い、一体どうなってるんだで?」
 ここ数日この調子。黙って待っていればそのうち戻ると思っていたが、全くそんなことはない。それどころか、空腹も眠気も感じない。これはどうしたことか。
「おや、こんなことになってしまうとは情けない」
 その時、靄の様な存在が彼の目の前に現れる。声からして、シンジを唆した元凶であることは本人にも分かった。
「お前! 早くどうにかするだで!」
「いやー、こうなっちゃたら無理だよ。君、極大転移魔法に巻き込まれたんでしょ? あんなの放っておいて理想の異世界ライフを満喫すればよかったのに」
 もとはと言えば、特に害もない相手の帰還を出しゃばって妨害しようとしたのが原因。隔離空間を出た時点でエンタールと縁を切り、単独で行動していればこんなことにはならなかったのである。そもそも一人で移動していれば起きようもない事態だ。
「なんとか戻すだで!」
「とは言ってもねー。こっちもこうやって声をかけるのが手一杯で。君達の世界の言葉で言うならバグとか不具合みたいなものでね。戻る時に微妙に違うけど干渉する次元に行っちゃったんだね。まぁあのパニッシュメントゲートの虚無空間を出るのと同じ流れで出れると思うけど……」
 一応出られる、と希望を見せつつその存在はシンジの加護を見せる。
「残念ながら加護の方も……ね。これじゃあ手の打ちようってものがないよ」
 『魔王 レベル99』だったものが読めなくなっている。レベルも-255599999など意味不明な状態になってしまっており、挽回が不可能だ。
「なんとかするんだで! お前のせいだで!」
「異世界転生の方法を教えるだけで、その先の決断は自分の責任だよ」
 シンジは責任をその声の主に擦り付けようとするが、世の中というのは往々にしてそういうものだ。初めから騙す気ならともかく、正しい手順を教えただけならそれはもう実行する側の責任になる。実際、異世界には確かに行けたわけだ。
「まぁ憐れだし時々話し相手になってやるくらいはしてやろう。暇な時に」
 しかし声の主はこんな自業自得もいいところのシンジを憐れんで、干渉できることを活かして暇しない程度の協力はしてくれるとのこと。
「こっちとしても長命の同期は欲しいのでね。その状態だと空腹も感じないだろう? 死ぬという概念がない時空なんだ。これも何かの腐れ縁ってやつだ」
「いいから元に戻せ!」
「あ、ちょ……」
 しかしシンジは逆上して靄に殴りかかる。すると、靄は白い長方形に変わって重低音を出すだけになってしまう。自分の手で唯一外界と繋がる手段を失ったことを知るのに、数十秒を要したものの絶望的に悪いシンジの頭でも理解できた。ここで一人、死ねずに存在するしかないという現実に。
 そして、それからは逃げることなど出来ないということにも。もはや正気を保つことも出来ず、青ざめて母を呼ぶことしか出来ない。
「おか、おかーさーん……おか、おか、おかーさん……」
 怠惰であらゆることから逃げ続けた男の末路は、悲惨そのものであった。
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