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第28話 ブラッドセンチピード
しおりを挟む他の作業をさせていたバエルと合流し、期間内の最後の魔物狩りへと向かった。
明日からはオーガへの献上用の魔物を狩るため期間が空くということもあり、大物を狙うことを昨日の内にバエルと話して決めている。
まぁ大物といってもポイズンリザードと同じアイアンランクを狙うつもりで、以前出会ったこともある泉近くの洞窟にいた生物。
そう、前回も狙ったブラッドセンチピードを今日こそ狩るつもりでいる。
この間は洞窟内にいなかったが、ブラッドセンチピードは夜行性のため、明るい内は暗い洞窟内にいることが多い。
それに強い縄張り意識も持っており、巣は滅多なことがない限りは変えないはず。
だから今回こそは出会えるはずなんだが……まぁいなければいなかったで、洞窟の奥を目指して他の魔物を狙えばいい。
かなりの深さの洞窟だったし、奥にはまだ他の魔物がいるはずだからな。
比較的楽観的に考えながら、俺達はあっさりと洞窟までやってきた。
「にカいめですネ! またタイマツをもちマすよ!」
「ああ、この間と同じように頼む」
「ハイ! すぐにイシもウテるようにシておきます!」
バエルの頼もしい言葉を聞いてから、俺は洞窟の中に入った。
三度目となるともう怖さもなく、ある程度の強さを手に入れた今はワクワク感しかない。
いつもの羽音を聞きつつ洞窟の奥に進んで行くと、地面を這いつくばる黒光りした体を視界に捉えた。
紛れもないブラッドセンチピードであり、真っ赤な凶悪な顎をこちらに向けてきていて、細長い触覚が俺達を捕捉しようとしきりに動いている。
壁も這い回ることができるブラッドセンチピードと洞窟内で戦うのはあまりにも無謀なため、外に誘き出すことに専念する。
前回は勝手に外についてきたし、同じ個体ならば簡単に誘い出すことができるだろう。
中に入ってまだ一分ぐらいしか経っていないが、バエルには外に出る準備をしてもらい、俺はわざとブラッドセンチピードの触覚を触った。
位置を掴めていなかったであろうブラッドセンチピードが俺の位置を特定し、口を高速で開閉しながら襲い掛かってきた。
俺は【四足歩行】を使って先を走るバエルを追いかけ、ブラッドセンチピードに追いつかれないように必死に逃げる。
この間も思ったことだが無数に足があることもあって、動きが非常に速い。
前はギリギリ逃げれた感じだったが、今日こそは逃がさまいと前回よりも動きが速いな。
背中に圧を感じつつ、何とか洞窟の外まで粘る。
【四足歩行】に加えて【跳躍力強化】も逃げるのに使えたらいいのだが、【跳躍力強化】は上に飛ぶことにしか使えない。
ジャンプ力と足の速さは比例しないし、当たり前といえば当たり前なのだが、本当に痒いところに手の届かない能力。
そんな愚痴を心の中で漏らしつつ、俺は何とか洞窟の外まで逃げることができた。
俺よりも、大分先行していたはずのバエルの方が危なかったが、鼓舞したことで滑り込む形でバエルも外まで逃走に成功。
足を止めた俺達を見て、値踏みするように滑らかに動いたブラッドセンチピード。
こうして真正面から見ると、威圧感がとんでもない。
見た目が気持ち悪くてムカデは苦手なのだが、ブラッドセンチピードほど大きくなると格好いいと思えるフォルムになっている。
無数に生えている足だけは気持ち悪いままだけどな。
「し、シるヴァさん! ダイジョウブなんですカ?」
「大丈夫だ。ただ危なくなった時だけは援護してくれ。それまでは自分の命最優先な」
「ワカリました!」
ポイズンリザードよりも強烈な威圧感に心配になったのか、不安そうな声を漏らしたバエルに指示を飛ばす。
大丈夫と言い切ったが、正直ポイズンリザードよりも戦いづらい魔物であることは間違いない。
動きも速ければ、獰猛で肉食。
毒は持っていないものの、硬い外皮に覆われているため【毒針】は刺さらない。
節の部分を狙えば刺さる可能性があるものの、高速で動く相手に狙うのは少々現実的ではない。
当たればラッキー程度で撃ち込むのもありだが、それよりも確実に弱点を狙うことだけを考えた方が勝率は上がる。
ブラッドセンチピードには明確な弱点があり、それは真っ赤な頭。
頭の真下に血を吸い取る鋭い口があるのだが、頭の部分は黒光りしている外皮とは違って柔らかく、ぶっ叩くことができれば一撃で弱らせることができる。
口が一番危険ということもあり、頭を叩くのが難しいことではあるのだが、動きを見ていれば必ず隙はあるはずだ。
まずは防御に専念するため、お手製の木の盾を構えてブラッドセンチピードの出を窺う。
ブラッドセンチピードの一番怖い攻撃は、細長い巨体に巻きつかれること。
身動きを取れなくさせてから、鋭い口で捕食するのがブラッドセンチピードの特徴。
巻きつき以外にも尾の部分での攻撃や、溜めてからの矢のような突進攻撃もしてくるが、挙動が大きいためどちらも大した脅威ではない。
巻きつきだけを警戒しながら、俺を噛み殺そうとしてくるブラッドセンチピードの攻撃を的確に防いでいく。
角度を考えながら盾で上手いこと流し、じっくりと動きを観察する。
俺が一切攻撃を仕掛けなかったということもあり、ブラッドセンチピードは一方的に攻めている状況だと判断したのか、動きが段々と威力重視の大味になってきた。
これだけ攻撃を行って、一発もクリーンヒットしていない時点で普通なら察するはずだが、所詮は脳みそがあるのかも分からない虫型の魔物。
向こうから隙を見せてくれたお陰で頭を狙いやすくなったし、巻きつき攻撃を行う前の挙動も分かった。
体で俺を囲わないと巻きつきへは移行できないようで、硬い外皮に守られているせいで自由度はかなり低いらしい。
似たようなフォルムでも蛇型の魔物ならば、どんな体勢からでも巻きついてこれるくらいに自由自在に動いてくる。
防御が堅い代わりに柔軟性が劣ったといった感じだろうか。
攻撃力が皆無の俺にとっては防御が堅いのも非常に厄介ではあるが、ブラッドセンチピードには明確な弱点があるからな。
頭を大きくぶんぶんと振り回して、あの手この手で噛みつこうとしてくるブラッドセンチピードの動きを読み切った俺は、短剣で頭を斬りつけることに成功。
もちろんのこと【毒液】で毒ナイフにしてあるため、ここからじわじわとダメージが蓄積される――狙いだったのだが、俺が思っていた以上に頭は弱点だったようで、絡まった紐のようになりながら頭を斬られたことに対して悶え始めた。
痛覚はないと思っていたのだが、この反応を見る限りではあるのかもしれない。
……っと、余計なことを考えていないでトドメを刺しにかかろう。
絡まった紐のようになっているブラッドセンチピードに近づき、頭を狙って今度は棒でぶん殴りにかかる。
攻撃させまいと口は噛みつこうとしているが、体が絡まっているようで思うように身動きが取れていない。
完全に棚ぼたの感じであり、何だか締まらない最後ではあるが関係ない。
俺は自分で自分を拘束したブラッドセンチピードの頭を狙い、思い切り棒でぶん殴って叩き潰した。
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