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第46話 試し斬り
しおりを挟むニコを連れての初めての泉の洞窟探検。
ガッチガチで大分緊張しているように見えるが、俺はもう慣れているからな。
ニコが何かヘマをしたとしても、守ってあげられるだけの力はついている。
「ニコは松明を持ってついてきてくれ。片手には剣を忘れずに持っておくんだぞ」
「ウ、ウガ!」
返事も何処か固さを感じるが、戦闘を繰り返せばいずれ解れてくるはず。
どうせなら今日は洞窟の一番奥まで見てみたい。
そんなことを考えながら洞窟を進んで行くと、早速パラサイトフライの羽音が耳に聞こえてきた。
「……ウガ? うがが!」
無数に聞こえる羽音に怖くなったようで、ニコが怯えるような声を出したが心配ないことを伝えつつ、洞窟の奥に向かって進んで行く。
ブラッドセンチピードやポイズンリザードがいないかも期待していたのだが、そう何匹もいる魔物ではないのか姿が見当たらないな。
パラサイトフライももう俺のことを完全に覚えたようで、羽音は聞こえてくるものの一切襲ってくる気配がない。
そんなこともあり、一度の戦闘もないまま既に今まで一番奥近くまで進んで来れている。
思っていた以上に深い洞窟であるが、徐々に狭まっていることから洞窟の奥も近い。
このまま何の魔物とも鉢合わせないまま奥に辿り着いたら無駄足もいいところだが――そんな考えが頭を過ったタイミングで、洞窟の奥からこちらに迫ってくる足音が聞こえた。
重い足音であり、かなりの大きさの魔物であることは間違いない。
ニコに正面を照らさせ、近づく足音の正体が見えるのを待っていると……ようやく俺の視界に入ってきた。
洞窟の奥にいたのは、人と豚を混合させたような魔物であるオーク。
今目覚めたのか、非常に眠そうな表情を見せていたが、俺達の姿を見るなり――ニヤリと下卑た笑みを見せた。
「……う、ウガが! うががが!」
槍を持った状態で洞窟の奥から姿を現したオークに対し、ニコは今にも逃げ出そうと俺に提案してきている。
進化する前の俺だったら確実に逃げ出していたし、ニコが逃げたがる理由も理解できるが……。
「ここで逃げていいのか? イチやサブに追いつきたいんだろ?」
厳しくもあるが、これはニコのための魔物狩りである。
強くなりたいと願うなら、ゴブリンに生まれたからには敵を倒して捕食しなければならないのだ。
逃げているだけでは一生成長しないし、ここで殻を破れなければ二匹との差はもっと広がってしまう。
「……ウガ!! ウガガァ!」
そのことはニコ自身が一番理解していたようで、じりじりと後退していた足を止め、オークに対して雄叫びを浴びせて見せた。
よし。とりあえず気持ちで負けていないという姿勢を見せてくれたら、後は俺がオークを瀕死ギリギリまで追い詰めるだけ。
一番の問題はオーク相手に戦えるかだが、俺の直近で戦った相手があのおっさん戦士。
比較するのもおこがましいくらいの差が戦う前から分かる。
もちろん一切の油断もするつもりがないが、向かい合って負ける気がしないというのが本音。
まぁオークの方もそう思っているだろうがな。
「よく勇気を振り絞ったな。とりあえずは俺の後ろで待機していてくれ」
ニコには控えさせたまま、一歩前に出て鋼の剣を引き抜く。
折れた短剣で作ったお手製の短剣とは違って重厚感があり、構えているだけでテンションが上がってくる。
絶対に殺さないようにだけは気をつけつつ、オークには鋼の剣の試し斬りの相手になってもらうとしよう。
オークとの間合いが徐々に詰まっていき、最初に仕掛けて来たのはもちろんオークの方。
俺よりも体が大きい上に槍を持っているため攻撃範囲が広い。
その攻撃範囲の広さを生かし、俺の剣が届かない位置からの攻撃を仕掛けてきた。
狭い洞窟で槍を持った相手との戦闘は圧倒的に不利であり、このまま槍で突かれ続けたら勝ち目はないはずなんだが――攻撃が遅く感じる。
オークの攻撃が本当に遅いのか、それとも動体視力が良くなったのかは分からないが、腕を引いて構えて突くという全ての動作がはっきりと見えている。
俺にわざと攻撃する場所を教えているのかと思うくらい見えており、そしてその攻撃してくると思った場所に突いてきた。
ここまで攻撃が読めているなら、距離の不利も一切関係ない。
オークの突きを完全に見切って躱し、伸びきった腕を鋼の剣で斬り裂いた。
感覚としては腕の腱を斬り、動きを鈍らすようなイメージで剣を振ったのだが――オークの腕は宙を舞ってぼとりと地面に落ちた。
片腕となったことで槍も握れず、のたうち回り始めたところを更に追撃で左足を斬った。
大量の血を噴き出しながら、言葉になっていない叫び声を上げながら地面を転がり始めたオーク。
もう反撃する力も残されていないだろうし、放置していれば後は勝手に死ぬぐらいの出血量。
あとはニコがトドメを刺せるかが問題だが……もしトドメを刺すことができなくとも、オークは捕食したことがないため俺が喰えばいいだけだな。
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