君と番になるその時は

鈴卜優

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婚姻の儀


「きゃーシオン様とても綺麗です。」

そう言うのはシオンの侍女となったクラリスだった。

クラリスもΩであり、子爵家令嬢だ。
将来の為に王宮で働いているという。

とても元気で快活そうな令嬢で仲良くなれそうだ。


「クラリス、ありがとう。」

そう言って目の前の自分をみる。


婚姻の儀という事で白の衣装を身に纏っていて、どことなく中性的なデザインだ。


長い髪は結われ首元にはいつものネックガードのチョーカーがついている。


(…ひどい顔。)


昨日の事もあり、シオンはひどく落ち込んでいた。


もうすぐ婚姻の儀というのにふわふわとした感覚で自分の気持ちがついていけてない。


そうこうしている内に教会の廊下まで着いてしまった。

目の前には扉がありここから入場するらしい。


「シオン様、扉が開きましたらそのままお進みください。」

そう言ってクラリスは下がってしまう。


(あぁ、この扉が開いたらもう後には戻れないのか。)


そう思うのに、逃げる事もできない。


目の前の扉が開き、シオンは前に足を出す。


向かう先には黒の正装のレイフォードと神父がいた。


レイフォードは変わらず無表情だ。


正装していることからより逞しく美しく感じる。


そして横に並ぶ。


神父が祈りの言葉を捧げていく。


(明日から、僕はどうしよう。)


「では、誓いを。」


神父がそう言った所でシオンはハッとする。


「シオン。」

初めてを名前呼ばれた。

シオンはレイフォードの方を向く。


目の前には整った顔がある。


この国の婚姻の儀とは、神父と夫婦となる2人だけで行われαとΩであるなら最後にΩのネックガードを外し、首噛みをする。αとΩが以外は普通に口付けをするという。

この首噛みというのは次の発情期が来たら番となる約束と共に強い結びつきを結ぶという意味があるらしい。


(こんな首噛み、僕には意味がない。)


どうせ、番にならないのだから。


レイフォードは静かにシオンの首からネックガードのチョーカーを外し肩に手を置く。


顔が首元に近づき、ぞくっとした感覚が身体を駆け巡る。


そして、すぐにうなじの横の方から痛みが走る。

「っ…」


その瞬間、シオンの身体はビリッとした電流が流れるように感じた。


身体が少し熱くなるのを感じる。


それと同時にシオンの瞳から一粒涙が流れる。


こんな事をしても、番になんてならないのに。


悲しい。ただただ悲しかった。



「…大丈夫か?」

「は、はい。」


そして今までつけていたチョーカーではなく、レイフォードと同じ瞳色の宝石がついたチョーカーが付けられた。





あっという間に儀式も終わり、シオンは自室に戻る。


レイフォードはというと、儀式が終わるとすぐに仕事へ戻っていった。



その姿をみて、ああ本当に政略結婚なんだなと実感させられる。



「~はぁ。」


衣装を脱ぎ、ソファーに深く腰掛ける。


「どうしたんですか?シオン様。」


ため息を溢すシオンにクラリスはお茶の準備をしながら気にかけてくれている。


「うーん、明日からどうしようかなって」


思わず言ってしまった。


「…。なんでもいいんですよ。シオン様がしたい事なんでもできますよ!もちろん、何もしなくたっていいんです!」


クラリスは2人の事を勘付いているかはわからないがそう言ってくれる。


「僕がしたい事……。」 



「公式の時だけちゃんとすれば大丈夫です!」


そう励ますように言ってくれる。


「…ふふ、そうだね。そういう時はちゃんと役目を果たすよ。」




さっきまで心が沈んでいたけど、クラリスのおかげで少し気持ちが軽くなる。



そうだ、明日からしたい事しよう。 





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