君と番になるその時は

鈴卜優

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変わること変わらないこと



慣れというものは怖いものでシオンがウィンザード皇国に嫁いで1か月が経った。

婚姻の儀の夜から夫婦の部屋で寝ているが、夫となったレイフォードはシオンが寝る時間より遅くに帰ってきて朝はシオンより早く起きる。

始めの頃は本当は夫婦の寝室に来ていないのでは?と思ったが、夜中ふと目が覚めた時隣に寝ているレイフォードを見た時はとても驚いた。


話すこともなければ、会うこともないのでシオンはレイフォードの事を考える事もなくなった。あんな事を言われて距離を縮めようとも思わないし、そんな勇気もない。


婚姻の儀の後、数日は落ち込んでいたが、父の時のようにひとしきり落ち込んだ後は望んでも手に入る事はないとわかれば、欲しがる事もなくなる。


なるべく心穏やかに過ごそう。そう決めた。


(今までもそうしてきたし…それだけが全てじゃないと割り切れた。案外自分は図太いのかも。)



「シオン様、準備できましたでしょうか?」


「うん。早く行こうか。子供達きっと待ってるだろうし。」


シオンとクラリスがこれから行くのは孤児院。


戦争が終結してから戦争孤児が増え、孤児院にはたくさんの子供が溢れている。


シオンは週に2日、王都にある孤児院を回り子供に勉強や絵本を読み聞かせたりお菓子を差し入れたりしている。


子供達はすぐにシオンを受け入れてくれ、懐いてくれている。


シオンも孤児院で過ごす時間をとても楽しみにしていた。



孤児院の入り口につくとシオンの来訪に気づいた子供達が一斉にシオンに向かってくる。


「わーシオン様だー。」「みんなーシオン様来たよー。」


みんな笑顔でかわいい。


子供達の笑顔をみると自然とシオンも笑顔になる。


「こんにちは。今日は何しようか?」


そう子供達に話しかけゆったりとした時間を過ごす。



__________________________________



「本当にシオン様の作るこのクッキー美味しいです!!」


ひとしきり子供達と遊んだ後、みんなでお菓子を食べているとクラリスがそう言ってくる。


「そう?みんなが美味しそうに食べてくれるだけで胸いっぱいだよ。」


「お店に出せます!本当に!」

「ふふ、そんな事ないよ。母国にいた頃、親友の子とお菓子作りにハマってた事があるんだ。だから大した事ないよ。」


「でも、メイドや王宮に仕える護衛の方から人気で争奪戦になりますよ?」

「え?本当に?」

「そうなんですよ~。私はいつも食べれるから羨ましいなんて言われるんですよ?」

「じゃあもっと作ろうかな。」


孤児院に持っていく差し入れはシオン自ら手作りし持っていく。


少し多めに作り残った分は厨房に置いておき、メイドや護衛の方達に食べてもらっているのだ。


思いがけない賛美にシオンは嬉しくなる。



ウィンザードで過ごす日々は中々充実していた。


週に2日孤児院を周り、それ以外の日は庭を散策し気に入った花があれば庭師に分けてもらい王宮中に生けたり、ウィンザードについて勉強をしたり、図書館で本を読んだり、クラリスと刺繍をしたりと楽しんでいる。




そして今日の夜もいつもの日課で寝る前にソファーで本を読んでいた。


なんだか今日はいつもより目が冴えていて、残ったクッキーと紅茶を飲みながら黙々と本を読み進めていた。



ギィっと扉が開く音がした。


パッと本から目を離し、扉の方を見ると驚いた顔をするレイフォードがいた。



(あ、しまった。本が面白すぎて時間を忘れてた。)


シオンはレイフォードが来る前に寝ているし、会わないように基本的に夜更かしをしていない。


ついつい時間を忘れてしまったようだ。



シオンはびっくりして目をぱちぱちと瞬きをする。


レイフォードは固まっているシオンに向かって歩いてきてストンとシオンの目の前のソファーに座る。


「え?」

ソファーに座ると思っていなかったので思わず声にでてしまった。


「…今日は起きているんだな。」


「っ!あ、あの。今日は本が面白くてついつい時間を忘れていました…。」


少し目線を逸らしながら言う。


レイフォードはそんなシオンをじっと見つめ少し気まずそうにしている。


(…なんでソファーに座ったんだろう。)

少しの沈黙が流れる。

「…少し話しをしないか?」


レイフォードはシオンにそう告げた。










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