レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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一章ー風の都ー

17 男児にソードは持たせるな

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「あー、楽しかった!」

 地面へ降り立ったユズリが、背伸びしながらそう口にする。
 ただ、ここは地面と言っても風の都内……つまり、俺達が立っているのは木の枝という事になるが。

「お、俺は暫く乗らなくていいかな……」
「……どの道外へ出る時は乗らなきゃだけどね」

 その言葉にうへぇ。と思いながらも、いつまでもしょげている訳にもいかないので姿勢を整える。
 すると、エアロマシンの整備をしていた親方に声をかけられた。

「お二人さん! ウチのピットでも言ったが、暫くこのマシンは好きに使ってくれい。オートパイロットシステムに切り替えてあるから、指定の目的地を設定すりゃひとっ飛びだ」

 何という安心設計。
 しかしそれではパイロットは必要無いのでは? という疑問が出るが、親方曰くオートパイロットシステムでは所謂寄り道が出来ないらしい。
 つまり先程のような景色を堪能出来るフライトは不可能のようだ。

「ありがとう。でも、親方はどうやって帰るんだ?」
「んぁ? なーに。そこらでレンタルマシンでも借りて帰らァ。心配すんな」

 そんな物もあるのか……と感心している間に、親方は恐らくそのレンタルマシンとやらを借りに行ってしまった。

「ねぇ、これからどうしよっか?」
「……今日はもう、休みたいです」

 ユズリの問いに対しそう答えた俺は、げっそりとしたポーズを取る。
 前の世界にいる間の出不精が祟ったのか、対して動いた訳では無いのに疲労してしまうクセは、冒険者として何とかせねば……。

「じゃあ、今日は宿屋を見つけ次第休もっか」
「ハイ……オネガイシマス」

 疲れの為か、俺の礼はカタコトだった。







 その日の夜。ちょっとした街の外れ。

「やぁあああッ!」

 ユズリの垂直切りを俺は手に持つ相棒を横向きに持ちガードする。

「ふんぬっ!」

 気合いの掛け声を上げながら攻撃を受けると、想定以上に彼女はノックバックした。
 これは……チャンスなのでは?
 安易にそう思った俺は、一気に踏み込んだ。

「せ、ぇええああああああッ!」

 街中では無いので思い切り叫びつつ、俺は右手に持つそれを全力……では無いが八割程度の力で振り下ろす。
 決まったか? と思ったが……やはりというか、この台詞はフラグでしか無かった。

「んぬっ……!」

 彼女は自身の身体と俺の相棒との間に武器を差し込み、滑らせた。これにより、俺は大きく体勢を崩す。

「んがっ!」

 思い切り地面に突っ込んだところで、俺の首の付け根辺りに……彼女の持つ木の枝にちくっ、と刺された。

「くぅ! また負けたぁ!」

 そう言うと同時に、俺は握っていた丁度いいサイズの木の棒を投げ捨てる。

「まだまだね。スキルは強いけど、やっぱりタクマ自身はだめだめなんだから」
「ぐぬぬ……言い返せない……」

 事実、今日は直ぐに休む事を提案してしまった身としては、否定する材料を持ち合わせられなかった。
 宿屋にてそれぞれに部屋を借り、少し休憩した後最近の日課となっていた剣を修行を申し出て……今に至る。

「で、どう? 〈片手剣〉スキルは手に入った?」

 彼女に聞かれ、俺は寝そべりながらステータス画面を弄るが、残念ながら〈召喚〉スキルしか表示され無かった。

「いや、今日もダメみたいだ」
「そう……まぁ、しょうがないよ。本来は一年くらいかけて修行して、やっと手に入るスキルなんだから」

 そう、俺がユズリに修行をつけてもらっていたのは、この〈片手剣〉スキルを手に入れる為である。
 レベル0とはいえ、俺のスキルスロットは合計三枠。唯一手に入れている〈召喚〉スキル以外にも二つセット出来るのだ。
 その事を彼女と相談した際、剣を召喚した時上手く使えるよう〈片手剣〉スキルを習得することを勧められたのである。

 俺はその意見を呑んだ。しかしそれは、色々な作品にあるように、パッと覚えられると思ったからだ。
 だが現実は、残念ながらユズリに惨敗の毎日である。

「くそーっ! 次こそ一本取るからな!」
「望むところ! って言いたいけど、今日はもう遅いし宿屋に戻りましょう? 明日朝一番に観こ……じゃなくて、街で色々物色したいし!」

 そういや親方んとこでも本音が漏れていたが、俺は敢えて触れずにいようと思った。
 何故ならここで指摘すれば、理不尽に怒られると思ったからだ。いや、彼女にそうされた事など殆ど無いが、俺は母親からそれを学んでいた。

「分かった。今日は寝よっか。俺も明日楽しみだし」

 その言葉に裏は無く、新しい土地の新たな文化に、俺はどこか弾むような気持ちでいた。
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