レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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二章ー止まない街ー

50 はじめてのぜつぼう

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 瞬時に背中を突かれた俺は、ガンゾルドの攻撃により屋敷の壁を突き破りながら外へと投げ出される。

「……っ、タクマぁぁあああーッ!」

 ユズリの声が、切なく俺の元まで響いた。

「ぐぉお……!」

 壁にぶつかった背中がひりひり痛む。
 それだけじゃなく、空を落ちる重圧により身体と精神にかなりの負担がかかっていた。
 だが、このまま状況整理のみしてても地面へ激突してしまう。
 俺は一か八かの賭けに出た。

「《剣招来ブレイドコール》!」

 一度戦いが終わった頃に消えていた為、改めて出現させた黒剣で空を裂く。
 このまま吸収力によって少し浮ければそれだけで最悪の事態は回避出来るのだが、何故か使用者である俺には別次元の狭間による影響が出ないのだ。
 なので俺は穴に左手を突っ込み、手当り次第掴む。
 しっとりしつつもザラついた何かを手にし、これ多分たまに出てくる触手だな、と思いながら離さぬよう力を込める。
 このままゆっくりと降りようと考えるも、連戦による疲労か握力が持たず滑り落ちてしまう。

「……ぃでっ!」

 尻から思い切り落ちると、地面にぶつかる前に水を貫いた。
 水溜まりかと怪訝な顔をするも、水深が腰辺りまで来ることからそうでないと気がつく。
 眉を寄せつつも立ち上がり辺りを見回すと、視界の限り咲き誇る美しい花……水色の蓮、雨水蓮が一面を彩っていた。

 ユズリの見たがっていた雨水蓮、ここに合ったのかと口を結ぶと、突如何者かが俺が突き破った舘壁から飛来してくる。
 いや、何者かも何も、こんな事が出来るのは奴しか居ない。

「……第二ラウンドって事か」

 ぼそりと呟き、奴を見据える。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」

 ガンゾルドが変わったのは言動だけでなく、外見まで以前の面影がなかった。
 全身を分厚い氷で覆うその姿は、甲冑を着ているというよりはもはや兵器を彷彿とさせている。
 そして左半身は流血の影響か、一部の氷装が赤く血塗られていた。

「……三対一で戦うのってちょっと抵抗あったから、最後はサシで決着を付けてやるよ」

 俺の軽口に対し、ガンゾルドは不気味な呟きを続けるだけだった。
 起立した事によって膝下までになった水深を掻いて黒剣を構え、全く行動を読めなくなった相手に注意を向ける。

「……ろす…………す……ろ…………殺す」

 最後の一言だけはっきり耳に届くと共に、奴は周囲の水を凍らせながらこちらに迫って来た。
 俺は目の前の虚空を切り裂き、奴を待ち構える。
 しかしガンゾルドは吸収力に作用されないどころか、飛び上がって片腕をこちらに向けてくる。
 瞬間、悪寒に見舞われた俺は反射的に左へ駆けた。
 すると、元いた場所に冷気のビームのようなものが撃ち抜かれる。
 アレに当たったら、もしかしなくとも氷漬けにされるのだろう。

「くそ、アイツ中ボス位のクセに第二形態とかふざけんな……!」

 悪態を付きつつも、奴の動向に視線を当てる。
 自身の手で凍りつかせた地面を割りながら着地したガンゾルドは、こちらに赤くなった氷装の腕を向けると、いくつもの氷礫を出現させた。
 次の瞬間予想通り飛んで来るので、またも次元をかっ捌き直撃を防ぐ。

「ゆぅううううしゃぁああああああッ!!」

 ガンゾルドが吼えながら俺の真横に出る。
 そして今度は、魔法では無く氷を纏わせた右手で徐に殴りかかってきた。
 水の抵抗力がある今では躱しきれないと悟った俺は、黒剣を横にして受け止める。
 ガキっ! と嫌な音がしつつ辺りに氷が撒き散った。
 震える手で抑えていると、奴はもう片方の腕でこちらの腹目掛け突き攻撃を決行してくる。
 横ステップしか出来ないので右に避けるも、左横腹を僅かに貫かれた。

「うぐっ……!」

 俺は高速で剣を返し目の前の空間を斬る。すると奴も流石に飛び退ったので、雨に打たれながら血のにじむ腹部を左手で抑えた。

 ……これは、かなりのピンチだ。
 奴は遠距離であれば魔法を行使し、近距離では全身を覆う氷が本体を守り、また重く強烈な武器としても機能する。
 対して俺は、別次元を斬ること以外に出来ることはほぼ無い。

 己の手数の少なさを呪いつつ、今は懸命に倒す事のみを考える事にするのだった。
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