レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

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三章ー鋼鉄の王国ー

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 ーー代われ。もう一度俺が戦ってやる。

「……え?」

 謎の男との会話に、思わず声が零れてしまう。

「おい、うるせぇぞ。……そうだ。お前が起きてると面倒だし、暫く寝ててくれ。ライトニング……」

 奴が呪文を唱える前に、俺の握る黒剣。そこに嵌め込まれている紅い宝珠がかつてないほど閃き出したーー。

「んなっ……!?」

 奴が驚く頃にはもう、この身体の所有権は……俺には無かった。


「……おい、どけ」
「は?」

 瞬間、辺りに爆風が巻き起こり、トオヤは吹き飛ばされる。
 自由になった俺……の身体を使っている誰かさんは徐に立ち上がり、剣を握ってない方の手で土埃を払った。

「個人的な恨みは無いが……お前、少々はしゃぎすぎだ」

 同じく立ち上がったトオヤは、俺の声に身震いする。

「今から斬るが……まぁ、俺に出会ったのが運の尽きだったっと思ってくれ」

 俺の身体を通した発言に、どこか引っかかる。
 そういえば、似たような台詞をどこかで聞いたような……?

「ふざけるな! なんだお前急にキャラ変えやがって。イタいんだよバカが!」

 彼の逆鱗に触れてしまったのか、トオヤは激昂を顕にした。
 そして怒りのままに大剣を地面に突き刺し、空いた両手を俺達に向けてくる。

「もっかい地獄を見せてやるよォ……《アイス・スプラッシュ》、《ブリッツ・アローズ》ッ!」

 瞬間、過剰な程の氷片と光矢が放たれた。
 しかし俺の体を操る誰か……と一々呼ぶのも面倒になってきたので、これからはもう一人の僕と言うことにしよう。
 もう一人の僕は、焦る素振りも見せずに重い剣を軽々振り、次元を割いて直撃を避けた。
 だが俺には分かる。もう一人の僕が作った次元は、攻撃が当たらない最低限の広さのものだと。
 つまり……もう一人の僕は、恐ろしく戦い慣れている。そんな気がこの一瞬の間に脳の奥を鋭く突いた。

「どうした。俺に地獄を見せてくれるんじゃなかったのか?」
「ぐぅううう……!」

 獣のように唸ったトオヤは、粗雑にエクスケインを抜いてこちらに向けてくる。

「さっきまで手も足も出なかったクセに、調子に乗るんじゃねぇええええッ!」

 奴が振りかぶってこちらに突進し始めた時、もう一人の僕の手が閃いた。
 一瞬の間に目の前に三角になるよう空中を切り裂き、持ち手を逆さにして切っ先を地面に向ける。
 そして、一言。

「“展開”」

 同時に黒剣を大地に突き立てると、辺りに三角の異次元の裂け目があちこちに現れた。
 これは……どういう事だ?
 三角に斬ればそのままぽっかり空間が空くのも、剣を突き刺しただけで辺りの次元が開くのも初めて見た。
 間違いなくこの人は、俺の何百倍も剣の能力について熟知している。

「な、なんだこれは……?」
「ようこそ。俺のフィールドへ……では、行くぞ」

 もう一人の僕がそう言うと、地面を僅かに蹴り身を空中に投げた。
 瞬間、俺の身体に猛然と降り頻る豪風が身に巻き付く。
 まさか、と思った刹那、身体が異次元へと吸い込まれる。

 異次元の先……見た事の無い景色が広がっているのかと思ったが、裂け目の先もまた、裂け目だった。
 つまり、目の前の裂け目から空中に揺蕩う裂け目のひとつに瞬間移動したのだ。

「なにぃ!?」

 左後上空から現れた俺に驚きつつも、トオヤは謎に良い反射神経により剣で攻撃を防いだ。
 トオヤは直ぐに反撃の構えを取るが、その前に一足で背後に飛んでそこにある裂け目に吸い込まれていく。

 後ろから入ったのに何故か正面から裂け目より出て、もう一人の僕は剣を振り被る。

「ふ……こっちかァ!」

 予め狙いを付けていたのか、こちらが出てきた瞬間振り向くトオヤ。
 どうするのかと肝を冷やしていると、もう一人の僕は微笑を浮かべつつ、真正面を切り裂いてまた別次元へ移動した。
 そして、先程より僅かに早い速度で奴の背後を取り、そこから渾身の一撃を放った。

「ぐあっ……!」

 トオヤも剣を構えてきた為僅かに防がれたが、見た限り確かなダメージを受けている。
 その後も次元移動しつつの攻撃に、徐々にこちらにペースが傾いていった。
 俺の身体にも負担はかかっているだろうが、高速の攻撃を受け続けているトオヤには精神的な負担がかかっているように見える。

 これならいけるか……?

「ぐ、うぉあああああああっ! ナメるなナメるなナメるなァァァァァァアアッ!!」

 完全に頭に血が登ったトオヤは、やけくそな回転系の大剣スキルを放った。
 これでどこから来ても攻撃を受けないと画したのだろうが、これは俺にも分かる。

「頭がガラ空きだぜ」

 もう一人の僕の言葉と共に、トオヤに刃が振り下ろされそうになったところで……。

 まって!!

 俺の言葉に、もう一人の僕は一瞬動きを止めた。

「ち、分かったよ。気絶だけにしといてやる」

 そう呟き、彼は構えを変える。
 どうやらポメルでトオヤの後頭部を強打するつもりらしい。
 そして、実際攻撃がトオヤに振りかかろうとしたが。
 ……その攻撃は、届かなかった。

「なに!?」

 もう一人の僕が驚くと共に現れたのは……。


「おやおや、随分と久しぶりだなぁ……ヴルヘリット」

 漆黒のドレスを纏った、一人の少女だった。
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