S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

文字の大きさ
27 / 724
入学編

第二十六話 王宮訪問

―――数日後、ヨハン達は校長室に呼ばれていた。

連絡が来るまではこれまでと変わらず学校の授業が行われており、一般の生徒には今回の騒動は闘技場に施されていた魔法陣に誤りがあって、一部の魔法が増幅されるようなミスがあったと伝えられている。

実際、戦場ではトラップ魔法陣が敷かれ、効果範囲内では特定の魔法を増幅させることが可能であり、逆に減少させることも可能なのである。
しかし、陣を敷くためには高度な知識と複雑な紋様に膨大な時間が必要になるのでおいそれとできるものではないのだが、知識のない学生達にはそんなことは全く知らない。それゆえに今回の件について学生は、そんなこともあるのか、と程度に認識していた。

「連絡、遅かったですね」

ヨハンが校長室の机に座っている校長に尋ねる。
校長は目の前の書類に素早く目を通し、必要に応じて判を付いていた。

「あぁ、簡単な問題ではなく今回の件で方々に送る書類が多くてな。それに闘技場の修繕に関することも多くての」
「なんだかすいません」
「なんのなんの、おぬしのせいではない。立場が上がると色々と責任を負うことも生まれてくるもんじゃ。そんなことより、仕事をしながらの話で申し訳ないが、今度儂と一緒に王宮に行ってもらう事になった」
「王宮……ですか?」
「王宮!?」
「王宮に行けるの!?やたっ!」

レインが突拍子の無い話に呆然としているのだが、モニカは王宮に行ける事に握りこぶしを握って喜んでいた。

「(やはりそうなりますわよね)」

そんな中、エレナが仕方ないとばかりに諦めている。

「えっと、それで、どうしてまた王宮へ?何をしに行くのでしょうか?」
「それは向こうに着いてからの話になるの」
「……そうですか、わかりました」

それ以上は教えてもらえなかった。
突然王宮に赴くことに決まった四人はそれぞれ様々な感情を抱きながら数日が過ぎる。

「いよいよ明日は王宮かぁ、どんなところなんだろう?」

ヨハンとレインは寮内の自室のベッドに寝転びながら話している。

「そらぁ凄いだろうぜ、なんたってこの国の王族がそこに住んでいるんだからな」
「そうだよね、あの街の真ん中にあるおっきいお城なんだよね」

ヨハンが街に広がる景色を思い出しながら想像する。

「とりあえず明日になればわかるさ。もう寝ようぜ。(こいつのこういう図太さは素直に羨ましいぜ。普通王宮に行くってなれば緊張でそれどころじゃないだろ)」

うきうきしているヨハンを横目にレインは溜息交じりに眠りについた。


――――翌日、ヨハンとレインは先に寮の門でモニカとエレナを待つ。

遠くからモニカが一人で歩いて来るのが見えた。

「あれ?エレナは?」

合流したところでエレナの姿がないことを不思議そうに思う。

「それがね、昨日の夜に用があるって部屋を出て行ったきり帰って来てないみたいなの。私には先に寝ててって言うから私は寝てしまっていたのだけれど、朝になっても姿がないから寮母さんに聞いたら、いいから、ってだけで心配はいらないからって。寮母さんも、どこかに行くなら今日エレナはいないって言うの。どうしたんだろう?今日は王宮に行くって前から決まっていたのに」

そうモニカがエレナを心配そうに話す。

「そうだね、まだ時間あるし探しに行ってみる?」
「ま、まぁ寮母さんがそう言ってるなら大丈夫だろ!とにかく行こうぜ!」

レインがどこか慌てた様子を見せながら背中を押した。

「レインは冷たいわね。そんなだからモテないのよ」
「なんだよそれ!それとモテるモテないは関係ないだろ!?(っていうか、しょうがねぇじゃないか)」
「はぁ、わかったわ。まだ心配だけれど、いきましょう」

どこか理不尽な感情をレインが抱く。

「まぁまぁ。ちょっと心配だけどじゃあ行こうか」


そうしてエレナがいないまま王都の中央区にある門のところへ向かう。
門には衛兵が立っていた。

「こらこら君たち、ここから先は貴族と王族の住まいになっている。許可証の無い者は入れないぞ。許可証はあるのか?」
「許可証?レイン持ってる?」
「いや、持ってないな」

どうしよう、どうやって中央区に入ったらいいかわからない。

「許可証ならここにあるぞ」

後ろから聞きなれた声が聞こえた。
振り向くとガルドフ校長がぴらぴらと許可証らしきものを手に持って歩いて来る。

「すまぬすまぬ、おぬしらの許可証を発行するのを忘れておってな。中央区に入るための許可証はギルドカードに付随できるのだが、今回はこれで済ませておいてくれ」
「ガルドフ殿のお知り合いでしたか。確認のため許可証をお願いします」

ガルドフは自身のギルドカードとおぼしきものとヨハン達の許可証を衛兵に渡す。受け取った衛兵はカードと許可証を近くにあった魔道具にかざし、魔道具は青白く光りを放っていた。

「ありがとうございます。確認が取れました。ではどうぞお通り下さい。君たちにはこれを。えー君がヨハンくんで君がレインくん、君がモニカちゃんでいいかな?」

衛兵がそれぞれに受け取ったカードと許可証を渡す。

「では入ろうか」

ガルドフに案内され門をくぐり、中央区内に入っていった。

「校長、ここに入るための許可証を衛兵の人が魔道具っぽいのにかざしていたのは?」
「あれか、あれは魔道具で合っておる。今回の件、魔族が学生に化けておったじゃろ?魔法の中には外見を操作するように変身ができるものもあるのでな。特別な魔道具でもそういったことは可能なのじゃが、まぁそういう者を事前に魔道具で立ち入る者の確認をしておるということじゃな」

なるほど、王家や貴族が住んでいるので警備も強化しているということだろう。

中央区に入ると街並みはこれまでヨハンが見てきたものとはがらりと変わり、建ち並ぶ建物はどう見ても立派な建物になっている。
奥に行けば行くほどにそれらの建物はより大きく豪華になっていった。すれ違う人達は馬車に乗り行き交う人もいれば、立ち話している人もおり、その誰もが綺麗な服を着こなしている。気品さが滲み出ていた。

ガルドフを先頭にさらに歩を進めていくと、遠くに見えていた大きな建物が徐々に近付いてくる。

「はぁー」
「すっごぉい」

王宮を目の前にしてヨハンとモニカは初めて王都に来たときと同様の反応を示していた。

「ここが王宮じゃ」

王宮の入口にはまた衛兵が立っており、中央区に入る時に居た門兵よりも屈強な立居振舞の衛兵だった。

「あの人達、かなり強いよね。どれぐらいなのかしら?」
「おいおい、問題起こすのだけはやめてくれよ」

モニカが衛兵の威圧感を肌に感じて、少しうずうずしているようにも見える。
余計なトラブルは御免だとばかりにレインがモニカに釘を差した。

「わかっているわよ、ちゃんと機会は見計らうわよ」
「(おいおい機会があればどうすんだよ!?)」

レインは呆れてものも言えなかった。

「なにしてるの?早くいこうよ」

何故呼び出されているのか疑問に思いながら、ガルドフと共に訪れた王宮へ向かう。
感想 35

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。