S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

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水面下の陰謀編

第六十七話 一方的な約束

「えっと……」

どうしたらいいのか全くわからない。

少女はヨハンが頷くのを確認すると、すぐに抱き付いてきたのだから。

モニカもエレナも怒ることよりも、まず何故その女の子がヨハンに抱き付いているのかを理解できないし、レインのツッコミすらも追い付かない。
当然抱き付かれたヨハン自身も理解できていない。
間違いなくこの女の子とは初対面だった。

全員が呆気に取られる。

少しの静寂が流れたのち、最初に我に返ったのはエレナだった。

「ちょ、ちょっと、あなた!いきなり何していますの!離れなさい!」

エレナの声に反応してモニカもハッとなる。

「そ、そうよ!ほらヨハンも困っているじゃない!」

慌てて離れるように促した。

「(おいおい、こいつのびっくり箱は一体いくつあんだよ)」

そこでレインもなんとか落ち着きを取り戻しつつ、いつも通り心の中で呟く。


「なんですか、あなた達は?関係ないでしょう?」

ピンク髪の女の子はそこでやっとヨハンから隙間程度離れ、ヨハンの肩越しにモニカ達を見た。

「か、関係ならあるわよ!私たちはヨハンとパーティーを組んでいるんだから!」
「それとあたしがヨハンさんから離れることに何の関係があるのか説明して頂けますか?」
「そ、それは…………」

モニカは思わず口籠ってしまう。

「ほら、説明できないじゃないですか」
「説明もなにも、ヨハンさんが困っていますわ。ほら離れて離れて」

エレナがヨハン自身が困っていると言うと、女の子はヨハンの顔を上目づかいで見て、しぶしぶ離れた。

「えっと、ごめん。もしかしてどこかで会ったことあるかな?もし会ったことあるならほんとごめんね、ちょっと覚えてないんだ」
「いえ、初めて会いますよ?」

「「「はぁ!?」」」

ピンクの髪の美少女は小首を傾げながらあっけらかんと会った事はないと返事をする。
意味のわからない返答にモニカ達は驚愕した。


それからは、とりあえず落ち着いて話せるように座って話すのだが、女の子はヨハンの横に座りニコニコとしている。

「それで?君はどうして僕のことを?誰かと間違えているとかはないかな?」
「そんなことないと思うけどなぁ。ヨハンさんはイリナ村のご出身ですよね?」
「そうだけど?」
「だったら間違いない!」

女の子はヨハンの出身地を確認すると、イリナ村だと聞いただけで女の子は確信する表情を浮かべた。

「あたしはニーナといいます。イリナ村からずっと東にあるセラの町からこの王都に来ました。具体的にはセラの町の外れの離れたところなんですが。ヨハンさんが冒険者学校に入学されたと聞いて、あたしも一緒に入学しに来ました」

ニーナは満面の笑みで答える。

「そうなんだ。でもそれがどうして僕のことを?」
「本当に何も聞いてないのですか?」
「だから何を?」
「あたしがヨハンさんの妹になるということを、ですよ?」

「えっ!?」
「「「はぁ!?」」」

ニーナは唐突にヨハンの妹だと言った。
談話室内に声が響く。

「えっと、ごめん。全然わからないんだけど、どういうことかな?」

覚えのないヨハンが慌ててニーナに聞き返した。

「あたしのお父さんとヨハンさんのお父さんが昔約束したのですって。それにしても良かったです、ヨハンさんがかっこよくて、それに強くて」
「ちょっと、待ちなさい!」

ニーナがヨハンにうっとりしている中、エレナが会話に割って入ってくる。

「色々聞きたいことはありますけど、どうしてそれが妹になりますの!?その上、その流れで何故ヨハンさんが強いと断定できますの?」
「えっ?だってそんなこと言われても妹だって言われたし…………お父さん言ってたし…………」

口に指を当て、上を向きながら答えてヨハンを見た。

「それにヨハンさんはどう見ても強いでしょ?魔力を視ればわかるじゃないですか。あ、そういう意味ではそちらの二人も強いですね。まぁあたしよりは弱いでしょうけど」

口角を上げて笑うニーナ。
モニカの眉がピクリと動く。

「それはちょっと聞き捨てならないわね」
「モニカちょっと待って、もう少し話を整理してから」
「?」

ニーナは疑問符を浮かべながら首を傾げた。

「(もう何がなんだか)」

レインは盛大に溜め息を吐く。

「その約束はあなたのお父さんとヨハンさんのお父さんが約束したのですわよね?だとしたらあなたたちは兄妹ではないですわね?」
「そんなことないです!お父さんからそう言われてあたしはここにいるんだから!」
「お父さんは何をしているの?」
「冒険者をしていたって。あっ、っていうか今でも冒険者かもですね。最近会ってないので」

問い掛けられたニーナは迷うことなく答えた。

「へぇ、そうなんだ。最近会ってないって?」

モニカもニーナの問いに対して疑問を抱く。

「生きているかどうか知らないので。それにお父さんパーティーは組んでいないって言っていましたから仮に生きていたとしてもどこにいるのかも…………。ヨハンさんのお父さんとは偶然知り合って意気投合したって言ってました」

ニーナは自身の父とヨハンの父との話を知っている限り話して伝えるのだが、内容は抽象的な内容ばかりで何一つ具体的な話はなかった。
だが、ニーナ自身は詳しい事情は知らなくとも、それは絶対に本当だと断言する。

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